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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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52/64

52.治癒

 綺麗にスポンと窓から廊下に入り込んだドラゴンの頭。


『 お初にお目にかかるわね。白いのと水色のから話を聞いて急いで来たのだけれど…………って、ん?んん? 』


 何やら急にゴソゴソと頭を前後左右上下に動かす紫色のドラゴン。


 ああ――。


 オリビアとジョーはその動きの意味を察した。


 王宮の窓は大きいものが多いのだが、残念なことにこの窓は王宮内では小ぶりな方だった。そこにドラゴンが頭を突っ込めばどうなるのか?


 こうなるのだ。



『 ちょ、ちょ……ヤバ……抜けないんですけど。これツノが引っかかってない?ちょっと押してちょうだい! 』

 

 オリビアの耳には言葉がジョーの耳にはグルルルグルルルと唸り声が入ってくると同時にこちらから見えはしないものの翼をバッサバッサと忙しなく動かす音がする。


 結構テンパっているよう。


 こんな時だがドラゴンのお間抜けな姿にちょこっとほっこりする2人。


『 ちょっとぉぉぉぉ。あんたら何ニヤニヤ笑ってるのよぉ。見せ物じゃないのよ! 』


 怒声に笑いを収めたオリビアはドラゴンに近づき角をぐっと抑える。が力が弱いのか抜けない。


「薄々と感じてるっすけど、お困りっすか?」


「ええ、窓から頭が抜けなくて困ってるみたい」


「やっぱりそうっすよね」


 そう言うとジョーはオリビアの隣に並ぶと失礼するっすと言った後思いっきり角をぐっと抑える。


『 ぬ、抜けない……。オリビア!そこの軟弱な騎士にもっと強く抑えるように言ってちょうだい! 』


 えー……どこが軟弱なのだろうか。


 今でも結構な力を込められていてバキッと角が折れないか心配だというのに。


『 早く! 』


 その後もああしろこうしろとドラゴンにげきをとばされながら格闘すること(主にジョーが)数分。


『 やったわぁ! 』


「「抜けた!」」


 窓枠にゴリゴリと角を擦らせながらなんとか抜けたドラゴンの頭。喜びと同時に角でゴリゴリと削られた窓枠の修理代を弁償するのは誰だろうかと一抹の不安を感じながら窓を挟んで改めてドラゴンとご対面。 


 ちらちらと……いや、がっつりと見える窓枠の傷が気になるがそちらはとりあえずなるべく見ないようにして……


「私に何か用?」


 またお願いごとかしら?首を傾げるオリビアの顔をじっと見つめた後、ドラゴンはちょいちょいと手招きをする。


『 軽く窓から顔を出してちょうだい。……………そうよ…自分の頭を突っ込むんじゃなくてオリビアの顔を出させれば良かったのよね 』


 後半は自分に向かって何やらブツブツ言っているドラゴンに心の内で可愛いなと笑いながらドラゴンの言う通りにヒョイッと窓から軽く身を乗り出す。


 ドラゴンがゆっくりと顔を近づけてくる。


 巨大な口が閉じられたまま顔に触れそうな程に近づく。閉じていても覗くガブリと一発で自分を仕留められてしまうであろう巨大な牙。不思議と恐怖は感じない。


 むちゅ、と頬にドラゴンの鼻が触れる。


『 はい、終わりー 』


 オリビアの頰から鼻を離したドラゴンが彼女の顔を見て満足そうに頷く。


 うん?何?


「おーーー!」


 ドラゴンとオリビアの様子を黙って見ていたジョーから感嘆の声が上がる。一体何なのか。


 そこであることに気づく。


 顔の痛みがない。先程までヒリヒリしていたというのに。そっと指で頬を触れればそこにあったはずの引っかき傷が指にあたらない。両手で顔全体を確認してみるが同じく傷に触れない。

 

『 私の能力は治癒よ。美人さんにあんな醜い傷は似合わないでしょう? 』  


「あ、ありがとう……」


 お礼を言いつつ僅かに顔を引きつらせるオリビア。


『 ちょっと、オリビア失礼なこと考えてない? 』


 …………失礼なのかどうかはわかりかねるが。


「毒とか使いそうな感じなのに治癒の能力が使えるんだなぁみたいな……」


 オリビアの言葉にぶほっとジョーが噴き出す。


 目の前で眉間にシワを寄せるドラゴンはとても美しいし綺麗だと思う。だがそのボディの紫色はオリビアの目には少々毒々しく見えるのだ。


『 失礼な!と言いたいところだけどいい線いってるわ。私は毒も使えるわよ。光と影しかり愛憎しかり……表裏一体ってね 』


 嫌いな奴がいたら毒をぶっかけてやるから呼んでね、とバチンとウインクした後ドラゴンは飛び立っていった。その後ジョーとも別れ屋敷へとオリビアは戻った。

 


~~~~~~~~~~




 翌日


「おはようございますっす!オリビア嬢!」


「!?お、おはようございます……?」


 竜騎士団の訓練場に足を踏み入れたオリビアを出迎えたのは左頬に真っ赤な手形がついているというのにすっきりした顔をしているジョーだった。


「昨日訓練の後に彼女の家に別れ話に行ったっす!そしたら見事にバチコーンされたっす!」


「それは見ればわかりますが、なぜ浮気された方のあなたがバチコーンされてるんです?」


「いやいやオリビア嬢、騎士の俺が女性をバチコーンできるわけないじゃないっすか」


 それはそうだ。だが言いたいことはそういうことではない。


「皆の前で恥をかかされた、あのとき一緒にいた男に捨てられた、人生設計を狂わされたって言われたっす」


 半年以内にエリートである竜騎士のジョーと結婚して皆に自慢及びマウンティングする予定だったらしい。


 なんだそれは。


「彼女は反省していないのかしら?というかあなたお別れして良かったの?」


 今更だがなんか勝手に色々と彼女に物申したが、何があろうと共にいるという選択だってしていいのだ。


「はは!いいんすよ!アオの願い通りにお別れになったんすからもっと喜んでくださいっす。オリビア嬢はちゃんと任務を遂行したってことっす」


 結果だけ見ればね。


 経過はもう思い出したくないほど散々な出来だったとしか言いようがない。


 でも……


 上を見ればご機嫌なアオが空を飛び回り、前を向けば吹っ切れた様子のジョーがいる。


 まあ、結果よければ全て良しということにしておきましょうか。くすりとオリビアの口から笑みが溢れる。



「あー……と、オリビア嬢」


 ん?


 ちょいちょいと手招きされ少しだけジョーに近づけば、こそっと耳に囁かれる。


「俺は別に巨乳好きってわけじゃないっすから、そこは勘違いしないでほしいっす」


「…………それは失礼しました」



 であれば、あの女のどこを好いたのだろうか。


 まあいい。



 であれば次は変な女に捕まらないことを期待しよう。

 






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