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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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51/64

51.反省

 女の喧嘩ということで話はついたものの、王を王宮の外に引っ張り出しておいてそのまま今日もお仕事頑張りましょうねとはいかぬもの。


 王の執務室に連れてこられたバリーとジョーとオリビア。


 目の前のソファに3人を並べて座らせ鋭い瞳でじっと見つめる王であるリカルド。


 執務をしていたらオリビアが女と揉めているという報告があったのだ。合わせてドラゴンがオリビア危機と文字を書いたと竜騎士から報告があり、国の一大事と思い慌てて馬を走らせれば派手なキャットファイトとそれを呆然と見つめる役立たずの騎士二人。ドラゴンがじーっと見つめるという構図に寿命が縮まった。


 それぞれの口から経緯を聞いた王は3人にお説教を喰らわせたもののそれ以上のお咎めはなしとなった。被害は王の心労くらいという判断で。


 執務室から出た3人は暫く無言で歩く。


「「ごめんなさい」」


 オリビアとジョーの二人から同時に謝罪されたバリーは王宮の廊下で足を止め、目を瞬かせる。


「何がだ?」


 不思議そうな顔に二人は互いの顔を見るとその……と少し口ごもるが結局口を開く。


「お、俺のプライベートなことで隊長が怒られてしまって申し訳ないっす」


 自分の知らぬところで色々なことがあったことを今日初めて知ったジョー。本当ならバリー隊長から話を聞いて穏便に終えられる問題だったのに。


「まさか浮気現場を見ちゃって騒いで、それをオリビア嬢に見られて更に騒ぎになって、陛下まで来て大騒ぎになって……情けないっす……面目ないっす」


 自分が見て見ぬふりしていれば、せめてあんなところじゃなくて仕事の後にでも彼女に話を聞いていれば誰にも迷惑がかからなかったはず。


 しょぼんと落ち込むジョー。


 その頭にはペタンコになった耳が、お尻にはダランと下を向く尻尾が見えるよう。


「何を言っているんだ。浮気現場を見て冷静でいられる人間なんていないだろう?気にすることはない」


 ぽんぽんと肩を叩かれ、ブワッとジョーの目に涙が溜まる。ジョーの男泣きからそっと目を逸らしたバリーと2人のやり取りを黙って見守っていたオリビアの目がばちりと合う。


「…………あの、迷惑をかけてごめんなさい。こんな騒ぎになるとは思って……」


 いなくてと言いかけて無理があるかと閉口する。自分は聖女なのだ。その行動で傷つくもの命を奪われるものが出る可能性があるのだ。


 あれだけ騒げば周りのものが動くことはわかりきっていたこと。そもそもバリーを呼びに行くなり、誰もいないところで話をするなりやりようはいくらでもあったのだ。


 いくらムカついたとて喧嘩なんて以ての外だった。そもそも何も解決できていないし。勝手に別れろとか言ってしまったし。冷静な判断ができなかった己の未熟さ、感情を制御できなかった己の愚かさを今更ながら痛感する。


「オリビア嬢」


「……はい」


 口を閉じてしまったオリビアにバリーが声をかける。


「私はあなたにも迷惑をかけられたなんて思っていない。ドラゴンを侮辱されて憤っていたのは私もだ。正直、少しスカッとした。私では女性の髪の毛を掴むことはできなかったからな」


 ハハハと廊下にバリーの笑い声が響く。


「それにドラゴンだけでなくジョーの為にも憤ってくれたのだろう?アオに頼まれたこととは言え彼の為に悩み行動した君に感謝の気持ちはあっても怒ることなど一切ないよ」


 優しい声音でそう言われオリビアは少し心が軽くなる。


「だが」


 急に発された低い声にオリビアだけでなくジョーまで身体をビクリと震わす。俯いていた顔を恐る恐る上げれば怖い顔をしたバリー。


 その手がすっと伸びオリビアの頬に触れる。


「女性が顔に傷をつけるような喧嘩をするのはダメだ。これからはしないように」


「はい」


 しおらしく返事はしたものの同じことがあれば同じことをすると思う。ムカついたのはもちろんだが、相手が掴みかかってきたのだ。こちらもやらなければ相手だけが咎められてしまう。彼女は平民だし、自分は聖女だし……。


「それにしても大丈夫か?痛いだろう?」


 添えていた手をそっと動かすバリー。美しい白い頬につけられた引っ掻き傷、叩かれ赤く腫れる頬はとても痛々しい。


「そんなに酷い見た目でしょうか?そんなに気になる痛みではありませんが」


 不思議そうに見上げてくる瞳を見てはっと気づくバリー。そうだ。彼女は家族や使用人、そして婚約者に……。痛みに慣れているのか?


 そっと手を離すバリーの顔が険しくなったことにオリビアは気づく。




 え……………………?


 なにかやらかしたかしら…?


 やらかしたけど。やらかしたけれども!許してくれたんじゃ…?



 バリーの心の内がわかるわけもないオリビアは早鐘を打ち始めた己の心臓を宥めようとするが心臓は言うことを聞かない。


 視線を彷徨わせるオリビアの頭の上にポンッと何かが置かれたかと思うと温もりを感じた。


「え、と。あの……バリー隊長?」


「いや、なんでもない。少し寄るところがあるのでジョー、オリビア嬢を医務室に連れて行ってくれるか?オリビア嬢今日は疲れただろう。治療が終わったら帰るように」


「お任せくださいっす」


「……お気遣いありがとうございます」


 何やらよくわからないが、去っていくバリー隊長。彼が離れて行く程に平常心が戻って……



『 オリビア 』


「「うぉっ!?」」


 

 来ずに、先程よりも更にバクバクと動き出す心臓。


 オリビアとジョーの斜め前にある明け放たれたままの窓から紫色のドラゴンの顔が飛び込んできたからだ。


 



 

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