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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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49.へし折る自信

 バリーとオリビアの和やかな雰囲気に二頭のドラゴンはもちろんのこと、呆然として固まっていたジョーまでも心が落ち着き二人を無言で温かく見守る。


 そう……普通はこういう時には空気を読むというもの。


 しかし平気で二股を掛けたり、ありもしないことを事実かのように作り上げてしまう女は残念ながら普通とは違う生き物のようで。


「ああん!聞いてくださいぃ!さっきぃそこの水色のドラゴンが私を狙って襲ってきたんですぅ。もう本当に怖かったぁ」


 目に涙を浮かべ、うるうると潤めながらバリーの元へ一直線に向かうジョーの恋人。彼女が収まろうとしている場所はオリビアの立っている場所だ。


 オリビアの身体に腕が伸びてくる。


 え?これはもしや人を押しのけようとしているのだろうか。


 まさかと思うがそのまさかのようでもう少しで腕にその手が触れそうだと思った時――。


 ぐいっと両腕に添えられていたバリーの指に力が入ったかと思うと両足ともトントンと前に一歩進んでいた。時が経つほどじわじわと感じる身体の温もり。


 オリビアはバリーに腕を引っ張られ、彼の身体に密着していた。


『 おお! 』


『 まあ! 』


 同時に歓声をあげる二頭のドラゴン。ご丁寧に前脚で目隠しをするのはやめていただきたい。恥ずかしくなってくる。


「ちょっと!騎士が女性をこんな邪険に扱っていいと思ってるわけ!?」


 勢いよく地面に倒れ込んだジョーの恋人が顔を真っ赤にしながら地面に倒れ込んだまま叫ぶ。


「私は竜騎士団の所属だ。ドラゴンたちが敬う聖女を優先して何が悪い」


 しれっと真顔で応えるバリー。素っ気ない態度に無駄に自信のあるジョーの恋人は自分が受け入れられなかったことにショックを受ける。


 だがあることに気づく。


「……聖女?その女聖女なの?」


「君のようなものにその女と呼ばれるような女性ではないが聖女だ」


「は!じゃあ、あんたがあのドラゴンに私を襲うように命令したのね」


 媚びるようにバリーばかり見ていた彼女だったが、ばっと立ち上がりオリビアを指さしながら睨みつける。


「なっ!?さっきからいい加減にしろっすよ!オリビア嬢が突き飛ばさなかったら普通にあの世逝きだったんすよ!?ていうかレイチェルが来なかったらオリビア嬢だって大怪我してたんす!それを襲うように命令したなんて……よくそんな酷いことが言えたっすね!?」


「はあ!?さっきまでずっと黙ってたくせに急にしゃしゃり出てきて何よ!?どいつもこいつもドラゴンって……オリビアって……!」


 命を助けた恩人にあまりにも酷い言葉を吐く恋人に思わず物申したジョー。それが良い方に転がるわけもなく。


「あなた達人間でしょ!?そんな気持ち悪い化け物を大切にするなんて頭おかしいんじゃないの!?その女だってそいつらを操れる気味の悪い人間の形をした化け物なのよ!?ほら、ジョー。もう許してあげるから素直に謝りなさいよ!」


 ジョーの恋人がそう叫ぶとその場の空気はガラッと一変した。


 ドラゴンをこよなく愛するジョーはもちろんのことバリーからも、そして愛しき聖女を化け物呼ばわりされたドラゴンたちからも怒りのオーラが滲み出る。


 彼らは口を開こうとしたが、閉口した。


 なぜなら誰よりも怒りのオーラを背負うオリビアがズンズンとジョーの恋人に向かって足を踏み出したからだ。そのオーラは怒り心頭だった二人と二頭を引かせるほどだった。


 怒りを纏うオリビアはじーっとジョーの恋人を見つめる。 


 人とは誰しも我慢の限界というものがある。ドラゴンを気持ち悪い化け物などと言ったのはどの口か。


 この口だ。


 がっと彼女の口の横に指を置き思いっきり挟む。


「「「!?」」」


 オリビアの突然の蛮行に誰も言葉が出ない。


「ドラゴンが気持ち悪いって言うけど、彼らは残酷な面もあるけれど強く賢く美しいわ。あなたより遥かに価値がある。大して美人でもない、お金もない、品性もない、性格も悪いあなたはなぜそんなに自信満々なの?」


 コテンと小首を傾げられながらされた質問に彼女は顔を真っ赤にするとオリビアの手を叩き払う。


「は!?なに「ああ、そのたわわに実ったものがあるから?」」


 先程指をさされたお返しとばかりにびしりと彼女の胸元を指さすオリビア。男性陣はそっと目を逸らす。


「まあ大きいものが好きな男性は多いものね。ジョーもそれに引っかかったのでしょうし。他にも釣られる男はいるでしょうね」


 思わぬ自分への飛び火にジョーの顔がボッと赤く染まる。


「下心満載の男が寄ってくるから自分がいい女だと勘違いしちゃったのかしら?あなたが男性からされているのはただの娼婦扱いよ?あら、娼婦の方に失礼かしら。あの方たちはお仕事として立派に努めていらっしゃるものね」


「な!?誰が娼婦よ!?」


「あなたよ」


 再びびしりと指さすオリビア。指さす先はご丁寧にまた胸元だったりする。


「それがなかったら今みたいに男性が寄ってくると思う?性格も悪い、金もない、見た目も大してよくない、顔の造形が微妙、良く言えば平凡顔、悪く言えば地味顔のあなたに」


 …………………………顔への攻撃ひどいな。

 

 ドラゴンもバリーもジョーも全く同じことを心で思う。


「そ、それは……」


 口ごもるジョーの恋人にオリビアはお前の自信などへし折ってくれるわと心の中で嘲笑っていた。





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