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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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42/64

42.頑張るマリン

 それから1週間経ったがマリンは侯爵邸に帰ってこなかった。


(どこに行ってしまったのかしら……)


 最近サボり気味ということもあり学園生活を優先していたオリビア。きっとすぐに戻ってくるだろうと思っていたマリンだがいまだに戻ってこない。


 その辺を飛んでいた何頭かのドラゴンに声をかけてみれば元気でいるそうだが居場所も何をしているのかも教えてはくれなかった。


 とりあえず元気でいるそうなので一安心なのだが――。


 じゃりという自らが土を踏んだ音が耳に届くのと同時に集まる視線。


「オリビア嬢ちわーっす」


「オリビア嬢久しぶりですね」


 1週間ぶりに足を踏み入れる竜騎士団の訓練場。声をかけてくる竜騎士たちに挨拶を返しながら目的の場所に向かう。


「…………ご機嫌ようバリー隊長」


「オリビア嬢ご機嫌よう。久しぶりに会った気がするな」


 バリー隊長はパートナーである白いドラゴンの身体を拭いていた手を止めるとオリビアに向き合う。


 二人が言葉を交わすと騎士達がニヤニヤし始めたのは気のせいだろうか。ただでさえ胸がドキドキとうるさいのに、勘弁してほしい。


 婚約関係になってから初めて言葉を交わすのだ。オリビアだって緊張くらいする。


「学業が疎かになっていたものですから学園の方に……」


「オリビア嬢はとても優秀だと聞いている。多少サボったところでなんの支障もないと思うが」


 相変わらず爽やかな笑顔で笑う色男さんだ。余裕たっぷりな彼と余裕のない自分。年齢によるものなのか、経験値の違いなのか。とりあえず高鳴る鼓動が聞こえないか心配になってくる。


「オリビア嬢?」


 黙り込んだオリビアを心配そうに覗き込むバリー隊長。視界にイケメンのドアップが入り込み思わず一歩後退ってしまった。


「えっと……その、マリンの母君と少し話がしたいのですがよろしいでしょうか?」


「レイチェルとか?」


 ほお、白色ドラゴンさんはレイチェルという名前らしい。ちらりと白色ドラゴンもといレイチェルに視線を向ければ彼女とバチリと視線が合う。


『 あら、オリビア私に何かご用? 』


 コクリと頷けばなあに?とふわりと微笑まれる。暖かいその微笑みはどことなくバリー隊長と似ている気がする。


「1週間前マリンが侯爵邸から飛び出していったのだけれど、それから帰ってこなくて……レイチェルはマリンがどこにいるか知らないかしら?」


 オリビアの言葉にバリー隊長の手がピクリと動く。僅かに表情も険しくなっている。やはり行方不明などという事態はマズイことのよう。


『 ああ、マリンならジョーの恋人のことで色々と作戦を考えたいからってこの訓練場に来てるわよ 』


「無事なんですね。良かった」


 オリビアがほっと息を吐くとバリー隊長も緊張を解いたようだった。


「姿が見えないようだけれど、まだ考えてる最中なの?可能であればマリンを呼んできてもらえないかしら?」


『 もちろん 』


 そう言うとレイチェルはにこりと微笑んだ後立ち上がるとぐわっと口を広げた。


『 作戦開始よー! 』


 うん?今レイチェルはなんと?


 グルァァァァァァァ!


 言葉はわからないが訓練場にいた騎士達はレイチェルの咆哮に動きを止め視線を彼女に向ける



 が



 何も起こらない。



 ?????



 オリビアもバリー隊長も騎士達も頭の中は疑問符でいっぱいだったが、レイチェルの視線の先を見続ける。


「あ……」


「あれは……」


 数分後事態はやっと動いた。


 パタパタパタパタと懸命に翼を動かすマリンがレイチェルの視線の先から現れる。その前足には何やら身体よりも大きな筒状の紙を抱えている。


『 全くどいつもこいつも見てないで誰か助けなさいよ!全く……気が利かないわね! 』


 時間をかけオリビアの前まで飛んできたマリンは紙を離し地面に落とすとオリビアの胸に飛び込みゼーハーゼーハーと荒い息を整える。


「助けなくてごめんなさい。つい……」


『 何がついよっ! 』


 いや、一生懸命翼を動かす姿があまりにも可愛らしかったものだからぼーっと見てしまったのだ。それに助けるにしても生憎空を飛ぶことはオリビアにはできない。


 ゆっくりと背中を撫でれば気持ちよさそうにマリンは自らを抱える腕に顔を擦り付ける。


「マリン、家に帰ってこないから心配したのよ?」


『 私もオリビアに会えなくて寂しかったわ。でも私あなたの幸せの為に頑張ったの! 』


 ん?


 マリンはジョーの恋人問題をどうにかしようと頑張っていたのでは?なぜ私の幸せ云々に変わっているのだろうか?


 問いを口にしたいがジョーの名前を出すわけにはいかないし、どうだといわんばかりにドヤ顔をするマリンに聞きづらい。


「オリビア嬢どうかしたか?」


「あ、いえ……なんでもありません」


 余程変な顔をしていたのだろうかバリー隊長が訝しげな顔で覗き込んでくる。


 うおっ。


 驚きのあまり再び一歩後退りするオリビア。


 この人ちょっと顔の距離が近いというのか……まあ婚約者だし、かっこいいし問題はないのだが……いや、やっぱり心臓に悪い。


『 オリビア早くそれを見て!あ、バリー隊長と一緒に見てちょうだいね! 』


 オリビアはマリンの言葉にこれ幸いとばかりにバリー隊長から視線を逸らすと地面に転がる大きな筒状の紙を手に取った。




  


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