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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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30/64

30.本性を暴くために

 エリザベスは一人ぼーっと学園の喫茶スペースに腰掛けていた。


 ジオも周囲で隠れ見ていた生徒達もとっくにいなくなったというのに彼女はそこから動けなかった。


 カタンッ……


 目の前の椅子が動く音がし視線を向ければそこにはオリビアがいた。


「ご機嫌ようエリザベス様」


「……ご機嫌ようオリビア」


 いつもだったら彼女を見ると苛つくのだが今日はやけに心が静かな気がする。それに……


「あなたと話をする時にドラゴンがいないのは久しぶりね。最近いつもドラゴン達に睨みつけられていたから……」


「一頭背中にくっついておりますが」


「ああ、マリンとかいう赤ちゃんドラゴンのことかしら?とても可愛らしくて人気者みたいね。私の顔など見たくないと隠れているのかしら」


『 そうよ! 』


「滅相もございません。疲れて飛ぶ気力がないだけです。まだ赤ちゃんですので」


 オリビアはマリンの言葉を伝えることなくふわりと微笑む。そう……エリザベスはそれだけ言うと下をじっと見たかと思うと口を閉じた。



 暫くすると彼女の口にキュッと力が入り、ほんの少しだけ力なく微笑んだかと思うと口が開く。


「…………皆の、あなたの言うとおりだったわね。ジオは成績至上主義のサイコパスのようね」


 彼女が浮かべる微笑みは悲しみもなければ怒りもない。疲れ切った諦めたようなものだった。


 オリビアはそっと王女を見つめる。彼女にこんな表情をさせたのは自分が願ったことのせい。自分があんな願い事をしなければ彼女は今も幸せだったのかもしれない。


 ゆっくりと瞬きをすればあの時のことが思い起こされる。




「陛下にお願いしたいことがございまして」


「ほお。なんでも言ってくれ」


「では――――――王女様にシャドー公爵令息様より優秀な成績を取るように命令していただきたく思います」


「「「は?」」」


 オリビアの言葉に王だけではなく皇太子も王女も目を丸くする。


「彼は成績至上主義です。自分よりも優秀な奴は許せない人間。であれば王女様が彼より優れた成績を取った時に彼の本性が現れるでしょう。そうすれば王女様も現実が見えてくることでしょう」


 冷静に淡々と紡がれるオリビアの言葉にエリザベスの頰が怒りで赤く染まっていく。ダンッと地面を蹴るとオリビアの髪の毛を掴み、オリビアが掛けているソファに共に倒れ込む。


「は!何よそれ!?くだらないにもほどがあるわ!そもそもジオは成績至上主義なんかじゃないわよ!それに私の成績は中の上あたりよ?ジオを越せるわけないでしょう?」


「越せないではありません。越えるのです。大丈夫です王女様。ここは王宮、あなたは王女様。陛下が最高の家庭教師を雇ってくださいます。あなたはただひたすら毎日勉強に励めば良いのです」


 激昂する王女の髪の毛をオリビアもむんずと引っ掴むとぐいっと顔を近づける。

 

「嫌よ!」


「嫌ではありません。やるのです。恐れながら王女様ともあろう方が中の上で何満足していらっしゃるんですか?」


「は、はあ!?あなた無礼よ!ちょっと自分が頭いいからって」


「ちょっとではありません。常にトップを取っております」


「あんたねえ!!!」


「ちょ、ちょっと落ち着きなさい……」


 終わりの見えないキャットファイトに王が二人を引き剥がそうと腕を伸ばす。


「陛下!」


「お父様!」


「「セクハラです!!!」」


「!?す、すまない?」


 同時に叫ばれた王の手は二人に触れることなくひょっと引っ込む。二人はブツブツと何か呟きながらお互いの髪の毛から手を離すとソファに座り直す。


 リカルドは二人の口から王への悪態が聞こえたような気がしたが、聞かなかったことにした。


「王女様現実を知るのが怖いんですか?」


「現実も何も私の知っているジオが現実のジオよ。優しく穏やか、私を心から愛してくれている婚約者よ!」


「はっ」


「はあ!?」


 鼻で笑うオリビアにこめかみに青筋を浮かべるエリザベス。横目で互いを睨みつけ再び険悪な雰囲気になりつつある二人に王が手を伸ばしかければ思いっきり二つの視線は王に向かい睨まれる。


 うーむ。解せぬ。


 王は眉間に皺を寄せた。


「……ではしっかりお勉強して愛しの婚約者様よりも優れた成績をとってくださいませ」


「いいわよ。とってやろうじゃない。それで彼の私に対する態度が変わらないところを見せてやるわ!」


 そして、王女がこの啖呵を切った日。国一番と言われている各分野の家庭教師が王宮に招集され、王女の猛勉強が始まった。


 家庭教師達の見事な手腕、王女のオリビアにぎゃふんと言わせてやるという闘志により、王女はテストやら課題やらでジオよりも高得点を取るようになった。


 残念ながらオリビアには及ばなかったが、ジオよりも好成績を取ることを達成したエリザベスに王や皇太子、家庭教師たちは拍手喝采だった。




 そして――――




 それからジオのエリザベスに対する態度は今までの溺愛はどこへやら素っ気ない冷たい態度へと変化していった。

 






 

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