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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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26.本性

 ジオが登校したことでいつもの落ち着きを取り戻したクラスメイトたちだったが、騒ぎを聞きつけて……というよりもドラゴンがいなくなった頃を見計らって教師たちが教室に駆け込んできた。


 そして窓ガラスの惨状を見て今日は帰らされることになった。




 帰宅したオリビアは家に置いてきたマリンが騒ぐだろうなと思いつつ自室の扉を開けるが何も反応がない。見回すと人間の赤ちゃんのように万歳ポーズをして仰向けでスースーと気持ちよさそうに眠るマリンがいた。


 ちょっとお間抜けな寝方だがなんとも可愛らしい。寝息に合わせて上下するお腹を触りたい衝動に駆られるがぐっと堪える。


 起こさないようにベッドの側においてある椅子に物音を立てないように気をつけて腰掛けると目を瞑る。



 久しぶりにあの男を見たが、

 やはり自分はあの男は許せない。


 いや、許せないというより許してはいけない人間と言うべきだろう。




 ジオ・シャドー。


 名門シャドー公爵家の長男で品行方正な優等生。地位に溺れることなく物腰柔らかく、顔もよく、スポーツもできる人気者という評価をほとんどの人がするだろう。 


 ジオは幼少期より外国で生活しており学園の高等部で初めて顔を合わせた。顔見知りが多いわけでもないはずなのにその外面の良さから常に多くの人に囲まれていた彼。


 人に愛される彼と嫌われる自分。正反対の人間だと思っていた。多少似ている点といえば成績くらいのものだった。


 自慢ではないが自分は学園の高等部に入学してから誰かにトップを譲ったことはない。というか初等部中等部とトップを譲ったことはない。


 それはさておき、トップのオリビアの名前の一つ下にはいつもジオの名前があった。そして彼が近づいてきたのは何度目のテストの時だっただろうか。


 ――ねぇ、オリビア一緒に観劇でも観に行かないかい?


 ――一緒に昼食でも。


 最初はそんな軽い誘いだった。王女と仲睦まじい彼からの誘いに首を傾げつつ、王女の婚約者と親密になるのは避けたかったので断り続けた。断り続けているとやけに学園で近づいてくるようになった。


 顔を近づけてきたり、腰や肩に触れてきたりとジオからの接触、一方的に話しかけてくるという状態だったのだが周囲からはそうは見えなかったよう。


 周囲からの自分を見る目が冷たくなってきたことに気づいたオリビアはまずいと思いはっきりと近づかないようにと言ったのだが、学園にいる間どこにでも必ずついてくるようになったジオ。落ち着ける場所といえば女子トイレの中ぐらいだった。


 もう放置だ。無反応でいよう。そう決心して無視していたら


 ――最近王女が冷たいんだ。


 ――他に男がいるようだ。


 ――寂しいんだ。



 甘えるような、女心をくすぐらんとする言葉をかけられるようになった。勘弁してくれと思っていたある日、手の甲を撫でられながら慰めてくれないか?と囁かれたときは思わず手を跳ね除けてしまった。


 が、その翌日にはなぜか王女から人の婚約者を狙う女狐と罵られた。


 それから全生徒と数人の教師を巻き込んだ王女主導の嫌がらせが始まった。虐めにシビアな国の王女による虐めの扇動。なんかすぐバレそうだなと思っていたのだが、全校生徒を巻き込んでの虐めはバレることがなかった。


 最初は王女に目をつけられるなんてやばいかなと思ったのだが、王女は家には何もしないし、リリスにも何もしないし、暴力はないし、嫌がらせも大して気にならないものだし、別にどうでもよくね?と気づいた。


 熱心に嫌がらせをしていた生徒達もノーダメージのオリビアを見て愕然としていた。結局ジオがオリビアに近づかなくなったこともあり何もやられることはなくなった。


 そう。何も。


 完全なる無視。一部の教師を除きまるでオリビアがそこにいないかのように皆が振る舞った。


 一部の教師はなんとかしようとしてくれたのだがオリビアが止めた。だって彼らがクビにでもされたり標的にされたら嫌だったし。



 特に仲の良い友人もいなかったから寂しくもないし、一人時間が苦にならないオリビアにとっては学園は家よりも余程居心地の良い居場所となった。


 なんだこいつみたいな恐怖を感じる目が向けられていることに気づいた頃、自分もあることに気づいた。


 ジオ……あの理解不能な行動をしていた悪魔が自分に迫らんとする成績上位者に男女関係なく声をかけまくっていることに。声をかけられた生徒たちの彼を見る目がどんどん狂っていくことに。


 彼らの成績はみるみる落ちていった。




 オリビアはなるほどと全てを理解した。


 奴は成績至上主義のサイコパス野郎だったわけだ。


 人を落とし成績を落とさせる。


 いや、そんなことができるなんてそれはそれですごい才能だな、と感心してしまったものだ。自分には到底無理な芸当だし。


 成績上位者を誑かしまくったおかげでジオと彼らの差は開き、2位と3位の間のテストの点数の差はそれなりに開くようになった。


 ただ1位と2位の点数の差が埋まることはなかった。なぜならオリビアが常に満点を叩き出し、ジオのテストの点数はなかなか上がらなかったから。


 そしてその悔しさをジオははっきりとオリビアに向けるようになっていた。



 人目のないところで凄い目で睨まれたことも、


 ――お前の頭が悪いから虐められるんだ


 ――僕の方が本当は頭が良いんだ


 ――おいいい加減にしろ、早く1位を譲れ


 ――命が惜しくないようだな


 なーんて言われたこともある。


 相手は公爵家。されど我が家もそれなりに地位のある侯爵家。父を除く先祖その他たくさんの人が頑張ったおかげで財力は我が家の方が多少上。

 

 なんとかなるだろうと楽観視していたのだが日増しに自分に対する殺気が増幅していることには気づいていた。どうしようかと思っていたのだが……。


 天が……いや、ドラゴンが味方したオリビアには彼も手を出せないはず。


 これにて一件落着とするには少々腹立たしいし、他の生徒たちの目も覚まさせてやらないと才能がもったいないというもの。


 せっかく力を得たのだから使うべきところには使いましょうと考えたわけだが…………







 問題はどうするべきか、だ。







 

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