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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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25/64

25.表面上の謝罪

 ガラッと扉が開く。


 再び静まり返る教室。ただ今度は入ってきた人を見る人はオリビアを除き誰もいない。オリビアの目とその人の金色の目がばちりと合う。


 その人――彼女が歩けばオリビアの周囲に群がっていた生徒達は道を開けた。真っ直ぐにオリビアの元に来た彼女は口を開く。


「ご機嫌よう聖女様。あなたのせいでお父様から叱られてしまったわ」


「ご自分のせいでの間違いでは?」


 に、と笑う彼女はこの国の唯一人の王女エリザベスだ。


「お父様に言われたわ。土下座して許しを請え……と。処刑されぬことに感謝しろ……と。そしてこれからは絶対にあなたを虐げてはならぬ、と。次同じことをしたときは自らの手で私の首をはねる、と」


 ふふ、と笑うエリザベスは波打つ金色の髪の毛をかき上げる。彼女こそがこの教室、いや学園のボス。彼女の命により生徒達はオリビアを虐げていた。その権威を使って虐めねば家がどうなるかと脅してまで。


 時には教師まで巻き込むこともあった。


 彼らだって被害者と言えば被害者とも言えた。だから彼らを許すことをオリビアは決めたのだ。


「頭を下げられますか?」


「…………私とて王族、あなたが聖女とわかった以上これからは何もしないわ。それにできないしね」


 そう言ってチラと彼女が視線を向ける方には監視役だろうか。目つきの鋭い女性たちが3人いる。オリビアに上から目線で話し続けるエリザベスをすごい怖い目つきで睨みつけている。


 いやいや、怖いんですけど。


 側にいる自分まで睨みつけられているようでやめていただきたい。その目線の先にいるエリザベスはもっと怖いだろうに彼女の口から出たのは――



「悪いことをしたなんて思っていない。悪いのはあなたよ……………………決して私は謝らない。この身に罰が下ろうとも」


 きっと顔を上げオリビアの顔を睨みつけるエリザベス。


 ふ、と教室の中が暗くなる。





 グルルルルル……


 ドラゴンたちの喉を鳴らす音が聞こえる。しかも複数の。窓の外には目に怒りの炎を宿すドラゴンたちが今にも乗り込まんと集まっている。


 息を呑む生徒達。エリザベスも身を震わせる。


「あなただけではなく、国に災いが起ころうとも?」


「な!ひ、卑怯よ!あなたと私の問題でしょ!?」


「多くの人をその地位を利用し巻き込んだのはあなたですが?それに私はあなたと違って彼らに何も頼んでいません。聖女を守らんとする彼らの本能故の行動ですわ」


 ぐ、と押し黙るエリザベスはちらりとクラスメイト達を見る。意地クソが悪いし、人を虐めるような女だが、守るべきものは一応わかるらしい。


「私がやったことは最低だってわかっているわ!でも元はといえばあなたが悪いのでしょう!?あなたが、あなたが………!」


 ガシャーーーーーーン!!!


 教室の全ての窓が割れた。どうやったのか誰一人として傷はついていないようだが、窓という隔たりがなくなりドラゴンの気配が怒りがヒシヒシと教室の中に満ちる。


「「「ヒッ……!」」」


 恐怖のあまり声を上げられずその場に座り込む者、気絶する者、震える者などそれぞれ恐怖を露わにする生徒達。


 この事態に流石に青褪めたエリザベスはゆっくりと頭を下げる。




「も、申し訳ありません…………でした」




 エリザベスの震える声はドラゴンたちの耳にも聞こえたはずだが、その場は何も変わらなかった。相変わらず今にも壁を壊してでもその身を教室に入れようという気迫を感じさせるドラゴンたち。


 いや、先程よりも怒りが増しているのかグルルルグルルルと唸る。


 その様を見て顔から血の気が引き、その場に崩れそうになるエリザベスを監視係の女性らが慌てて近づき支える。


『 そんな言葉だけの謝罪に何の意味がある! 』


『 聖女とわかっても尚先程の態度、あり得ないだろう!』


『 この女はこの国の王女だろう!?この国はオリビアを我らを愚弄しているということか!? 』


 おーおーおーおー。


 非常にお怒りの様子だ。まあ気持ちはわからないでもない。だが――。


「ちょっと。約束は?復讐は望まないと言ったはずよ」


 王女から背後のドラゴンたちにジロリと視線を向ければビクリと動く巨大な身体。でも…だけど…とオロオロしだす。


「エリザベス様は謝罪されたわ。それが例え表面上の言葉だとしてもね」


 今度はビクリと王女の身体が一瞬震える。


「私は満足だわ。あなた達のおかげよ。ありがとう」


 ふわりとドラゴン達に微笑めばドラゴン達は一匹また一匹とゆっくり窓から離れて羽ばたいていく。


 教室の中が助かったと安堵の空気になったとき


 ガラリ


 再び扉が開く。


「おはよう。皆どうしたの?オリビアじゃないか!久しぶりだね」


 ふわりと穏やかに笑う淡い水色の髪の毛に青い瞳を持つ男子生徒。彼の登場にその場の空気は更にほっとしたような柔らかいものへと変わる。


「ジオ……」


 エリザベスの顔が泣きそうに歪む。彼女は監視係たちの手を払うと駆け出し彼の胸元に飛び込んだ。


 ジオ・シャドー公爵令息。


 エリザベスの婚約者だ。ちなみに彼女はジオに夢中で溺れていると言っても良い。



 

 オリビアの目がスッと細められたのに気付いたものはいただろうか。


 誰にでも優しく穏やかな態度で接する人望厚い優等生様。


 

 

 私は王女も他の生徒にも罰など望まない。だがこいつだけは許さない。だってこいつは人の人生を狂わせる男だから。


 


 






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