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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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22/64

22.赤ちゃんドラゴン

 “ドラゴンの赤ちゃんだ”


 “初めて見た”


 “見た目も可愛いが、鳴き声がたまらんなぁ。キュイキュイってな”


 そんな声が聞こえてきて周囲を見回せばいつの間にかごつい騎士たちに取り囲まれていた。


「珍しいんですか?」


 目を輝かせて赤ちゃんドラゴンを見つめる騎士たちに誰ともなしに問いかければぐりんと向く輝く目、目、目。


 ちょっと怖いんですけど。


「んんっ!ドラゴンは長命ですし、あまり子供を産まないので滅多にお目にかかれません。しかもこんなに小さいドラゴンなんて……今まで見たことがある者はいないかもしれませんね」


 バリー隊長が周囲に睨みをきかせながらオリビアの問いに答える。


「なるほど。バリー隊長のパートナーの赤ちゃんみたいですね」


 その言葉にピシリと動きが止まる。え?何かまずいことでも言ったかしら。


「……私のパートナーのですか?」


「え、ええ。本人がそう言ってましたよ」


 親子の会話もしていたし。


 ガーンとショックを受けた顔をする隊長にオリビアは首を傾げる。


「気づかなかった……。た、確かに同じ色合いですね……」

 

 親ドラゴンに対して赤ちゃんドラゴンは非常に小さいサイズだ。お腹もあまり膨らまないのかもしれない。でも生まれてから訓練場にいたはずなのになぜ誰も気づかなかったのか。


 隠れていたのだろうか。

 

『 オリビアはとってもいい香りがするし、美人だし、側にいると力が湧いてくる感じがするのよ!私オリビアのところに行きたくて騎士達にバレないように隠れてたの。気づかれたらここから出してくれなさそうじゃない? 』


 疑問が顔に表れていたのか話の流れから疑問を感じ取ったのかはわからないが、赤ちゃんドラゴンが再び話しかけてくる。


 くるくると自分の周りを飛ぶ姿はとても可愛らしい。貴重な赤ちゃんドラゴンの面倒をみるなんて責任重大過ぎてとても無理だがこうやって懐いてくれるのは嬉しい。


 思わず笑みを浮かべると周囲が静まり返った。


 え?


 え?


 え?


 なんで?


『 うーんいい匂い!やっぱりずっと一緒にいる! 』


 混乱している間に赤ちゃんドラゴンがそう叫んだかと思うとオリビア目掛けて猛スピードで飛んでくる。避けようとするがそんなこと不可能なわけで、頭だけでもと腕で頭を抱える。


「「「危ない!」」」


 流石騎士たち。ドラゴンに手を伸ばすが残念ながら誰の手も届かない。そして不自然に宙に留まり生き場を彷徨う手達。


 がしっと力強い腕に身体を包まれる。


 うん?


 うん?


 うん?


 騎士たちの顔が真っ赤になる。


「す、すまない!」


 オリビアを抱きしめていた手を慌てて離し、距離をとる隊長。ちょっと恥ずかしい。


 



 が、今はそちらよりも気になることが……。


『 ずっと一緒! 』


 わかった。


 わかったから。


「とりあえずスカートの中から出てきてくれる?」


 赤ちゃんドラゴンは騎士の手を避けるため、オリビアのスカートの中に飛び込んでいた。 


 

 ヒョイとスカートの裾から顔を出す赤ちゃんドラゴン。ちょびっとばかり自分の足首が覗く。


 騎士たちがばっと一斉に視線を逸らす。流石騎士様実に紳士的だ。足首ぐらい見られても平気なのに。


 身を屈めてがしっと掴むと暴れたので、慌てて胸に抱えるとピトリと身を寄せてくる。…………可愛い。


「気持ちは嬉しいけど、ママと離れるのは寂しいでしょう?」


『 ママとは訓練場で会えるし、乳離れは1週間で終わってるから大丈夫!ドラゴンは自由なんだから!それにご飯だって自分でどうにかできるし、部屋も汚さない!オリビアには迷惑をかけない! 』


 いやいやいやいや、万が一何かあったら。ドラゴンの知識に乏しい自分では対処ができないし。でも、うるうると潤んだ瞳を見れば突き放すこともし難く。


「バリー隊長。赤ちゃんドラゴンって私の家に連れて帰ることはできますか?」


「え、あっと……恐らく大丈夫だ」


 きっと聖女なら許されるはずだとバリーは言う。陛下とこの子のママから許可をもらって、ザイルとリリスが良いと言ったら家に連れて帰ろう。


 ドラゴンは丈夫な生き物っぽいし、適当な世話でもどうにかなるはず。わからないことは騎士達から聞けば良いし。


 そんなことを考えているとあることに気づく。


「あ……」


「「「あ……」」」


『 あ……オリビアごめんなさい 』


「大丈夫よ」


 不安に揺れる瞳を慰めるように背中を撫でれば気持ちよさそうに目を瞑る赤ちゃんドラゴン。抱えたまま身を屈めようとしたが先にバリー隊長が身を屈め、オリビアが拾い上げようとしていたものを手に取る。


「申し訳ありません隊長。もう一度洗ってまいりますのでお貸しください」


「大丈夫ですよ。もともと訓練でも着ますし、土などいつもついているようなものですから」


 そう言って爽やかに笑うバリー隊長に申し訳ないと思いながらもでは、とオリビアは引き下がる。


『 はぁん……いい男。やっぱり旦那にするならこういう男よねぇ 』


 赤ちゃんドラゴンがうっとりとバリーを見つめていることに気づく。


 もしや人間に恋…………?


 ちょっとドキドキするオリビアだった。


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