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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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21.次の男

 うーん。


 相変わらずここにいると実にたくさんの視線が突き刺さる。ドラゴンやら騎士さんやら……自分が美人なのは認めるがそんなに見ないで欲しい。


 竜騎士団の訓練場に置かれた木製の椅子に腰掛けるオリビアはため息が出そうになるのを堪える。


 チラ、と自分の膝の上を見る。そこにはバリー隊長に貸してもらった上着があった。返そうと思っているのだが会議があったり家の用事があるようでなかなか顔を合わすことができないでいた。


 今座っている椅子だって、バリー隊長が用意してくれたんですよと他の騎士が教えてくれたのだ。


 上着も返したいし、椅子のお礼も言いたいのに……俯きがちだったオリビアに影がかかる。ん?と顔を上げれば一人の若き青年が立っている。


「あの……少しいいっすか?」


「何でしょう?」


 青年がオリビアに声をかけると訓練場がざわついた。ウェーブのかかった柔らかそうな黄緑色の髪の毛ときっとつり上がった緑色の目が特徴的な青年だ。


 何を怒っているのか、すごいムスッとした顔をしている。


「俺、ジョーって言います。少し言いたいことがあるんすけど」


 家名を言わないということは平民だろう。この王国では貴族だけに家名が許されている。どうぞと頷けば緊張からかごくりと喉を鳴らすジョー。


「俺、あん…あなたのこと嫌いです。嫌いっていうか苦手っていうか」


 いきなり話しかけられての嫌い宣言。何もした覚えはないがなかなかの嫌われっぷりだ。


「あなたが何かしたわけじゃないっす。俺の一方的な嫉妬っていうか、妬みっす。でもやっぱり俺は簡単に認められねぇ……っす」


 ああ、なるほどなんかちょっと見えてきた。


「俺はドラゴンに好かれるために、認めてもらうために剣の腕も磨いて、ドラゴンに貢いで、パートナーになった後も嫌われないように貢いでつくしたりしてるっす!」


 何を貢いだのか知らないが、貢ぐ貢ぐと大丈夫だろうか。彼の言葉にうんうんと頷く騎士が他に何人もいることにオリビアはちょっと心配になった。


「その……た、ただ聖女ってだけでそんな風にドラゴンに好かれて、囲まれて……この名誉ある騎士団にも所属できるなんて、納得がいかない…………っす」


 気持ちはわかる。だって今日だって彼が敬愛しているであろうドラゴンたちに囲まれて座っているだけだし。


 でも仕方ないではないか。雑用も聖女にはやらせられない。ドラゴンの世話は各々のパートナーがやるものだと言われては……。ここに座り、ドラゴンちゃんたちに囲まれながら話をすることくらいしかやることがない。


「俺、育ちは悪いし口は悪いし短気だし……たぶんあなたに失礼なこととか酷いこととか言っちゃうと思います!」


 うおっ!急に大きな声を出されてビクリと体を震わせてしまったオリビア。ドラゴン達の身体もピクリと動く。


 そしてジョーもその不穏な雰囲気に一瞬身体を震わせる。


「でも俺処刑は嫌なんです!せっかくアオ……いや、ドラゴンも懐いてくれたし……この竜騎士団に入れたし……俺がもしやらかしちゃっても見逃してほしいんです!!!」

 

 グワングワンと外なのによく響く声に訓練していたものたちも動きを止めオリビアとジョーに注目する。


 あ、殴ったりとかは絶対にしませんから!でもたぶんいらんこととか言っちゃうと思うっすとわたわた慌てるジョー。


 先程からドラゴンたちの様子も気になるのか額に汗を流しながら彼らをチラチラと見ている。そんなに怖いなら言わなきゃいいのに。

 

「ふふっ」


 あ、笑ったら失礼だったかも。だけどその素直さがとても素敵だと思ったのだ。


「文句や嫌味ぐらい受け入れますから大丈夫です」


「ありがとうございます!」


 深くお辞儀をし、上げたその顔はとても晴れやかで良い笑顔が浮かんでいる。ちょっと可愛いかも。


『 可愛い坊やね。こういう子は口は悪いけど意地の悪さは無いのよね。でもあまりにも酷い暴言を吐いたら顔に噛み付いてやるんだから! 』


 うおっ!


 目の前にヒョイと何かが飛び出してくる。いや、近すぎてよく見えない。がしっと掴めば固いような柔らかいような何とも言えない感触。


 そのまま腕を伸ばすと


『 離してよ~っ 』


 先日侯爵邸に侵入してきた赤ちゃんドラゴンが己の手に首を掴まれていた。


 おおっ!?


 慌てて離すと羽根をバタつかせる赤ちゃんドラゴン。


「なっ!?」


 なっ!?


 ジョーに比べ重低音の声がし視線を向ければいつ来たのか赤ちゃんドラゴンを見つめ固まるバリー隊長がいた。


『 見た目からしていい男よね~。オリビア次はこの男にしなさいよ!ちなみにこの男は私のママのパートナーよ。ママが認める男なんだから中身もいい男間違いなしよ 』


 いや、しなさいよとか言われても。あなた今日から私の男よとか言われても隊長は迷惑だろうに。彼にもタイプだってあるはず。

 




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