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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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13.祝杯

 王との面会が終わり侯爵邸に戻ったオリビアは夕食後自室でリリスと共にグラスを掲げる。


「「乾杯」」


 口をつけ飲み込めば喉を潤してくれるオレンジジュース。二人は苦味のあるアルコールは苦手で好まない。


 高価なワイングラスにオレンジジュース。似合わないが不味いものを口にするなんて嫌である。せっかくいい気分なのに。


「ねえお姉様、親や兄が処刑されたっていうのに祝杯なんて私達ってヤバイ奴かしら?」


「かもしれないわね」


 とはいうものの、彼らが処刑されてからドラゴン達が大喜びしているのだ。その歓喜の声につられて心が躍ってしまうのも仕方ないというもの。


 それにオリビア自身も正直なところ非常に嬉しい。これで妹の願いが叶うのだから。それに……もう殴られることがなくなる。


 言葉はどうでも良かったが、身体へのダメージはそれなりにきついものがあった。痣が残るような痛みを与えられることはなかったが、それでも痛いものは痛かった。


「ねぇ、お姉様?本当に私の婚約者、いえ……夫になる人に爵位を与えていいのね?」


 コトリとテーブルにグラスを置いたリリスがオリビアの表情を探るように見つめてくる。


「私の婚約はどうなるかわからないじゃない。それに私は領地やら事業やら政治やらに興味がないもの」


「そう……」


 王国は残念ながら女性では爵位が継げない。オリビアの夫かリリスの夫に爵位が与えられる。オリビアは婚約者と不仲でどうなるかわからない。であれば仲の良いリリスと婚約者が結婚し継いでもらった方が皆幸せというものだ。


 何よりリリスの婚約者はリリスが前々から家のことに関わることを望んでいる。可愛い妹の願いは自分の願いでもあるからと。


 早急ではあるが明日リリスが婚約者と婚姻し、彼が侯爵家の当主となる予定だ。


 そう。


 リリス命のなんでも言うことを聞く彼女にぞっこんの男が。実質この侯爵家を運営していくのはリリスとなるはず。それはリリスにとっても自分にとっても夢見たこと。


 権力など惜しくもないし、妬みもない。


「本当に私のことは気にしないでリリス。私にも何かお役目があるみたいだし」


 先程の王との話合いの最中にあるお願いごとを王からされたオリビアは明日も王宮に行く予定だ。


「そうね……王様からの任務、大変なことじゃないといいけれど。何かあれば絶対に相談してね!?いざとなればドラゴンで王宮を襲っちゃえ!」


 妹の手の中にあるグラスの中身はオレンジジュースのはずだが、まるで酔ったかのようにテンションの高いリリスにオリビアは微笑みを浮かべる。


 両親や兄の前では大人しく甘えん坊で一人では何もできないように装っていた可愛い妹。彼女の本来の姿である豪胆な姿が見れて姉として非常に嬉しい。


「んーーーーじゃあ、侯爵家は私がもらっちゃうんだから!あ、でも私たちの間に上も下もないんだからね!?私たちは姉と妹!よっしゃー!燃えてきた!!!私も頑張るからお互いに頑張りましょうね!」




 可愛らしく且つ力強く目の前で二つの握りこぶしを作るリリス。だがオリビアは曖昧な笑みを向けることしかできなかった。


 リリスがこれからやっていくことは本当に大変なことだ。頑張るぞーっと気合が入るのも理解できる。むしろ入れねば務められぬだろう。


 だけど自分は……王から言われた役目を思い出すオリビア。



 自分に課された役目はリリスのような大変なものではなく――。








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