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アラサーTSメスガキ魔法少女に煽られて恥ずかしくないの?♡ざぁーこ♡  作者: 夏川優希


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52話 ジェネレーションギャップってやつ♡


 喫茶店でのH&Pとの衝突の翌日。

 律とプイプイは今日も連れ立って歩いていた。



「律さん……昨日はよくも置いていったプイね……お陰で全身塩まみれプイ」


「ご、ごめんごめん。でもプイプイも悪いよ! ちゃんとどこのどういう雑誌の取材なのか確かめずに仕事受けるから!」



 などと言い合いながら歩くことしばし。

 目的の店の前には、既に到着した何名かが輪になって駄弁っている。

 そのうちのひとり――セイラが律に気付いて手を振った。



「あ、リツさん! こっちこっち!」



 今日は〈ブラッディドラゴン〉殲滅の打ち上げをすべく、東京魔法少女連盟所属の魔法少女たちが集ったのだ。

 場所として選ばれたのはカラオケ。

 集合時間を迎え、一同はカラオケボックスの中へと入っていく。



「打ち上げっていつもカラオケなの?」


「はい♡ 個室だし、多少騒いでも怒られませんし、食べ物も飲み物も注文できますから♡ ここはわたしたちの行きつけなんですよ♡」



 律の質問にすかさずルナが答える。

 そしてその流れで律の隣の席をゲット。慣れた手つきでメニューを広げ、フードの注文などを行いながらも律にすり寄る。

 律は困ったようにルナから距離を取りながらも、久々のカラオケになんだかそわそわしていた。



(カラオケってちょっと緊張するけど……でも未成年は居酒屋いけないもんなぁ)



 アラサー社畜時代は打ち上げと言えば居酒屋だった。

 吐くまで飲まされ、上司の無茶振りに付き合い、説教や昔の武勇伝にも笑顔で相槌を打ち、そのくせ飲食代は自腹。

 初めて打ち上げに連れて行かれたときは衝撃を覚えたものだった。


 そして今回、律はそれとは別の種類の衝撃を受けることとなった。



「リツ様の歌、素敵でした♡」



 律の歌唱が終わったのを見計らい、ルナはうっとりと頬を染めながら律の肩へしなだれかかる。

 そして衝撃のひと言を呟いたのだ。



「懐メロがお好きなんですね♡」


(懐メロ!? パンプオプチキンが!?)



 歌というのはときに残酷に年の差を浮き彫りにする。

 ほかの魔法少女たちの歌う最新曲にまったく馴染めていない事実に、律は自分がおじさんであることを強く意識させられた。


 そして打ち上げも終盤に差し掛かった頃。

 突如として扉が開き、少女が飛び込んできた。

 走ってきたのだろう。肩で息をしながら、額を伝う汗を拭う。



「すみません、遅れました!」



 それは怪人・リュウザキと戦った際に負傷し、触手に絡め取られ食われかけていたところを律が助けた魔法少女。

 名前をカナコと言った。

 変身したカナコはとても可愛らしく、かつ東京の現役魔法少女の中でもっともスタイルの良い魔法少女である。

 魔法少女の服は本人をもっとも輝かせるデザインを変身ブローチが自動的に生成してくれる。

 カナコのそれは豊満な胸を強調しつつ、しかし下品にはならないちょうど良い塩梅のワンピースであった。


 しかし変身を解いた私服の彼女に、魔法少女の時の輝きは見えない。

 扉を開けて部屋に入ってきたとき、律は彼女が誰なのか咄嗟に分からなかったほどだ。

 ぴょんぴょんと跳ねた無造作なロングヘアーで顔を隠し、地味な色のダボッとした服で体のラインを隠している。


 だがほかの魔法少女たちにとってはお馴染みなのか。

 魔法少女姿と私服のギャップに驚く様子はなく、みんな笑顔でカナコを迎える。



「よかった。今日はバイト抜けられたの?」


「待ってたよカナちゃん!」


「そしたら時間延長しましょうか。食べ物も追加で――」



 といって部屋の壁についた受話器に手を伸ばすルナを、カナコは慌てたように制止する。



「いや、いいんです。今日はその、お別れを言いにきただけなので」


「お別れ?」



 キョトンとする魔法少女たち。

 その中で、プイプイだけが慌てたように声を上げる。



「カナコ、その話はまだ――」



 しかしカナコはプイプイの制止を無視した。



「わたし、魔法少女を辞めます。いままでお世話になりました!」


「……えっ?」



 青天の霹靂だったのだろう。

 魔法少女の誰にもなんの相談もなかったようだ。

 突然の別れの挨拶に誰もが呆然としている。

 そしてなんの説明もなく、カナコは変身ブローチを机の上に置き、逃げるように部屋を出ていってしまった。


 打ち上げの楽しい雰囲気はどこへやら。

 カラオケボックスの室内は静まりかえり、よその部屋の誰かの歌がうっすらと聞こえてくる。


 魔法少女連盟東京本部の魔法少女たちは、律が現れるまで〈黒き森〉に怯えバッシングを受けながらも一丸となって怪人たちに立ち向かっていた。

 その体制はルナの独裁的な支配を受けていたものの、魔法少女間の絆は強い。

 突然の引退にみな一様に暗い表情を浮かべていたが――なぜか、カナコとほとんど話したことのない律までが思いつめたような顔をしていた。



(ど、どうしよう。カナコが魔法少女辞めるのって、もしかして俺のせいだったりする!?)



 思い出すのは、怪人・リュウザキからカナコを助け出した際に口から飛び出た言葉。



『きゃはは♡ こんな攻撃も避けられないなんてざこすぎ♡ よくそんなので魔法少女名乗れたよね♡ 邪魔だから安全なとこで寝てたらぁ?♡』



 言った。確かに言った。

 というか、口から出てしまうのだ。

 それは律にはどうしょうもないことなのだが――とはいえ、確かに律はそう言った。



(魔法少女やめるって、もしかして俺の言葉に傷付いて……?)



 が、そんなことはなかった。



「全然違うプイ。家庭の事情プイ」



 カラオケ終わり。

 カナコの突然の引退宣言に魔法少女たちのテンションもすっかり下がり、会はそのままお開きとなった。

 しかし律はこっそりプイプイを誘い、ファミレスへと向かったのである。

 ガラガラ店内の隅っこ。

 できるだけ目立たない席に座り、プイプイは話し始める。



「お母さんにやめるよう言われたんだそうプイ。ぼくもその話を聞いたのはつい昨日のことで、もう少しよく考えるよう言ったプイが……」


「ああ、そういうことだったんだ。まぁ危険な仕事だし親は心配だよね」


「いや……そうじゃないんだプイ……」


「え?」



 プイプイはあたりを気にする素振りを見せる。

 他人に聞かせるのを躊躇するような内容であるらしい。

 そしてプイプイは声を潜めて言う。



「カナコのお母さんは、なんというか、ちょっと問題のある人で……そもそもカナコが魔法少女になったのはお母さんが新興宗教にハマって作った借金を返すためなんだプイ」


「えっ……」



 律は言葉を失う。

 子供が親の借金を返すために働く――それは決して健全な状態ではない。

 しかしそれは魔法少女たちのなかではよくある話なのだ。

 むしろルナやセイラのように裕福な家の子供が魔法少女になることのほうが珍しい。

 魔法少女というのは“子供が大金を稼げる危険な仕事”という側面を持つ。



「でもどうして今度は魔法少女を辞めさせようとしたんだろう。借金を返し終えたってこと?」


「いや、借金はまだ残っているようだプイ」


「じゃあ一体どういうこと?」


「カナコのお母さん……カルト宗教は辞められたプイが、今度は別のものにハマってしまったんだプイ」


「え……まさか……」



 プイプイの苦い表情に、律はピンと来てしまった。

 そしてその予想は当たった。



「H&Pだプイ」



 プイプイはウンザリしたように吐き捨てる。

 律もまた頭を抱えた。

 アルミホイルを頭に巻き、取材と称して律に近付いてきた集団――H&P。

 あの話の通じなさそうな集団に母親が入っているだなんて考えただけで絶望だった。



「でも魔法少女を辞めたらますます生活苦しくなるんじゃないの? そのへん分かってて辞めさせたのかな?」


「どうかなプイ……でも本人に辞めると言われれば、ぼくらのほうから強引に残ってとも言えないプイ。去る者追わず――それが魔法少女のしきたりだプイ」



 確かにプイプイの言うことも分かる。

 魔法少女は危険な仕事だ。

 辞めたいというのならば、どんな状況でもその気持ちを尊重しなくてはいけない。

 でもそれは本人が本心から辞めたいと言っていた場合の話だ。



「ねぇ、カナコの家って分かる?」


「え!? もしかして引き留めるつもりプイ?」


「いや、分かんないけど話を聞いてみたいなって」


「でもどうして律さんが? カナコとはほとんど喋ったことないプイ?」



 プイプイの言葉に、律は思わず苦笑する。

 それは自分の学生時代を思い出して出たものだった。



「親で苦労してる子を見てると首突っ込みたくなっちゃうんだよね」



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― 新着の感想 ―
改心しない毒親なら、どこぞのゾンビちゃんの食料になってもらうのがいいかな~。
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