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本物の勇者になりたい  作者: たわしまつわ


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第九話 ノックス北のダンジョン

 その日の晩、四人は夕食を一緒に取った。ライルとリアナはエールも付けている。繰り返しになるが、この時代、飲酒に年齢制限はない。リアナもまだ十八才だが遠慮なく飲んでいる。アレンとクレアが飲んでも問題はないのだが、二人はまだ酒が苦手なので食事だけにしていた。

 そして会話の中で出てきたのがダンジョンという言葉だった。

 一番詳しいライルが説明する。

「ダンジョンってのは魔族がこしらえた魔物の量産拠点なんだよ。壁が不思議な材質でできていて、淡く発光してるから照明がなくても潜れる。何でそんな話をしたかというと、森でぽつんと出てる魔物を一々探して討伐するのも面倒だろ。野山や森の中に比べて、ダンジョンの中は魔物がうようよといるもんだから、冒険者としてはありがたい狩場だってことなんだ」

「はあ、なるほど。稼ぐにはいい場所なんですね」

「そういうこと。その代わり、魔物も比較的強い種類が多い。ダンジョンの奥の方に行くほど強くなる傾向だ。それでも浅いところだけ少し探って、討伐してくるのも悪くないかと思ってな」

 ライルがそんなことを言い出したのは、レベルをさらに上げるにはどうしたらいいのかという話の流れからだった。効率の良い狩場があればということで、ダンジョンの話になったのである。

「あたしも数えるほどしかダンジョンに潜ったことないけど、ハードだけど効率がいいっていうのは間違いないわね」

 リアナも自分の経験を話した。

「ソロでダンジョンに潜ったんですか」

「まさか。それは無謀すぎ。パーティの助っ人として参加して、そのパーティと一緒に潜ったのよ」

「なるほど。そのくらいハードってことですか」

 アレンが頭を巡らせた。レベル二の自分達がダンジョンの魔物に通用するのだろうか。正直自信はもてない。

「せっかくだから、明日にでも軽く覗いてみないか。魔物は多いが、無理に全部と戦う必要はない。面倒な相手は無視すればいい」

 ライルの勧めで話が具体性を帯びてきた。

「クレアはどう思う?」

 ここできちんと相棒の意見を聞くのが、アレンの長所の一つだ。それだけ頼りにしているし、仲も良い。

「そうね。ちょっと見て、ちょっと戦って、とりあえず様子を見るというのならいいと思う。私達、レベルが上がったとは言え、まだ二なんだし、無茶はできないからね」

「クレアがそう言うなら、僕も賛成だ。ライルさん、それじゃあ明日、早速ダンジョンに行ってみましょう」

「了解だ。じゃあ明日はダンジョンだな」

 話が決まると、残りの時間は雑談をして過ごした。アレンとクレアもそれに加わりながら、初めてのダンジョンに期待と不安を感じていたのだった。


 翌日、いつも通り掲示板の前で落ち合った四人は、依頼書を物色することなく受付にダンジョンへ行くと告げた。

「そうですか。十分に気を付けて下さいね」

 そう答えるアリサの表情には、まだレベルが低いのに挑戦するのかと、軽く驚いた様子が見られた。

「ありがとうございます。十分気を付けます」

 アレンもそう答えて受付を後にする。よく考えた上での挑戦だが、やはり相当に危険な場所らしい。

 そして四人はギルドを出て北に向かう。草原を通り、森を抜け、丘陵地へと入り、そして山の中へ。

 その山の中腹に洞窟になっている場所があった。入り口はかなり広い。大型の魔物でも出入りできそうなくらいの大きさだった。

「ここだ。通称ノックス北のダンジョン。さて、入るぞ」

 ここでライルが隊列の重要性を説いた。探知役が先頭、二番目は斬り込み役、三番目に壁役、最後尾は後方警戒と役割分担するのが良いということである。それに従って、シーフのリアナを戦闘に二番目にアレン、三番目がクレア、最後尾にはライルという順番になった。

 中に入ると、壁面はライルが説明した通り、発光する材質でできていた。人間の文明にはない物質のようだった。魔族だけが知る材料で造った物だと分かる。見通しは良くないが、それなりに先の方まで見ることができる。それにしても広い通路で、幅も高さも四メートル以上はある。

「リアナ、探知頼む」

「了解。サーチ!」

 リアナが探知魔法を発動させた。広範囲にわたって魔物の所在や種類などを探知する魔法で、かなり便利である。

「うわ、分かってたけどすごい反応。ロックゴーレムとかガーゴイルとか、ちょっとアレン達には荷が重いのもいるわね。近いとこだと、ジャイアントホーネット十体ってのがいるわね。まずはそこからかな」

「十体ですか?」

 以前三体を相手に苦戦していたことを思い出し、アレンが少し驚きを顔に出していた。

「そう。自信ない?」

「あ、いえ。ライルさんとリアナさんもいるし、大丈夫です」

 アレンとしてはそう答えるしかない。レベルも上がったし、魔法剣の初実戦にちょうど良いかもしれないと思い直した。

「じゃあ案内するわよ」

 リアナの先導で四人が一列になって進んでいく。静まり返った通路は嫌でも緊張感を高めていた。

 しばらく進んだところで分岐があった。そこを右に曲がり、さらに奥へと入っていく。そしてその途中、部屋のようになっている広い場所があった。

 そこでリアナが一旦立ち止まり、全員を集める。

「ほら、ここ。ジャイアントホーネットがいるでしょ」

 そっと覗くと、確かに蜂型の魔物が壁面に止まっている。探知魔法で調べた通り十体。

「この数だと乱戦になりますね。それぞれ各自で迎撃、クレアはシールドで防御、そのくらいしか思いつきません」

「まあ、仕方ないだろう」

「そうね。あたしも適当に倒すから、みんなもそれぞれよろしく」

「攻撃力のない私は防御に徹します。みなさん頑張って下さい」

 そして四人が部屋に入ると、ホーネット達が一斉に飛び立ち、攻撃態勢に入ってきた。ここから戦闘開始である。

「よし、魔法剣、ウィンド」

 アレンが剣を抜き、魔法剣の技を使った。空気を圧縮させた力を剣にまとわせる。そして接近してきたホーネットめがけて剣を振るう。

「蒼空斬!」

 アレンの剣が空中を斬る。圧縮空気の刃が剣の先にまで伸び、目の前にいたホーネットを斬り裂き、真っ二つにしていた。アレンが思った以上に便利な技で、これならいけると自信を深めていた。

「ウィンドカッター」

 ライルも魔法を放ち、ホーネットを落としていく。

 リアナも短剣を振るい、カウンターを決めて一体ずつ確実に仕留める。

 しかし、数が多いので、次々に三人にホーネットが襲い掛かってくる。特にアレンの背後が危険だと見たクレアが魔法の楯を展開する。

「ホーリーシールド!」

 アレンの背後を狙っていたホーネットの攻撃を防ぐ。

「ありがとう、助かる」

 背後の心配がなくなったアレンが、再び魔法剣を振るう。まるで剣が伸びたように、剣の先にいるホーネットを斬り裂き、倒していた。

 元々ジャイアントホーネットはそれほど強くはない。三人がそれぞれ一撃で一体ずつ片付けていたので、すぐに数も減っていき、ものの数分で十体の魔物はすべて倒されていた。

 そしてアレンがいつもの戦闘後の確認を行う。各自の異常の有無を確認することは特にダンジョンでは重要である。もし異常があれば、即座に撤退すべきなのだ。

 全員の無事と異常のないことを確認すると、とりあえず小休止である。

「思ったよりすぐ片付きました。みんなのおかげです」

 アレンが頭を下げる。以前の苦労が嘘のように、今回は簡単に十体も倒せたのだ。とても頼もしい仲間達だとうれしく思っていた。

「アレンの新技も大したものだったぞ。リアナの回避も安定してるし、クレアのシールドもありがたかった。俺も良かったと思う」

「そうね。あたし一人じゃ十体は手こずりそう。みんなと一緒で良かったと思ってる」

「私のシールドも役に立って良かったです。ヒールも使わずに済んだのも良かったですね」

 それぞれが良かったと感想を言い合った。パーティらしく協力できたことに満足のいく戦いだった。


「さて、次はフロッガー三体あたりでどうかな」

 先程の探知魔法で、この周辺の魔物は大体把握済みである。その中でもあまり強くない魔物をリアナは選んでいた。フロッガーなら以前倒したことがある。攻撃力も高くないし、硬くもない。

「僕はそれでいいと思う。ライルさんとクレアはどう?」

「俺は構わない」

「私もいいと思います」

「じゃあ決まりですね。リアナさん、案内お願いします」

「了解。じゃあ、みんなついてきて」

 そして四人が一列になって進む。探知魔法を使用済みなので、不意に魔物に襲われる心配はほぼないが、念を入れて隊列を組んでいた。

 ダンジョンはそう複雑な構造ではなく、むしろ単純な造りをしていた。もし道に迷っても、ライルやリアナはたまにここノックス北のダンジョンに来ることがあったので、過去に冒険者達が作成した地図の写しを持っている。それに従えば安全に脱出することができる。

 しばらく道なりに進み、また先程と同じように、部屋のようになっている場所へと出る。

 そっと外から覗くと、リアナの探知通り、大きなカエルの形をした魔物が三体いた。フロッガーである。

「僕とライルさん、リアナさんで一人一体ずつ。クレアがシールドの用意をして待機。それでいいですか?」

「心配なのはアレンだな。一人で勝てるのか?」

 ライルが疑念を口にした。アレンが大丈夫とばかりにうなずく。

「魔法剣使うのか。分かった。一体は任せる」

「あたしの心配は?」

「リアナの強さでフロッガーに負けるわけないだろ」

「まあね。というわけだから、クレアはアレンを見てあげて」

 作戦も決まり、四人がそれぞれうなずく。

「よし、いこう」

 アレンの合図で、四人が部屋へと入っていく。

 そして作戦通り、一人一体ずつ引き受けて、離れた場所へと誘導する。アレンにはクレアが付き添っていた。

 まずはライルである。高レベルメイジの彼にとっては余裕の相手だ。

「アイシクルランス」

 正面から向き合うと、問答無用で氷の槍の魔法を叩き込む。勢い良く飛んだ槍の鋭い穂先が、一撃でフロッガーの胴体を貫いた。フロッガーが魔石を残して霧状になって消えていく。

「一応、リアナの様子を見ておくか」

 ライルはそうつぶやくと、リアナが戦っている場所へと向かった。

 そのリアナはフロッガー程度に負けていない。

 フロッガーの攻撃をいとも簡単に回避すると、その都度カウンターで斬撃を加えていく。フロッガーの傷は次々に増え、動きが鈍くなっていった。

 そしてフロッガーの背後に回り込むと、背中から短剣をぐさりと突き刺した。それがとどめとなり、フロッガーが地に倒れる。そして魔石を残して霧状になって消えていく。

「さすがリアナ、すぐに倒したな」

「ライルなんて魔法で一発だったじゃない。あれには負けるわ」

「見てたのか。さすが、余裕あるなあ」

「それよりアレンの様子を見に行きましょう」

 二人がアレンが戦っている場所へと向かう。

 アレンも五分以上にフロッガーと渡り合っていた。

 前回と違い、回避重視で立ち合っている。アレンはフロッガーの攻撃をことごとくかわしていた。

 そして魔法剣である。

「魔法剣、ファイア!」

 炎を剣にまとわせる技だった。その剣で斬りつけると、傷口が焼かれて大きなダメージが入る。そうして両前足を斬りつけて動きを封じると、正面から渾身の一撃を見舞った。

「火炎斬!」

 その一撃がフロッガーを脳天から腹まで一気に斬り裂く。そしてフロッガーが魔石を残して霧状になって消えていった。

「全員無事ですね。異常はないですか?」

 そして戦闘後の確認も忘れない。全員から異常なしの声を聞き、アレンがふうと息を吐く。

「僕も手助けなしで倒せました。成長できたって実感が湧きました。こういうのってうれしいですね」

 短い期間にずいぶん頼もしくなったものだとクレアが感心していた。

「私もアレンの成長には負けられませんね。頑張ります」

 ライルがそうかとうなずいた。自信がつくのはいいが、それが過信になってはいけない。まだまだ強い魔物はいくらでもいるのだから。

「うーん、一度強敵を相手にした方がいいかもしれないなあ。ロックゴーレム、相手にしてみるか」

 リアナが驚いた。アレンとクレアも首を傾げている。

「まあ、最後は俺が何とかするから。試しに戦ってみようか」

 ライルはそう言うと、意味ありげな表情を浮かべた。

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