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本物の勇者になりたい  作者: たわしまつわ


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第五話 そして仲間がもう一人

 翌日、朝食や身支度を済ませて、アレンとクレアはギルドの掲示板を見ていた。自分達でも倒せる魔物の情報はないかを真剣に探していた。しかし、どれもレベル十くらいは必要な魔物ばかりで、中々適当なのがない。

「あ、これ。ヒュージマンティス。これなら倒せそう」

「ボーリングビートルっていうのも大丈夫そうかな」

「あとラージウルフ、そんなところだなあ」

 二人で依頼書を外すと、ライルが下りてくるのを待つ。

 しばらくして、ライルが一人の女性を連れて下りてきた。

「お待たせ。依頼書、もう目を通したんだな」

 そしてライルが後ろからついてきた女性を紹介する。

「こちらはリアナ。レベル十のシーフだ。昨日、話をして、このパーティに入ってくれないかって誘ったんだ。ついでに夕食も奢ったけどな」

 リアナは銀髪をショートカットにした、アレンやクレアより少し年上の女性だった。急な話にアレンとクレアが目を丸くする。

「まだ入ると決めたわけじゃないわ。ただ、あたしもソロに限界を感じてたし、ライルには何度も世話になってるから、とりあえず一度、一緒に魔物を狩ってみてから考えるって話になってるの」

 確かに急にパーティに入ろうなどと決められるものではない。即断したライルの方が例外だろう。

「アレンとクレアには相談してなかったけど、どうかな?」

 アレンとクレアが顔を見合わせる。二人にしてみれば、レベルが上の先輩、しかもシーフという重要な職業の人がパーティに入ってくれるならありがたい。心配なのは収入面くらいである。

「僕達としては、入ってもらえたらすごくありがたいです」

「同意見です。すごく助かります。ただ、私達、まだ弱いので、強い魔物を倒せないですから、収入面が心配ではありますけど」

 二人は正直に答えた。

 リアナがそれを聞いて、なるほどとうなずく。

「いいね、正直で。魔物と戦うのに正直に言い合えることは必要なことだよ。分かった。今日一日、あたしもこのパーティに参加する」

 その言葉を聞いて、アレンとクレアも喜んだ。

「僕はアレン、レベル一の魔法戦士です。ライルさんにリアナさん、強力なメンバーが一緒で頼もしい限りです」

「私はクレア、レベル一のヒーラーです。もちろん私達も頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」

「歓迎してくれてあたしもうれしいよ。二人ともよろしくな」

 こうしてとりあえずこの日一日、パーティが四人になったのだった。


「まずはヒュージマンティスから行きます」

 四人は森の中に入ると、早速魔物の討伐を開始した。

 最初の目標はヒュージマンティス。体高二メートルほどの昆虫型の魔物である。腕に位置する場所にカマのようなものが生えていて、見た目以上に攻撃力がある。

 依頼書の情報を頼りに出現場所を探る。しばらくして、目的の魔物が見つかった。ギルドの情報も大したものである。

「ライルさんが牽制の魔法を。僕とリアナさんで左右からカマを斬り落としましょう。それでどうですか?」

 アレンが魔物をよく見て考えた作戦を説明する。まだレベル一で経験の浅いアレンなので、提案してみて作戦が良くなければ修正する必要があった。

「いいと思うぞ」

「あたしも賛成。さっさと倒すわよ」

 クレアの出番はないのだが、後方で待機して、いざという時は回復魔法や魔法の楯を使うことになる。貴重な予備戦力だ。

「何かあったら、私が回復します」

「じゃあ、始めるか。ファイアボール」

 まずはライルが火球の魔法を放つ。初級の火属性魔法だが、牽制としては十分だ。

 火球がヒュージマンティスの顔面に直撃し、動きが止まる。

「リアナさんは左から、僕は右から行きます」

「承知した」

 アレンが即座に声を掛けて、リアナと一緒に動き出す。一気に駆け寄ると、剣を抜いて左右のカマに斬りかかる。

 鋭い一撃がカマの根元を切り飛ばす。マンティスが反撃の手段を失って棒立ちになった。

「よし、とどめだ!」

 アレンが剣を振りかざし、渾身の斬撃をマンティスに見舞う。その一撃で頭部から胴体まで両断していた。マンティスが魔石を残して霧状になって消えていく。

「ほお、やるねえ。とてもレベル一とは思えない、見事な威力だよ」

 隣にいたリアナが感心していた。

「ありがとうございます。みんなの無事を確認します。僕は異常なし」

 アレンも一度ライルに教わったので、戦闘後すぐに全員の無事と異常の有無を確認した。こういう丁寧な部分もリーダー向きかもしれない。

「私も大丈夫」

「俺も何ともない」

「あたしも異常ないわ」

 三人の返答を受けてアレンがうなずく。

「分かりました。小休止して、次に向かいましょう」


 次の相手はボーリングビートルである。全長一メートル半とさほど大きくはない。攻撃も体当たりと噛みつきくらいで大したことはない。動きも鈍いので攻撃を当てるのも簡単だ。その代わり体表が見た目以上に硬く、攻撃が通りにくい。

「とりあえず当たってみます。攻撃が通らなかったら、また考えます」

 アレンがそう言うと、他の三人もうなずいた。

 そしてアレンが正面からボーリングビートルに接近する。

 虫型の魔物でも、やはり人間は敵だと感知するらしい。アレンめがけて突進し、体当たりを仕掛けてきた。アレンがそれをステップを踏んでかわす。

 そしてビートルの横から、斬撃を叩き込む。

 甲高い音がして、剣が表皮に弾かれる。多少は傷をつけたが、ほとんど意味がなかったと言って良い。

「真上から行きます。援護を頼みます」

 アレンが仲間に声を掛けた。

「よし、ファイアボール」

 ライルが再び火球の魔法を放つ。ビートルの顔面に直撃し、高熱の炎が焼き焦がす。リアナはその隙に接近し、その顔面に斬撃を入れていく。さすがはレベル十だけあって、しっかりと傷をつけていた。

「よし、やるぞ」

 仲間の援護に力を得たアレンは、ビートルの足を踏み台にして背中へと飛び乗る。そして、胸と腹の関節めがけて剣を突き立てた。ざっくりと剣が通り、穴が開く。

 一撃、二撃、三撃と繰り返し同じ場所を剣で突く。一撃ごとに深く突き刺さっていく。そして五回目の攻撃で、見事に関節を断ち切り、ビートルを倒すことに成功した。ビートルが魔石を残して霧状になって消えていく。

「よし、倒した。みんな異常はないですか?」

 アレンがまた無事と異常の確認をする。三人から問題ないとの返答を得て、ふうと大きく息をつく。

「よくやった、アレン。見事だったぞ」

 ライルがそう言って褒めてくれた。ライルの魔法の実力なら、きっとボーリングビートルくらい一撃で倒せるはずだ。それを自分達のために、あえて初級魔法しか使わずに援護してくれる。それがありがたいと、アレンはしみじみと思っていた。

「ありがとうございます。ライルさん、リアナさん、援護助かりました」

 アレンの言葉に、クレアが苦笑を返した。

「私の出番、なかったわね。まあ、アレンが無事で良かったけど」

「それはそうだよ。ヒーラーは回復が本来の仕事だから。出番がないに越したことはないと思うよ」

「そうね。とりあえず二体撃破。アレン、頑張ったね」

「うん。この調子で次も倒そう」

 そして四人は次の魔物のいる場所へと向かった。


 三体目はラージウルフである。

 体長二メートルくらいで、攻撃はやはり体当たりと噛みつきくらいとさほど脅威ではない。しかし、狼型ということもあり、素早い動きをするのが厄介なところである。

 四人が接近していくと、まだ距離のあるうちから人間の存在を感知したようで、ラージウルフの方からも接近してきた。

「僕が行きます」

 先程の二戦で自信をつけたアレンが前に出る。

 剣を抜くと、正面から斬撃を叩き込む。

「!」

 しかし、その一撃はあっさりウルフにかわされてしまった。ウルフがそのまま突進してきて、アレンの胸元に体当たりをしてきた。アレンがその勢いで後ろへと弾き飛ばされる。

 ウルフが倒れたアレンに噛みつこうと接近してきた。

「マジックシールド」

 ライルが魔法の楯を展開する。そしてウルフの眼前に立ち、その攻撃を防いだ。そしてクレアとリアナに指示を出す。

「クレア、回復を。リアナは牽制」

「分かりました。ヒール!」

 クレアが即座に回復魔法をアレンに掛ける。

「了解。こっちよ、ウルフさん」

 リアナはウルフの右側から牽制の斬撃を繰り出す。

 三人が時間を稼いでくれたおかげで、アレンも戦闘に戻ることができた。

「助かります。もう一度、僕が出ます!」

 アレンがラージウルフへと突進する。リアナと戦っていたウルフはそれだけで手一杯になっていて、隙だらけになっていた。

「もう一撃!」

 アレンがウルフの横から斬撃を加える。

 今度は見事にウルフの胴体を捉え、その体を真っ二つにしていた。ウルフが魔石を残して霧状になって消えていく。

 そしてアレンが戦闘後の確認をする。三人に異常はないが、ラージウルフの体当たりを受けたアレンだけ、回復魔法を掛けてもらってはいたが、若干の痛みが残っていた。

「すみません。僕の油断でした。ウルフがかわすことがあるって、予測してなかったのが良くなかったです」

 アレンが率直に三人に謝った。全くその通りなのだが、本人が分かっているならと、そこは三人もうなずくだけで済ませていた。

「それよりアレン、クレア、あたしもしばらくこのパーティに参加することにするわ」

 リアナが急にそんなことを言い出した。

「二人が強くなるまでは、ちゃんと他の冒険者と連携して戦った方がいいと思う。まあ要するに、二人を放っては置けないってことね」

「やっぱそう思うよな。俺も同感だ」

 ライルがリアナの言葉に同意した。言われた側のアレンとクレアからすれば、弱すぎて放っておけないと宣言されたわけで、悔しい気持ち半分というところである。しかし、残り半分は、頼もしい仲間が増えることで、この先も頑張れそうだという期待感があった。

 二人は率直にそれを話した。

「自分達が弱いのは承知してます。だから、手助けしてもらえるのは、とてもありがたく思います」

「ライルさん、リアナさんがせっかく協力してくれるんです。私達も強くなれるように頑張りますね」

 ライルとリアナが顔を見合わせた。そして二人が笑みを浮かべる。素直で正直な二人に好感を覚えたからだった。

「よし、それじゃあ、二人とも頑張れよ。できる限りの助力はする」

「あたしも同意見。二人の頑張りに期待してる。でもね」

 リアナがそこまで言うと、困ったように言葉を続けた。

「ヒュージマンティス、ボーリングビートル、ラージウルフだけじゃあ大赤字なんだけど。魔石代、大銅貨六枚ってとこでしょ。四人で山分けしたら、銅貨十五枚しかないわ。どうするの?」

 確かにその通りであった。四人もいると十分な稼ぎが必要だ。

「まあ、そこはまた蟻の巣だろうな。無限に湧くし」

 ライルが言うと、リアナがうんざりした顔になった。

「はは、またあそこのお世話になるのね。まあ、仕方ないか」

 蟻の巣は確実に小金を稼ぐにはちょうど良い場所なので、レベルの低い冒険者が必ずと言って良いほど利用していた。リアナも例外ではない。

 アレンとクレアからすれば、確実に魔石を稼げるのはありがたい。それに少しだが経験にもなり、レベルアップが近づく。

「んじゃ、また蟻の巣でラージアント狩りだ。リーダー、それでいいか?」

 ライルの言葉にアレンが強くうなずく。

「行きましょう。今度は僕も気を付けますから」

 冒険者といってもお宝の類を収集できるわけではない。魔物を倒して得た魔石を換金して収入を得るのだ。そのためには、固定した場所でいくらでも魔物が倒せるというのは実にありがたい。

 こうして四人はまた蟻の巣へと向かうのであった。

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