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伝説のスパイは溺愛から逃れたい  作者: 空雨 依里
1章

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5 任務の対象

 入ってきた人物を見て、私は目を見張った。


(わぁ、とっても綺麗な人)


 長いまつ毛に、通った鼻筋、さらさらな金髪がとても柔らかそう。

 その人のすべてがこの場で異彩を放っていた。


 これは、世に言う──イケメンというものではないだろうか。


(この人が任務で見張れ、といわれた人物……)



 バチっ



 入ってきた美少年──任務の対象(レン)と視線が交わった。


(えっ、スパイだってバレた!?)


 もしかして、声に出してた? やらかしていないよね??

 まさかな……と思いながら、レンの様子を伺うと、相手はびっくりしたように目を見開いていた。


 ──まるで、信じられないものを見るように。


(!?)


 私は思わず目を疑った。

 目が合っただけでなく、任務の対象が私を見て目を見開いたのだ。


 しかし次に見た時、レンは何事もないようにパーティー会場に向かって階段を下った。


 気のせいだったのだろうか。

 ……うん、気のせいに違いない。きっとただの自惚れ。


 任務の対象が私と知り合いのわけじゃああるまいし。

 会ったことないはずだし。


 こんなに綺麗な人とすれ違っていたら、嫌でも印象に残っているだろう。

 忘れるわけがない。……でも、この心騒ぎはなんだろうか。


 まさか……私が()()()()()ときに会っているとか?

 あの頃の記憶は曖昧だ。でも、今私は素顔で。


 ……だとしたら、まずい。ううん、結構まずいかもしれない。


 私はあの家から逃げ出した。

 あの両親は今も私を探しているのだろう。


 もし、レンが言ったら、私は……捕まるのだろうか?

 せっかく、逃げ出せたのに。自分を必要としてくれる職場に入れたのに……


(いや、違う……これから毎日顔を変えればいい。私が“貴族”なんて人を知っている人のほうが少ない。バレたとしても、私は自分でなんとかして見せる、自分の力で──)


 頬を両手で叩いて、気合を入れる。

 今は任務に集中!!

 自己暗示が消えたら、任務に迷惑をかける。


 私はレンのことを頭から追い払って、気にしないことにした。


 今みんなは何をしているんだろう。いろいろ変なことを私は自分でしていたけど……自分で自分のほっぺを叩いたり、怪しまれていないよね……?


 ちらっと見ると、周りの人々はまだレンを見ていた。

 誰も私のことを気にしていない。みんなレンに目を奪われたようにレンから視線を外せずにいるようだった。


 今ならこの人だらけの場所から抜け出せそうだ。

 私はパーティーの端っこ──バルコニーに出た。


 他の仲間をどこに居るのだろう──と考えていたわけではなく、実はもうなんとなくだけど検討はついていた。


 問題はどうやって怪しまれずに話しかけるかだ。



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