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伝説のスパイは溺愛から逃れたい  作者: 空雨 依里
1章

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4 パーティー

 「あの……」

 「ひゃいっ」


 びっくりした……。しかも、声も裏返ちゃった! 恥ずっ!!

 声をかけられたことによって、ようやく人が周りにいっぱい集まっていることに気がついた。


「麗華嬢で合っておりますか?」

「はい」


 めっちゃ可愛いっ……。でも、なんだろう……?

 はっ、まさか、マナーが変わって、間違ってた?


「お綺麗です」


 思っていたのと全く違うことを言われて、一瞬あっけにとられる。


「あ、ありがとう。あなたもお美しいですわ」


 私に言われたのは、社交辞令なんてことは分かっている。

 だって、私なんかが綺麗なわけがないのだから。それに、目の前の令嬢やいつもパーティーに参加している令嬢の方が綺麗に決まっているし、その中だったら、私の外見なんて比べ物にもならないはずだ。


「嬉しいですわ。 麗華様はどちらの家系の出身なのでしょうか? 今まで社交の場でお見かけしたことがないのですけれど……」

「えっと……」


 どう、答えよう……

 あっ、確か……渡されたプロフィールには、体が生まれつき弱かったから、社交の場に来られなかったと書いた。私はそのまま答えることにした。


「実は、生まれつき体が弱くて、ずっと家で療養していたんです。だから、あんまりこういう場に出るのは初めてなのです。何かが間違っていましたら、ご指導よろしくお願いします!」


 しゃっぁ! 無事に超えられたことが嬉しくて、口に出さないけど、心の中で騒ぐ。

 これで、流行が変わってたり、マナーが変わったところがあるとしても、怪しく思われないはずだ!


「そうなのですね。こんな美しい人を社交の場であったことがないから……」


 目の前の令嬢が何かを言って、周りの者が同調するようにうなずいた。


「え?」


 なんと言ったのだろう。心の中で喜びの声をあげてたから『そうなのですね』しか聞き取れなかった。

 すると、目の前の令嬢ははっと我に返ったように「なんでもないですわ。気になさらないでください」と言う。


 なんだかそう言われると気になるのだが、聞き返しても多分答えてくれないパターンなのだろうな。と思って、気にしないことにした。

 そのあと、また何と思ったのか、令嬢は口を開いた。


「気分がすぐれない、なんてことはありませんか?」

「大丈夫ですわ。心配してくださり、ありがとうございます」


 目の前の令嬢が本気で心配していることが伝わってくる。きっといい人なんだろうなぁ、となんとなく思った時だった。


「レン様のおなーり」


 と言う受付の人の声が響く。

 その声に、一気に注目が入り口の方に集まる。


 そして、その人物を見て、私は思わず目を見張ることになった──



「言い訳がうまい、控えな性格で思わず助けるようなところやプロフィールをしっかりと押さえているのもいいわ。これはいい人を紹介したわね……」


 令嬢が周囲にも聞こえない声でぼそっと言う。周りはもちろん受付のほうに意識を持っていかれた私に、その声は届くことはなかった。



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