3 任務そうそう詰んだかもしれない……
パーティーへのドアが開かれると同時に受付の人が「麗華嬢のおなーり」と言った。
今思えば結構恥ずかしかったかもしれない。自己暗示をしていたとはいえ、“久しぶりのパーティー”だったし……。
受付の人の声でみんなの注目が一気に集まった。
うっ……、気まずっ……
「あの令嬢、ご存じで?」
「いいえ。存じておりませんわ」
「美しい方ですわね」
コソコソと何かを話している声が耳に届く。
(わああー、素顔でくるんじゃなかったーー。絶対に値踏みされてるよぉ……)
変装すれば、いささかまだ浮かないくらいの工夫ができるのに……っ〜〜
もう後悔してしまった。
「あの御令嬢……美しいな……」
「麗華嬢、か……。名前まで綺麗だ」
「声かけてこいよ」
「無理だろう」
会場がざわめき、その場所を見ないように、遠い目をして階段を降りる。
(やらかした……)
心の中では大騒ぎなのだが、決して、決っっして、顔には出さないようにする。
心を無にするために、任務を考え、緊張を高めていた私に周りの声は耳に届かなかった。
今回の任務は、【レン】という名前の人物を見張ること。貴族の開催するこのパーティーに現れるらしい。
……それだけ。
服も仮の身分も用意してもらったけど、詳しい情報はまるでなし。
レン──……なんだか聞き覚えがある気がするけど、どこかで聞いたのかな?
って違う違う。任務に集中しなきゃ……。
でも……レンという人物について他に何にも聞いてない……。見ればわかると言われても、わかんなかったらどうしよう……
(まず、もうこの会場にいるとしたら、その時点で詰む)
まだ会場についていないだけなのだろうか……。どっちかっていうと後者にしてほしい。
これ以上考えると頭が先にパンクする。冗談抜きに。
(他にも参加しているスパイがいると聞いたから……まずは仲間を探しにでも行こうかな……?)
そう考えたものの、すぐに却下した。……却下さざえるを得なかった。
……あ、そういえばこちらも詳しいことを聞かされていない。『仲間がいる』だけだった
じゃあ、仲間探しもいけないじゃんか……。
──まさか、初めての任務で始まってそうそう本当に詰んだなんていうことはないよね……?
(誰かーー、私にやることをください……!!)
そう心の中で叫んでいた時だった。「あの……」と声をかけられたのは。




