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伝説のスパイは溺愛から逃れたい  作者: 空雨 依里
1章

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3/30

2 きっかけ

 あの日はスパイとしての初めての任務を渡された日だった。


 その内容は、ある貴族達が開催すつパーティーに潜入することだった。

 そこで、あの人と初めて会った。


 今でも、はっきりと思い出すことができる。



***



 やばいっやばい……っ

 初めての任務で遅刻になるなんて信用失っちゃう……っ!


 今日はなんか変装がうまくいかなくてギリギリになって、変装するのをしぶしぶ諦めた。

 一番やっちゃいけないミス。なのに、私は……


 そう思っていた考えをすぐに捨てた。


(でも、毎日違う変装をしているから今日は本来の顔なんて誰も思わないはずっ……)


 注意事項には必ず変装することなんて書かれてなかったから、大丈夫……

 な、はず……う、ん……大丈夫……大丈夫……


 私──澪里は予め用意された服を着て、パーティーの会場にたどり着いた。


 スーハー


 会場に入る前に深い深呼吸をして、自分に自己暗示をかける。


 私は、今から澪里じゃなくてお嬢様の麗華(れいか)。年は十五歳で私と一緒。雰囲気は柔らかくて、おっとりとしている。話し方は……


 誰かを完璧に演じるには、その人になりきる必要がある。だから私は、毎回こうして今みたいに自己暗示をかけているのだ。


 任務が終わったり、もうその人物を演じなくていい時は自然と自己暗示が解けるのだが、たまに任務中に自己暗示が解けて来て、だんだんと自分の口調になったり、逆に解けないで任務後もその人の話し方になったりもする。


 その場合は、動揺していたり、何かの、私にとっての精神的ダメージ──なんらかの原因やきっかけで解ける。


 まあ、今はそのことはいいんだけど。


 任務に集中するために、先輩から渡られたプロフィールの内容を自己暗示していく。……多分だけど、この任務の為に作られた人物だろうな……。


 自己暗示が終わり、私は受付へ向かった。




 ──まさかこのパーティーで私の本当の顔と名前を知っている人がいるとは、この時の私は夢にも思わなかった。……それも、任務に関わる張本人に。変装してパーティーに参加しなかったのを私は今でも後悔することになるのだった。



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