1 再びの出会い
伝説のスパイと噂される澪里は仕事をしていた。
場所は、表は高級ホテル。一般人も利用することが出来る。裏では、貴族やお偉いさん達が会議の場として利用されるため、澪里は今、男性に変装して仲間たちと警備任務に就いていた。
ここで言う“仲間”とは、澪里ことを知っている。つまり同僚──同じ仕事をしていても、秘密が多い澪里がどんな者か、他の者よりちょっとだけ分かっている知人に近い人たちだ。
しかも、実力があり、みんな幹部などの位にいる。
それでも、澪里がどんな名字なのか、どんな者なのか……どんな顔をしているのかは知らない。ただ澪里と言う名前で、話す限り多分若い女の子だろう。という感じなのである。
その理由は、澪里が仕事をするときに毎回違う変装をしてくるからだ。どれが本当の顔で、どれが変装なのか、それがわからないからだ。
そのことを、当時の本人──澪里は知る由もないが。
それでも、噂の澪里と一緒に任務できる時点で、知人にはなっていた。警備任務を澪里と共に担っているのが、他でもないその仲間たちだった。
警備の内容はスパイを隠して、廊下に立ち、不審のものがいないかのチェック。
──いつでも、何が起こっても動けれるように。
澪里たちが立っている廊下の後に部屋があり、まるで学校の教室一つ分と同じ様に広く、簡素な机と椅子が整然と並んでいる。そこだけ見れば、学校と間違えるくらいには。
豪華な施設の一角にしては、異様なほど質素だった。ここを案内された時はなぜ? と思ってしまったが、何やら休憩室だそうだ。
この部屋は、今ここにいる四人専用の休憩室として使ってもいい。……ここで作戦会議や大きな武器を置く為に使え──と遠回しに言っていると同じだった。
警備するのみ四人でも大丈夫なのかと思わず思うかもしれないが、この四人は幹部であり、全てのスパイの中で上から四番までの実力者だ。とは言っても、そんなに差はなく、得意分野もちがうが。
つまり、スパイの中でも上位四人を集めて警備を任されるほど、今回は重要だということになる。
澪里達が立つ廊下の先から何人かが歩いて来るのが見えた。
外見や歩き方からして、貴族のようだ。
先頭で歩いているのは遠くからでも分かるキラキラした金髪を持った一人の男性。
十八歳前後だろうか、表情は凛々しく、二十代と言われても納得できる。
その人を見た瞬間、ドクンと澪里の心臓が大きく跳ねる。冷や汗が流れ、全身の血の気が引いて行く感覚がした。
(な、んで……)
スパイにとって、命どりとなる情報──私の本名と素顔をなぜか知っていた。この人にはバレてはいけなかったと勘が叫んでいた時の、初めてあった時の、悪夢のような記憶が鮮やかに蘇ってくる。




