25 婚約者のふりをすることになりました
部屋から出た私は口を開いた。
「なんのつもりですか?」
「……なんのことだか」
レンは私の口調をそのままパクって、使いながら薄く笑う。
「……本当の目的を言ってください」
(ざんざん私を追いかけて、私の本名の澪里にたどり着いたこの人は、絶対に護衛を雇いたいだけなわけがない)
「うーん、澪里を手に入れること」
(嘘に聞こえない!!)
ぞわっとして、鳥肌が立つのを感じた。
「……と言ったらどうする?」
「ご冗談を」
「冷たいな〜」
そう返しながらも、レンの言葉は嘘に聞こえないのが、怖かった。
いや、本心を読まさせないところが、余計に恐怖をそそのかしているようだった。
ホテルでの、執着を見て、体験したからだろうか。
「うそうそ、俺の婚約者になって」
「? どういうことですか?」
婚約者……? 一体この人は何をいいの出すだろう。
「偽りのね、」
その説明でようやくわかってきた。
「つまり、婚約者のフリをして、ということですか」
「そう、これでも公爵だし? 権力ばっかり求めるものばかりで、うんざりしてきてね」
さっきと変わってこれは、嘘には見えない。本当に困っているのが伝わってくる。
なにを考えているのかはわからないけど、ひとまず、油断しないように気をつけて、ゆっくりレンを調べればいいか。
「なるほど、了解しました。護衛も兼ねて、危険からお守りします」
「うん。助かるよ。ってことで、レッツゴー!!」
テンション高めなレンに、ガシっと腕を捕まえられる。
「え」
(えええぇぇ!!!)
有無を言わせずに連れ去られるのだった。
「ちょ、っと待って!! ひ、引っ張らないで!!」
体勢を立て直そうにも、そのたびにスピードを上げられる。
通り過ぎて行く、景色を見ながら、この人、公爵だよね? って思った私だった。




