再びの出会い
伝説のスパイと噂される澪里は仕事をしていた。
場所は、高級ホテルのようなところで一般人も利用することが出来る。しかし貴族やお偉いさんも利用する為、澪里は今、男に変装して仲間たちと警備任務に就いていた。
ここで言う“仲間”とは、澪里のことを知っている。つまり、同僚━━同じ仕事をしていても唯一澪里がどんな者か、他の者よりちょっとだけ分かっている知り合いみたいなものだ。
それでも、どんな名字かは知らない。ただ澪里と言う名前で、話していてたぶん若い女の子だろう。という感じだ。なぜなら仕事する時、会う時は毎回違う変装をしているからだ。だから、本当の顔は知らない。どれが本当の顔でどれが変装か分からないから。
その警備任務を澪里と共に担っているのが、他でもない仲間たちだった。
警備の内容は廊下に立って不審な者がいないかチェックする事だ。
澪里達が立っている廊下の後ろは部屋がある。案内された部屋は、まるで学校の教室のように広く、簡素な机と椅子が整然と並んでいた。豪華な施設の一角にしては、異様なほど質素だった。此処を案内された時は何故?と思っていたが休憩室だそうだ。
この部屋は、今ここにいる四人専用の休憩室として使っていいらしい。警備するのに四人で大丈夫なのか?と思うかもしれないが、この四人は全てスパイの中で上から四番までの実力者だ。と、言ってもそんなに四人の差はなく、全員幹部である。
つまり、スパイの中でも上位四人を集めて警備を任せるほど、この場所は重要だということになるだろう。
澪里達が立っている廊下を何人かが歩いて来るのが見えた。
外見や歩き姿から見ると、貴族なようだ。先頭で歩いているのは一人の男。十八歳だろうか、表情は凛々しく、二十代のようにも見える。
その男を見た途端、澪里は冷や汗が流れた。心臓がドクン、ドクンとうるさいほどに強く打っている。
あいつが、なぜここに……?
全身の血の気が引いた。
あの、思い出したくもない──いや、今でも夢に見るほどの悪夢のような記憶が、鮮やかに蘇ってくる。




