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ノーリミットアビリティ  作者: 桐地栄人
第二章 挫折の果てに

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第34話 本性

五月六日分です


「舞華っ!?」

「それはっ!」


昇華と珊瑚も聞かされていなかったのだろう。驚きに目を見開き、慌てている。


その物体は脅しなどではなく、一切の容赦なくシークの顔面めがけて一直線に飛来する。

あわやその物体がシークを貫かんとするその瞬間、シークは持ち前の目と反射神経によって、慌てることなくその物体を掴み取る。

その手には、運動エネルギーを握力によってかき消したことで少し熱くなった細長く硬い物質が握られていた。


「……棒手裏剣とは珍しいもの使うな」


キャッチした棒状の鉄片をしげしげと眺めながらシークは話しかける。

シークがあっさりとキャッチしたことに驚きながらも、舞華は左手に隠していたもう一個の棒手裏剣を投げる。


しかし、その棒手裏剣は舞華の手を離れることはなかった。


「二個目はさすがに投げさせないぜ」


いつのまにか、シークの糸が舞華の手に絡み付き、棒手裏剣を固定させていた。


「くっ……何故気付いた?」

「殺気がダダ漏れだぞ。あとは俺が牙條院家の役割を知っていたからだな」


五條院家にはそれぞれの家に特色がある。

例えば、五條院家は世界で最も金を持つ一族として知られているが、五條院家の内でお金儲けに主導しているのは五條院筆頭の天條院家である。

他にも、ヘリオス国内の法は最終的には三人の神憑の合意によって行われるのだが、その原案を作っているのは法條院家である。


そして、牙條院家の役割は要人の護衛及び敵対者の暗殺である。

舞華も牙城家に生まれた者として、そう言った特殊な訓練を受けているのだ。

しかし、そうは言っても未だ十三歳という若さでは、完璧とは程遠い練度しかないのは仕方のないことであろう。


「……」

「そう怖い顔で睨むなよ。今日はそもそもお前達に頼みごとをしに来たんだ」

「そ、そうよ、舞華。いくら断られたからって……」

「ん?断られたって何だ?」

「昇華!余計なことを!」


状況に追いつけていないながらも舞華を止めようとした昇華だったが、焦ったあまり口を滑らせてしまった。

そのことに気付いた昇華は慌てて口を塞ぐも、当然既にシークに聞かれている。


「んで、何を断られたんだ?……もしかして、俺の情報を上から引き出そうとしたのか?だとしたら……多分無理だと思うぞ?」

「なっ、何故だ!?」


既に体面を気にする余裕もないようで、舞華は食い気味に聞いてくる。

その様子を見て、シークはげっそりした顔をしながら聞く。


「お前、まさか……実は物凄くプレッシャーに弱いのか?」

「ううっ……」


もしやと思い、シークが問い詰めると、舞華は低く呻いた声が口から漏れる。

図星だったようだ。


「マジかよ……。俺のクラス、まともな奴がいねぇな」

「う、うるさい!それで、何で秋沙様はお前の情報を教えてくださらない?!」

「じゃあ取引をしようぜ?」

「取引、だと?」

「ああ、お前と……後ろの二人、昇華と珊瑚を入れて三人でいい。俺側はそうだな……、俺と奈落山の二人でどうだ?」

「どうだ、とは?」

「もしお前らが俺に勝てたらお前らの知りたいことを教えてやる。その代わり、もしお前らが俺らに負けたら俺の頼みごとを聞いてほしい」


シークは至って真面目な顔をして舞華に頼み込む。


「……最初のはともかく、さっきも言った通り私には……」

「だろうな。だからそれを出来る人間を紹介してほしい」

「それを出来る人間?」


一瞬では思いつかないのか、訝しげに考える顔をした舞華に、シークははっきりと告げる。


「火の次期神憑、天條院秋沙との繋ぎ役を、お前達に頼みたい」

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