77、世界には同じ顔をしたやつが3人は居る。
シスターの体は至る所が焼けただれており、その傷口からは今もなお煙が上がっていた。
殺してしまったかとヒヤッとしたが、その胸が上下に動いていることからどうやら生きているらしい。
「これ、は、い、たい、ですね」
「シスター……あんたの負けだ」
「何を、おっしゃ、い、ますか、私は、まだ」
「っ!? おい! 無理に動くな!」
シスターはそのボロボロの体を動かし、ゆっくりと立ち上がった。
その際に小さく呻いていることから体中が悲鳴を上げているのだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ」
しかしその立ち姿は先程までとは違い、まるで今にも崩れそうだと思えるほどフラフラとした脆いものだった。
だがその目からは未だに闘志が消えずギラギラと輝いており、俺はそれから目を離せずにいた。
「……そんなぼろぼろの体で何ができる、殺しはしないからおとなしく投降しろ」
「投降、ですか……ふふっ、あははははは!」
体中が悲鳴を上げるのにも構わずにシスターは突如笑い始めた。
「はははははは! はぁ……そんなこと出来るわけないでしょう! 私はまだ目的を果たしていないのです!」
ビリビリと気迫だけで周囲を痺れさせる。
その目には闘志だけでなく、明確な、燃え狂う怒りが見えた。
「ですが、今の私ではあなたには勝てません……仕方ないですねぇ、まだ少し足りませんが」
「リヒト! 何かするつもりだ!」
「分かっている!」
俺は今度こそシスターを完全に止めようと剣を振りかざす。
だがそれよりもシスターが床に手を付けるのが先だった。
「我が主よ! 我が祈りのままに我が身を食らい、この世にご顕現されたもう!」
シスターの肩に剣が吸い込まれ肉を裂き、骨を断つ、明らかな致命傷だ。
だがその顔は苦痛には歪んでおらず、むしろ恍惚としているかのような表情だった。
「あの像に気をつけて!」
フランメが注意を促すと同時に天使のような像の周囲の床から黒い、黒い水が噴き出す。
いや、あれは水ではない。
あの黒い触手、あれが大量に噴き出してまるで濁流のようになっているのだ。
「っ! まずい!」
俺はとっさに剣を手放して後ろに飛びのく。
次の瞬間、あの黒い濁流は一斉にシスターに殺到する。
「ああ! 貴方様の! ああ! ああ! 包まれて! 私が包まれて! ああ! 我が身は我が主と一つに? 一つに! そう! 一つに! 私が! 私が私がわたいがわたわたわたわたわた……」
シスターはまるで狂ったかの様に笑いながら黒に飲み込まれ、ついにはその声は聞こえなくなった。
そしてその黒い濁流は未だにシスターが居た場所をぐるぐると回り始めた。
「…………狂ってやがる」
「けど今はチャンスだよ、あの像がおそらく本体、ならばあれを壊せばこいつらは消えるはず!」
「……なるほど、試してみる価値はあるな!」
俺はあの像を壊すべく駆け出した。
だがそれは叶わない。
俺と像の間にまるで像を守ろうとするかのように黒い濁流が蠢き、飲み込まんと迫る。
さすがにこれには突っ込めない。
「極光ぉ!」
俺は全力の極光を放ちながら後ろへと飛ぶ。
しかし完全には避けることは出来ず、右足が飲み込まれて思わずバランスを崩してしまう。
「しまっ!?」
その小さな隙が致命傷となる。
今度は薄く、まるで俺を包み込まんと広がる。
……仕方がない。
「はぁ!」
俺は極光を乱反射の密度で放つという荒業をする。
その無茶のかいあって俺は黒い濁流から完全に逃げることに成功する。
「ぐぅ!?」
だがただでとは言わない。
この姿では収まり切れない威力を無理やり行使したことによる反動が体に響き渡る。
だが修復できない範囲ではない、このまま回復を繰り返しながら少しずつ
・・ぐちゃ、・・ぐちゃ
「……嘘だろ」
その聞き覚えのある音に顔を上げればあの見覚えのある化け物が床に空いた穴から這い出てくるところであった。
それも一体ではない、ここから見えるだけでも最低でも三体いる。
……これは、本格的に不味いな。




