76、断片
「閃光!」
閃光が煌めき、それを躱したシスターが迫る。
だが反応したリヒト球からのレーザーに阻まれて俺には届かない。
着地を狙ってまた俺が閃光を放ち、それも躱されてしまう。
もう何度目だろうか、そんな攻防が繰り返されていた。
「埒があきませんね」
「あきらめて降参してくれると楽なんだが」
「何をおっしゃいますか。確かに私はあなたに届きません、ですがそれはあなたも同じでしょう?」
「別に俺はこのまま続けていいんだがな、あんたの体力が尽きるまで……閃光!」
「おっと」
不意を突いたつもりだったが、身をひるがえされて易々と躱されてしまう。
「ちっ」
「あなたにとってもそれは望むことでは無いでしょう?」
「……」
「約束が有るのでしょう?」
「黙れ」
「怖いです、ね!」
シスターが初めて自分からアクションを起こした。
けどそれは今までと同じ愚直な突進、その程度ではリヒト球につかまる。
一体何が狙いだ?
「……この魔法の弱点を教えてあげましょう」
今まで通りにリヒト球が反応しレーザーを放つ。
だがそれに対してシスターは…………何もしなかった。
「なっ!?」
いくつものレーザーがシスターの服を焦がし皮膚を焼く。
その白い肌にいくつもの火傷ができ、吐き気を催す肉の焼ける匂いが周囲に漂う。
「威力が低すぎます、もっと殺すつもりでしなさい」
リヒト球を切り抜けて一直線に駆けてくる。
……しまった、あっけに取られてしまった。
「っ!? 乱は」
乱反射を放とうとした俺の顔に勢いよく何かがかけられる。
一拍遅れて目に走る激痛。
「がっ!?」
っ! しまった技が中断されて!
「避けるときにあなたが削った小石を集めさせてもらいました」
まずいまずいまずいまずい!
今ので完全に方向を見失った。
……一か八かだ!
「光渦!」
俺はとっさにまだ見せていない光渦を放つ。
たのむ! 当たってくれ!
「危ない、危ない」
そんな祈りも虚しく、何の手応えもかえって来なかった。
「終わりです」
……あ、これはやられたな。
そんな状況だと言うのに俺の頭はやけに落ち着いている、これが走馬灯か。
なぜだろう、この感覚は既視感が有る。
……ああ、それは当たり前か。
なんせよく覚えていないが一回俺は死んでいる、ならば死ぬ直前の感覚はこれで二回目だ。
前と違うところは今回はこの体が死んでも問題ない事だろう。
{・・・、・や・、・、・ろ!}
ズキリと頭が痛む。
{・や・・! あ・・・・・お・・・・・な・!}
何だ、何か大切な事を忘れているような。
{・・が・! ・・・、・・・・す・・!}
俺が、死んだとき……そう、俺が死んだとき。
{・・、・ふ・・・・た・・・めん・}
そんな俺の思考は突如強い光によって中断される。
「くっ、目がっ!?」
それはあまりにも強い光だった。それこそ目を瞑っていても人影が見えるほどの。
……見えた。
「居合いの型、乱反射ぁ!」
「がぁぁぁ!」
死なないように、それでも人を焼くこと出来るほどの火力をもった乱反射がシスターに牙をむいているのが手応えで分かる。
遅れてどさり、という音。十中八九シスターが倒れる音だろう。
「……ふぅ」
ようやく視力が戻ってきた。
それにしても、あの光は何だったんだろう?
俺とシスター以外は誰もいなかったは
「やぁ、どうやら間に合ったようだな」
「ずぅぅぅぅ!?」
そこ、正確には俺の肩に居たのはあの俺を惑わせまくった憎きフランメ(小鳥)だった。
「はいフランメです、めんどくさかったけど心配で助けに来ました」
「だからさぁ! 俺言ったよな? 急に現れるなって!」
「でも助かったでしょう?」
「……まぁ、それは礼を言う」
「なんせ相手はなかなかの手練れだったからね、このレベルの使い魔だとタイミングを計る必要が有った」
「どちらかというと初めから手伝ってほしかったな」
「まぁまぁ、それよりも元凶を抑えなくても?」
「……お前からやり取り始めただろう」
俺はどこか釈然とせずにシスターに向き合った。
というか今までの俺達のやり取りの間も全く動かなかったんだが。
……え? 大丈夫だよな?




