26、加速する勘違い
「やっと戻ってきたね」
「戻ってきたな」
戻ってきちまったなちくしょう。
俺は今ギルドの扉の前に居る。
あああぁぁ、入りたくねえぇぇ。
「何してるのリヒト? 行くよ?」
そう言ってカコは扉を開けた。
……こうなったら覚悟を決めるしかねぇ。
俺は意を決して扉をくぐる、そこには前と変わらず喧騒が有った。
ただカコは気づかなかったようだが俺の強化された耳には、カコが入った瞬間の一瞬、会話が途切れたのを捉えた。
さて、どんな風になっているのか。
「彼女が噂の……」
「「殲光姫」だ……」
「おい、止めろ。聞かれたらどうする」
「あぁ、なんの慈悲もなくあのおみ足で踏まれたいなぁ」
「ゴミを見るような目で罵られたい」
……やっぱりこうなっているのか。あとまた変態どもが居るぞ。
「?」
さすがに噂話や前屈みになり荒い息をしながらこちらを見てくればカコも気づくか。怪訝そうな顔をしている。
あと変態ども、自重しろ。
「どのようなご用件でしょうか?」
俺達の出番が来たらしい。ちなみに受付はあのエルフのお姉さんだ。
「クエストの報告です。クエスト名は「ゴブリンの討伐」、依頼主は村長さんです」
「かしこまりました。では、ギルドカードの提示をお願いします」
そう言って取り出したのは手のひらに収まるていどの水晶玉おそらくギルドカードを読み取るための魔道具だろう。
カコが差し出したギルドカードに水晶をかざした。
どうやら思った通りの様だ。
「えーと、はい。ちゃんとゴブリンを6体討伐されていますね。あとはゴブリンキングですね——ゴブリンキング!?」
受付嬢さんは大声を上げる。
……まあ、確かにゴブリンキングってB+だったもんな。
鑑定先輩の説明文にもベテラン冒険者がパーティー組んでやっと勝てるとか何とか書かれてたし。
しかも、大声を上げたことにより当然注目が集まる。
すると何が起こるかというと、
「う、嘘だろ?」
「たった一人でゴブリンキングを?」
「噂は本当だったんだ……」
「ゴブリンキングは光で焼かれたのか……良いなぁ」
「その光で焼かれアッッヅゥァァアアア!」
噂の事もあってどんどん話が加速していく。そしてまたこの世から変態を一人消せたな。
「ね、ねぇリヒト。殲光姫ってなに?」
ですよねー。
「実は……と言うわけなんだ」
「……はぁ」
カコさんため息を付かないで下さい、心に来るものがあります。
あれ? それよりも
「怒らないのか?」
「何時ものことだもん」
お、おう、そうですか
「それに、あの時はわたしを助けようとしてくれたしね。だから怒ってないよ」
……やべぇカコさんが良い人過ぎて心が痛い。
そんなことを話しているといつの間にか何処かに行っていた受付嬢さんが戻ってきた。
まあ、予想はつくが。
「ギルドマスターがお呼びです。係の者に案内をさせますのでその者に付いて行ってください」
よし、行こうか。準備はとっくに出来ている。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
そんな感じで今に戻る。
それにしても、わりと長い回想だったのに二人ともあれから一言も喋ってない。
今すぐにこの場から逃げたい。胃に穴が空きそうだ。
「まぁ、やってしまったものはもう仕方ない」
おっと、先に動いたのはギルドマスターだ。
しかもこの感じなら、こちらに追い風が吹いてるか?
「すみません」
「謝らなくて良い。そもそも先に絡んだのは相手からだと証言が有るからな」
勝った! この流れなら勝った! 今回のいざこざ完!
「その代わり、いくつかの条件を飲んでもらう」
……したかったなぁ。




