25、一件落着(何もないとは言ってない)
「……」
「……」
カコとギルドマスターはお互いに一言も喋らず、会議室には重苦しい空気が漂っている。
「……俺は出来る限り妬まれないように目立つなって言ったよな?」
「……はい」
「……はぁ」
さて、何故こんなことになったのか説明する必要があるな。
それは町に帰ってきてからのことだ。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
あれからは何事もなく普通に報告し、普通に馬車に乗り、普通に町に着いた。
……まあ、もう手遅れだと思うがな。
「それじゃあギルドに報告に行こっか」
「そうだな」
それにしても何だろう。
何と言うか視線を感じるな、それに何かヒソヒソ声が聞こえる。
……何を言っているんだ? 嫌な予感しかないが。
俺は耳に意識を集中させる。
「なぁ、あれって」
「ああ、「殲光姫」だよな」
「何でも自分に剣を向けた相手には一切容赦せず、泣き叫んで許しを乞うまで追いかけ続けるらしい」
……リヒト球の時の事か?
もしかして、またやっちまったか?
しかも今度はカコに迷惑を掛けちまった。
「あれ、どうしたの?」
俺が一人冷や汗をかいているとカコが訝しんで話してきた。
とりあえずばれる前に謝るか?
まあ、許してもらえるかどうかは置いといていつかばれるなら謝っておくべきだな。
「あの、さあ、実はな」
「なに?」
「この前の」
「あっ、リヒト。あの人たちって」
カコが指差している方向を見るとあの貴族と盗賊達がいた。
ただ一つ違うところは何かに怯えるように辺りを見渡していることだろう。
……そういえばあいつらの事すっかり忘れてたな。
というか良く帰ってこられたなあいつら。
「どうするんだ?」
「んー、とりあえず放置でいいと思うよ。あの様子だと悪さはしないと思うし」
まぁ、それについては同意見だな。
そんなことを話していると不意にあいつらと目が合う。
とたんにその目がみるみるうちに見開かれていく。
……気づかれたか、さて、どうなるか。
「ひぃ! 許してくれ!」
貴族は腰を抜かしその場に座り込む、そして周囲から集まる視線。
……あれ?
「え、あの」
「お願いだ、もう許してくれ! あの時のことは謝るから殺さないでくれ!」
カコの言葉に耳を貸さず謝り続ける貴族達、そしてそれを呆然と眺めるカコ。
……何だこの空間。
「と、とりあえず頭を」
カコが手を伸ばして頭を上げさせようとする。
しかし、それは逆効果だったようで貴族の顔が絶望に染まって行く。
「うわぁぁぁあああ!」
悲鳴を上げながら貴族達は散り散りに逃げていく。
後に残ったのは手を虚空に残したまま固まるカコだけだった。
「……ねえ、リヒト」
「……何だ?」
「一体何だったんだろう? 別にわたしは何もするつもりはなかったのに」
「……さあな」
言えねぇ! 俺のせいでカコに物騒な通り名がついてるなんて!
「と、とりあえずギルドに行こうぜ」
「うーん……気になるけど、もう行っちゃたしね。行こっか」
そうしてカコはギルドに向けて歩みを進め、俺はそれについていく。
……行きたくねぇ、ギルドに行ったら百パーセントばれるだろ。
今の俺の気分は、さながら断頭台に向かう囚人だ。
俺は重くゆっくり、しかし確実にギルドに歩みを進めていった。




