三章十二話目
色々と努力が足りないな、と思う毎日です。
作者自身もレインのようにぐるぐる悩んでいます。
教皇様の話の方は、現在三章を執筆中です。
今回は長くなりそうなので、書き終えるまでにずいぶんとかかりそうな気配です。
読んでくれている方、申し訳ありません。
何と声をかけていいのかわからなくなる。
――僕はライ様のこと何一つわかっていなかったんだ。
そう考えると、無性に悲しい気持ちになる。
落ち込むレインを前に、ライは肩をすくめる。
「まあ、あの時はお前も忙しそうで、まともに話をする機会もなかったしなあ。真面目なお前に話しても、きっと反対されることはわかってたしな」
ライは庭に倒れている男の一人を助け起こす。
アンリとレインを交互に見比べる。
「空船を手に入れるために、俺が空賊になると言ったら、当時のお前は絶対に反対していただろう?」
「それは」
ライの問いに、レインはとっさに答えられなかった。
この国の一般的な考え方としては、空を行き交う商人の船を襲う空賊は、悪とされている。良識を持った者なら、空賊になると言われて、反対するのが普通だった。
レインの代わりに、すぐそばにいるアンリが答える。
「そりゃあ、普通は反対するよ。北方群島のアルバート・ガウェイン辺境伯の息子であるライ・ガウェインが、あろうことか空賊を目指すなんて言われたらねえ」
赤ら顔でけらけらと笑う。
開けっぴろげなアンリの物言いに、ライはわずかに笑う。
「なんだ、俺のことばれてたんだ。あんたはラスティエ教国の回し者で、俺たちの敵なのに、憎めないな。どうりで頭領が気に入るはずだ」
「それは、どうも」
ライとアンリは笑っている。
レインはその場に一人取り残された疎外感を感じ、ますます落ち込む。
――僕は真面目すぎるのかなあ。もしライ様が真剣に空賊を目指しているのなら、アンリさんみたいに笑って送り出してあげるのが普通なのかなあ。
青い目を伏せて、真剣に悩む。
ライはうめく男たちを順番に助け起こしている。
全員を助け起こしたライは、アンリに向き直る。
「あいつらが世話をかけて、悪かったな。この借りはいつか返すから、今回は勘弁して欲しい」
ライはアンリに頭を下げる。
「別にいいよ~。またお酒を飲みかわしたいな、と頭領さんによろしく伝えといて」
アンリは手をひらひらと振る。
次いでライはレインに向き直る。
「レイン、お前にも迷惑をかけたな。俺が空賊にいると知って、ずいぶんと驚いただろう?」
赤紫の瞳を細め、困ったように笑う。
「え? あ、はい」
レインも答えに困ってしまう。
「そこで相談だが、どうかこのことは親父やお袋には黙っておいてくれないか? まあ、そこのアンリさんが俺のことを知ってるってことは、もしかしたら親父やお袋にもとっくにばれているかもしれないけどさ」
ライの小声の耳打ちに、赤ら顔のアンリが言い添える。
「俺は教皇直属の諜報員だから、このことはラスティエ教国のみんなが知ってるわけじゃないと思うよ~」
アンリはけらけらと笑い続けている。
「そうか。それはよかった」
ライは見るからに安心した顔になる。
一方のレインは釈然としない顔になる。
――前も思ったけど、そんな重要機密をまったく関係ない僕にべらべらとしゃべって大丈夫なのかな? いつかアンリさん、首になるんじゃないのか?
アンリのことながら、真剣にレインが心配する。
「っと、いつまでもこんなところで世間話をしている暇はないよな。じゃあな、レイン。元気でな。アンリさんも、次に会う時はお手柔らかに頼みますよ?」
「さあ、どうしようかな~」
ライは男たちを助け起こし、門の外へ出ていく。
頼りない足取りの男たちは、振り返りアンリに罵声を浴びせる。
「てめえ、覚えてろよ」
「次回はぼこぼこにしてやるからな」
「楽しみにしておけ」
男たちを取りまとめるライは、いかにも手慣れた様子だった。
「はいはい、それはまた今度にしておいてくださいね」
空賊たちの姿が門の向こうに消え、よく手入れされた木々の生い茂ったユキエばあさんの庭に、レインとアンリの二人だけが取り残される。
そろって顔を見合わせる。
「いや~、にぎやかな人たちだったねえ」
「そうですね」
「レイン君も、昔の友人に会えてよかったねえ」
「ありがとうございます。これもアンリさんのおかげです」
レインはまったく感慨のこもらない声で答える。
元はと言えば、自分が首を突っ込んだせいなのだが、アンリに会ってからロクな目に会っていないことを思い出す。




