カミさんのコンプレックス
カミさんが、颯人の家の一角に住み始めて間もない頃、颯人が得意先で良いお肉をもらったからと、理人と私は颯人の家にお邪魔することになったことがあった。
カミさんが不穏な顔で尋ねる。
「何か買っておいた方がいいですか?」
「そうだなぁ、サラダとフルーツくらい欲しいかな、理人と2人で早く上がって買い物して来てくれる?」
理人とカミさんは渋い顔をする。
「金持ちの食べるもんなんてわかんないよ。」
カミさんがぼやく。
「オレ、ホームパーティ慣れてるから、ハイクラスのホームパーティー教えてやるよ。」
理人は、マウントを取る。
理人はパーティー好きで、センスの良い料理をいつも振る舞っていた。
仕事を終え、私は、颯人と共に颯人の家にお邪魔した。
まずはシャンパンとアンティパストを楽しむ。
洋梨のサラダ、シャンピニオンスープ、そしてメインのステーキ。
理人のセンスが光る。
カミさんは、配膳とキッチンの片付けに集中する。
「こっちに座ってゆっくりすれば?」
颯人が声をかけるが、カミさんは少し座っても落ち着かないと席を立つ。
理人が言う
「アイツ、マンゴーの切り方も知らなかった。」
暗に住む世界が違うことを示唆している。
颯人が言う。
「オレ、ガキの頃、友達の誕生日パーティーとか行った時、食べたことのない料理が並んでて、その上、フォークとナイフが置かれて、どうやって食べるんだって思ったことあったな。
でも、美味かったから、手掴みで食べたりして、品がないやつって思われてただろ?
うちは成り上がりだから、お袋がいつもご飯作ってて、誕生日といえば唐揚げとか、ハンバーグとか子供の好きな料理並べてたから、お前らとの住む世界の違いを感じてたな。
でも、お袋の料理は特別美味いわけじゃないけど、お前らが食べてるもんより、あったかいって思ってたな。」
カミさんは、颯人の子供の頃の思いと同じものを感じて、席を共にしないのだろうか。
そして颯人の言葉は、思い出話ではなく、カミさんを思っての言葉だったのだろうか?




