私、まだ生きてるんですけど!
颯人が熱狂的なファンに刺された。
颯人と結婚するのはこの私だと。
その執着が最悪の状況を招いた。
カミさんは、放心状態で手術室の前に立っていた。
「何なんだよ。」
理人も、動揺が抑えられず叫ぶ、私は嗚咽が止まらない。
手術が終わり、颯人は集中治療室に運ばれる。
手術室の前に立ち尽くしたままのカミさんを理人が引っ張って、集中治療室に移動させる。
放心状態のカミさんに変わり、理人が医師の説明を受けるため、席を外した。
戻ってきた理人は、カミさんに言う。
「声、掛けてやれよ。」
カミさんは全く反応しない。
じっと颯人を見つめている。
そして、心電図モニターが警報を響かせる。
カミさんがいきなり叫んだ。
「私、まだ生きてるんですけど。
一生幸せにするって言ったじゃん!」
警報がおさまった。
颯人が薄く目を開けて、微笑んだ。
(奇跡?)
そこに颯人の母が現れた。
「この子は、あんた残して死なないよ。
傷は深くないから、1週間で退院できるんだって。」
ポカンとするカミさんに颯人の母は言う。
「颯人が、あんたが今の颯人の母親とうまく付き合えるようになるまで、私のことは、内緒にしとくって言ったんだよ。
私のこと知ったら、あの女とうまくやれないだろ。」
カミさんはやっと、唐揚げ屋のおばちゃんが、颯人の実母であることに気づく。
「あの継母、どうして気に入らないかわかった気がする。」
颯人の無事を知った途端、いつものカミさんに戻っていた。
理人は、病院に向かう途中、颯人の母にも連絡をし、2人で、医師の説明を受けたらしい。
そもそも、颯人の傷が命に関わるものではないことを理人は知っていながら、カミさんの前で、深妙な態度を取っていた。
心電図モニターの警報音は、颯人が動いて外れかけただけであった。
颯人のそばには、最強の女2人が立っている。
颯人は、このクセの強い女2人に尽くすことを自分の幸せと思い込んで、これからも生きていくのだろう。
カミさんと結婚した以上、カミさんより1日でも長く生きないといけない。




