おまけ-颯人がカミさんを選んだわけ
カミさんと出会う前、颯人は、母と暮らすために2世帯住宅を購入した。
しかし、母は離婚の慰謝料でマンションを購入し、余生は学生のための唐揚げ屋を開き、颯人の元に身を寄せる気がなかった。
意地っぱりの母は、颯人の元で、元夫の嫁の気配を感じたくなかったからだ。
そんな母が、カミさんを颯人の会社に紹介した。
不器用なこの娘は、性格が故に、いろんなことにぶつかりながら、埋もれていきそうであったからである。
颯人もこの救いようのないこの娘を、うちの会社で引き受ける他ないと思った。
自分を頼らない母親の代わりに、手を貸せることはしようと思ったのだ。
捨て猫を預けられた程度の気持ちだった。
人の機嫌を伺う事のないこの娘は楽だった。
颯人の周りには昔から、颯人の機嫌を伺うものしかいない。
起業してから、全てを失えば、皆が自分から離れて行くことは、容易に想像できた。
心のつながりを持つことはない。
しかし、理人だけは、陰で自分を悪く言うことはない。
母の料理を喜んで食べる理人にだけ、信頼が置けていた。
颯人がたまに母の唐揚げ屋に行くと、店頭にリボンのかかった花の鉢がある。
普段、節約ばかりで、水筒を持参するあの娘が送っていた。
送った花の季節が終わる頃、また次の花を送る。
母への恩を大事にするあの娘に、気持ちを持てば、裏切らないものを感じたのが、きっかけだった。
カミさんは、結婚してからも唐揚げ屋を訪れていた。
「いつか、なんでこんな女と結婚したんだろって、正気に戻る気がするんだよね。」
と言い、唐揚げ屋乗っ取り作戦を母に話す。
捨てられたら、唐揚げ屋の2階をリフォームして住みつき、甘酒アイス屋を開くと。
母は、自分が颯人の母親であることは、話さなかった。
面白いからだ。
そして、カミさんのボヤキを颯人に話す。
母としては、颯人には、お金持ちのお嬢さんと結婚して欲しかった。
自分が、金持ちの世界で苦労したことと、颯人の会社が危機に瀕した時、助けになるからだ。
しかし、選んだのは、何も持たない娘、しかし、その雑草魂で、颯人に何が起こっても、たくましく颯人を支えられる娘に、諦めがついた。
颯人もカミさんに、母の正体を明かさない。
「幸せすぎて、夢の国にいるみたいだから、たまにここに来て、現実に戻らないと、夢が覚めた時、立ち直れない。」
と、カミさんが母には失礼な話しだが、母に言っていたから、その場所を奪ってはいけないと思った。
そして、もしカミさんが家を出ることがあれば、唐揚げ屋の2階に行くことがわかるから安心だった。
颯人は、母に話す。
「オレ、父さんが浮気したのって、今は少し理解できるな。
苦労して事業に成功して、母さんと贅沢を楽しみたいと思っても、母さんは、いつ何があるかわからないって、贅沢は敵だったじゃん?
そこかなって。」
「アンタも浮気するってことかい?」
「オレは無いけどね。
もっと、贅沢を楽しんで欲しいと思ってるよ。」
母は、店を訪れるカミさんに話す。
「成功した男の妻として、隣にいる時は、周りがうらやむような格好をすること、旦那と一緒に贅沢を楽しむことも、旦那のヤル気を上げれるもんだよ。」
カミさんの知らないところで、颯人の母は、カミさんを颯人の望む妻になるよう操っていた。
母の正体を知ったカミさんは、いつでも唐揚げ屋を乗っ取れると喜んだ。
最高の妻になる日は来るのだろうか。




