支えがあるこその自由
「これから、仕事、プライベートを含めて、どうされたいか教えていただけますか?」
インタビュアーは、質問の方向性を変えた。
「仕事は、これからもチャレンジをしていきたいと思ってる。
今までやってきたことも、現状維持では廃るから、時代のニーズに合わせて変わらなきゃいけない。
色々手を広げたぶん、従業員も増えて、飽きたからって辞めるわけにもいかないから、維持することの難しさは感じてるね。
仕事にワクワクして取り組める人間に、少しずつ任せて、オレは、新しいことにチャレンジを続けたい。」
「最悪の状況を考えることはありますか?」
「ずっと上手くいくとは考えてないよ。
ちょっとしたことで、傾く会社をたくさん見てきたから、最悪な状態に陥っても、最後まで悪あがきはするつもり、どうしようもなくなった時は、カミさんがコンビニで働いて養ってやるって言ってくれてるから。」
「コンビニのバイトだと、1月20万ほどの生活になると思いますが、贅沢をされてきた代表が大丈夫ですか?」
「そこは、カミさんが何とかしてくれるかな?
今でも、特売の卵買うためにオレを連れ出そうとするやつだし、カミさんにケーキとか買って帰ると怒るんだよ。
ありがたみがないって。
『ケーキを貰って嬉しいと思ったことはあるか』
って、オレはないんだよね。
カミさんにとっては、コンビニスイーツも贅沢だから横目で見て、たまに差し入れでもらうケーキに歓喜してたって、そういう幸せを知らないオレは可哀想だって言うんだよね。
好きなだけ、食べたいときに買えよって言うんだけどね、そんな贅沢はしたくないって。
だからオレも、全て失ったら、そこで、たまに食べるケーキの幸せを知るのかなって思ってるから、挑戦を続けられるのかもね。」
「全て失った時、家族も失う不安はありませんか?」
「カミさんは、どんな状況でも楽しめるやつだから、張り切って、一家の大黒柱になろうとすると思うんだよね。
オレの肩書きは気にしないかな。」
カミさんは、確かに、颯人の妻の座を得て、贅沢をするなど、あぐらをかくようなことはせず、堅実な生活を送っている。
家事などを完璧に行う良妻ではないが、颯人にとって、心強い支えとなっているのだろうか。




