きっかけ
「理人、昨日はありがとう。」
出社した颯人が、カミさんと仲直りできたお礼を言う。
「今更だけど、何で、あいつなの?」
「真っ直ぐだからね。」
「それは認めるけど、アラの方が目立つ。」
「まぁ、カミさんは知らないけど、ちょっとした知り合いから、カミさんが面接に行くからよろしくって言われたんだよ。
その人から、そう言うこと言われたことなかったから、気になったのもあるかな。」
「でも、あの面接だぞ。」
「カミさんを勧めた人もクセもんだから、織り込み済み。」
それがどう、結婚に至ったのかは、理人にもわからない。
理人は、カミさんにも聞く。
「颯人のこと、最初から狙ってたの?」
「そんなことないよ。
私の好きな人が、この会社面白そうって、あの人の雑誌の記事見せてきたの。
それで、面接に来て、働いて、すごい人だなって思って。
でも、住む世界が違うから、好きと言うより尊敬してただけ、あの家で暮らし始めて、少し期待したけど、半年も何もなかったから、女として見てないんだと思ってたところ、手を出されたかな。
私としては、芸能人を好きになったような感じだったのが、現実になっちゃった感じで、まだ、実感ないんだよね。」
「子供がいるのに?」
「そう、だからいつ夢が覚めても幸せだったからいいかな。
捨てられたら、知り合いの唐揚げ屋乗っ取るつもり。」
(コイツを紹介したのって、颯人の母ちゃんじゃん。コイツ、唐揚げ屋の正体知らないんだ。)
理人は、カミさんが知らない事実を嬉しそうに私に話し、自分が、カミさんを颯人好みに仕上げたと言う。
理人は、女性社員を見ては点数をつけ、カミさんに、その理由を話していた。
理人は、服のセンス、歩く姿勢や所作に厳しい意見を述べる。
パーティーでの立ち居振る舞いも、理人の指導のもと、カミさんは、恥ずかしくない態度を取れるようになっていた。
颯人が、カミさんを理人の下につけたのは、それが狙いだったのだろうか。
カミさんと理人は、小競り合いこそするが、2人で服を見に出かけることもあり、カミさんは、何かあれば、颯人ではなく、理人を頼っているように、私には見えた。
そして、カミさんが、颯人の前で、緊張しているように見えていたのは、恋心があったからなのだろうか。




