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姉が悪役令嬢にされたので、商人の妹が嘘を暴きます  作者: ゆきだるま
第一章

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流れを歪める者達

Side:第二王子派


ある貴族の屋敷の一室。重厚な扉が閉ざされた会議室に、低い声がいくつも重なっていた。

集まっているのは十数名。いずれも王都の中枢に食い込む貴族たちだ。


「……しかし、学園での一件は上々でしたな」


「ヴァルクス家とローデリア家を同時に揺らせたのは大きい」


「例の男爵令嬢も、よく働いた」


くぐもった笑いが、いくつか重なる。


「公爵子息があそこまで単純とは思わなかったが……結果としては好都合だ。兄と違い単純で助かったな」


「学園側の証言も、滞りなく整いましたしな」


その言葉に、何人かが意味ありげに視線を交わした。


「ローデリアが沈黙を選ばざるを得ない形を作れたのは大きい」


「……あれで、第一王子派の要石は一つ外れた」


短く、だが確信に満ちた声だった。


そして、話は自然に次へと移る。


「とはいえ、それだけでは足りぬ」


ざわついていた空気が、再び引き締まる。

長机の中央の男が、静かに口を開いた。目的達成の為なら、手段を選ばない冷酷さが滲む話し方だった。


「流れをこちらに引き寄せるには、もう一段踏み込む必要がある」


「ローデリアが動かぬ今、第一王子派は明らかに鈍っている」


「だが、議会も、陛下もいる。陛下は第一王子を王位継承者にするおつもりだ。あまり表立っても動けまい」


「では、どう動くおつもりで?」


一拍の間。そして、静かに答えが落ちた。


「次は流通を押さえる」


「……穀物、塩、このあたりを我らの領地へ優遇して運ばせる」


「しかし、それは、議会の承認もなく進めてよろしいのでしょうか」


当然の疑問だった。

いくら第一王子派が揺らいだとはいえ、レオンの父、宰相の地位は健在で、国王からの信頼も厚い。

露骨にやれば、必ず反発が出る。

だが、返ってきたのは冷ややかな笑みだった。


「表向きにやる必要はない」


「配分そのものをいじるのではない。流れ方を変えるだけだ」


「……流れ方、ですか」


「ああ。輸送の順序、優先契約、検査の頻度——理由はいくらでもつけられる」


その場の貴族たちが静かに息を呑む。

食料の流れが滞れば、民の生活に影響が出る。そして、領民たちから不満が出る。領地経営が傾けば、更に第一王子派の勢いは落とせる。


「結果として、どうなるかは明白だ」


「第一王子派の領地へは…」


「遅れ、滞り、そして価格が上がる」


「そういうことだ」


淡々とした声だった。自分たちの計画に、民を巻き込むことに何の躊躇いもない。


「不足はしていない。だが、届くのが遅い。手に入るが高い。それだけで、領地は確実に疲弊する」


露骨な違法ではない。だが、確実に効く。そして、異変に気付いたときには、もう自分たちの計画は先に進んでいる。

沈黙ののち、ひとりが口を開いた。


「……商会が従うとお思いで?」


「従わせる。まずは、アルヴェスト商会だ」


「国の流通を担う最大手。あそこが動けば、流れは変わる」


「しかし、あの商会は中立を掲げているはずでは」


「中立、か」


鼻で笑うような気配。国の中枢を担う人間にとって、たかが商会など、どうにでもできると、何の疑問もなく思っている。


「輸送許可の更新、関所の通行、検査の強化、いくらでも正当な理由は用意できる」


「なに、言う通りにすれば、アルヴェスト商会にもそれ相応の見返りをくれてやろう。我らに従い、優先を得るか、それとも、滞りの中で商機を失うか」


部屋の空気が、ゆっくりと傾いていく。反対の声は、もう上がらなかった。


「……まずは条件を提示する。第二王子殿下を支持する我らの領地への優先供給、並びに価格調整」


「第一王子派の領地へは?」


「結果として、高くなるだろうな」


と、淡々と告げた。意図された歪み。

だが、表向きは自然な変動。それが、この策の本質だった。


「では」


誰かが低く言う。


「アルヴェスト商会に、圧をかけ始めますか」


「ああ。まずは、そこからだ」


その一言で、方針は決まった。


誰もが理解している。

これは始まりに過ぎないと。


静かに、しかし確実に。

王国の流れは、ねじ曲げられようとしていた。

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