第二十三話 【意外な決着】
「そこにおるのは長十郎ではないか!?一体どうしたのだ?」
いよいよ事が始まろうかという刹那、角を曲がって姿を現した四人の若侍は、右近たちを認めると大声を上げる。
長十郎の耳にも声は届いていたが、返事はしない。
長十郎は決して武兵衛から目を離さず、戦闘態勢を維持したままだ。
ただならぬ気配を感じたのだろう、四人の侍はわらわらと長十郎の許に駆け寄る。
「チッ」
こうなってしまっては勝負にならない。
状況の不利を悟った武兵衛は、舌打ちをすると足早に去って行った。
長十郎は反射的に武兵衛を追いかけようとしたが、右近がそれを厳しく制する。
「長十郎!今日の目当てを忘れたか?」
ハッと我に返った長十郎は、動きを止め、右近に謝罪する。
「申し訳ございません。頭に血が上っていたようです。」
「良い。先を急ぐぞ。」
長十郎は表情を緩めると、駆け寄った者たちに対して初めて返事する。
「貴公らのおかげで助かった。心配をかけて済まぬ。大した事ではないのだ。」
助かったという言葉とは裏腹に、長十郎は如何にも残念そうな様子である。
これに対し四人の内、一番長身の若侍が心配そうに尋ねる。
「向こうは太刀を抜かんとしている様に見えたが?」
「埒も無き事で行き違いがあってな・・・済まぬが急ぎの用向きがある故、後日改めて話を致す。」
「相分かった。気を付けて参られよ。」
「かたじけない。」
長十郎は右近に向き直ったところで、短く話しかける。
「急ぎましょう。」
まだ心配そうな表情の四人を残し、右近たちは越前松平家中屋敷の正門を目指して、再び歩みを進めていった。
次回は6月11日(金)20時に公開予定です。




