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第十二話 【武士の覚悟】
妻の勧めで床に就いたものの、右近は目が冴え渡り、中々寝付く様にはならない。
風も無く、穏やかな夜であった。
耳をすませば、遠くに人が立ち働く物音が聞こえる。
恐らく妻が自分のために支度をしている音であろう。
暫しの安息を得た右近は、激動の一日を改めて振り返る。
『江戸に行くなど、思うた事もなかった・・・』
運命の地、江戸へ。
越前松平家の未来はそこで決まる。
そもそも嗣子を決めていなかったのは越前松平家であり、非は専らこちらにある。
だから幕府と交渉すると言っても、それは嘆願という形を取らざるを得ない。
もし幕府への嘆願が不首尾に終われば、越前福井藩は改易となり、取り潰される。
『その時は生きて国元には帰れぬ。』
成功か、然らずんば死か。
図らずも運命の当事者となった右近もまた、武士としての覚悟を問われようとしていた。
ようやく長い一日が終わりました。
福井編は今回で終了です。
次回からは江戸編、江戸城本丸の中奥から物語が始まります。
3月26日(金)20時に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




