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雪と花火  作者: およよ
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10章

 僕は学校にいた。

 当然の如く学校にいた。

 平日だから学校にいた。

 学生だから学校にいた。

 花火と二人約束通り登校して、そして学校にいた。

 だが、既に花火は学校には居なかった。

 僕ももうすぐしたら花火のもとへ向かうつもりだ。

 花火のいる、病院へ。

 僕はこれから少しだけ情報収集をすることにした。

 やはり何かしら行動はすべきだと思う。

 花火は今にも死にそうな状況なのだから。

「しかし、どうしたもんかな。」

 方向性としては一つしかない。とりあえず花火が忘れているであろう日の記憶を呼び覚ます。そのきっかけとなり得る情報を探すのだ。

 今日は、この後病院に行く予定なので大したことは解らないだろうが、まあ毎日続けていれば何かしら有益な情報も見えてくるだろう。

 そう思って僕が向かったのは文芸部の部室だった。

 文芸部とはすなわち僕の所属している部活である。

 何故この部活を選んだかについての理由は簡単だ。

 初めから赤の他人に尋ねまわるほどのコミュ力を持たない僕は、知り合いから攻めることにしたのだ。

 僕は部室の前まで来るとその扉を開く。

 そこは、一面本棚に囲まれた部屋だった。

 そこは、一面本に囲まれた部屋だった。

 その中心で、一人の女性が本を読んでいた。

 彼女は僕に気づいたようで本から視線を上げた。

「ふむ、これは珍しい人が来たものだ。久しぶりだね、雪人君。」

「はい。久しぶりです。文月(ふみつき)先輩。」

 文月綴(ふみつきつづり)、私立豊岡高校の三年生にして我らが文芸部の部長である。

 すらりとした黒髪に整った顔立ち、そしてどこか冷たさを感じさせる雰囲気の彼女はしかしその立ち寄りがたい雰囲気とは違い、顔を合わせればこうして話しかけてくれる気さくなひとだった。

「しかし君のことだ、文芸活動に勤しみに来たという訳でもないのだろう。」

「まあ、はいそうですね。」

「ふむ、だろうね。となるといつもの如くここで読書かい?それともここにある本達がお目当てかな。」

「いえ、そういうわけでもないんですよ。今回は。」

「そうかい。だがそうなると君がこの場所に来る理由など、もはや私には皆目見当もつかないのだが、まさか私に会いに来てくれたという訳でもあるまい。」

 そんなことはないだろう。僕はこの先輩のことが結構好きだし、なんなら先輩とお話ししたくてこの部室に寄ることも二度や三度じゃない。

 今回だっていつもと根本的な理由は違えどこの人に会うためにここに来てみたわけだし。

 そう言うと先輩は本当に驚いた顔をした。

「君がね。しかしということは、私に何か聞きたいことでもあるのかい?」

 察しの良い先輩である。

 まあ他にも久しぶりにこの先輩に会いたかったという理由もなくはないし、ゆっくり話していたいというのも純然たる僕の本音なのだが、しかし幼馴染を病院に待たせている身としては急ぐ必要はないにしても、あまりゆっくりゆったり話しているわけにもいかないだろう。

 僕は早速本題、情報収集を行うことにした。 

 つまりは花火のことについて、そして花火が屋上から落ちた日についてである。 

「花火?ああ、君の幼馴染君のことか噂でちらりとだけ聞いたよ。まだ目を覚ましていないんだってね。だけど申し訳ない私が彼女について知っていることなどほとんどないよ。それも君が知らない情報となれば、それこそ皆無だ。

 それにその幼馴染君が飛び降りた日となると十中八九、私は学校には居なかったろうからね。そちらも残念ながら有益な情報は持っていないな。」

 力になれなくてすまないね。と彼女はそう締めくくった。

 まあそんなものだろう。知らなくて当然だ。

 ありがとうございました。今日の所はこれで失礼します。また来ます。とそう言って部室から出ようとした僕は、病院へ向かおうとした僕は、ふと湧き出た疑問を文月先輩にぶつけてみることにした。

「文月先輩。」

「ん?なんだい。」

「秋水先輩ってますか?」

「秋水とは生徒会長の秋水落葉のことかい?」

「はい。正にその人のことです。」

 そういえば当然同級生なんだよなと、そう思っての質問だった。

 特に他意もないし意味もない質問だった。

「秋水落葉か。クラスも違うしあまり詳しくは知らないが。」

 そうですか。とそう言おうとしたが、文月さんの言葉はまだ続いていた。

「しかし、そういえば同学年の女生徒達が騒いでいた気がするな。何でも一つ年下の女生徒と付き合っているとかなんとか。同じく生徒会の役員だった気がするが、なんと言ったかな。」

 そう言って少し頭をひねっていた彼女は、しかし思い出したようだ。

 そして口にした。その女生徒の名前を。


「そうだ、確か名前は春日井桜だったな。」


 ん?春日井さんと秋水先輩が付き合っている?

 そんな馬鹿なことはないだろう。

 だってそうだろ?

 春日井さんは花火の大親友で、

秋水先輩は花火の想い人なのだから、

だから二人が付き合っているなんてそんなことあるわけが・・・。

 そういえば昨日、春日井さんはなんで僕にメールをしてきたんだっけ。

 そういえば昨日、僕は春日井さんになんて返したんだっけ。

 そういえば今日、春日井さんは何をするっていってたんだっけ。

 そこまで考えた僕は、走り出す。

 花火の下へ向かうために。



 初登場の文月パイセンです。

 物語での重要性は置いておいて、多分雪人と二番目に仲のいい人です。

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