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HOLY WORLD  作者: (仮)
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魔女狩りのメシア⑥

震田との通話を切った川崎は、飛騨に振り返る。

川崎の顔色からただならぬ気配を感じた飛騨は、椅子から立ち上がり、川崎の元までやって来た。

「震田は何と言っていたんだ?」

飛騨は青ざめた川崎の顔を覗き込む。

「飛騨中将……」

鳴り止まぬ火災警報器と震田の言葉が、川崎の鼓動を揺さぶる。

一瞬の迷いの後、川崎は全ての情報を簡潔にまとめ、努めて冷静に飛騨に伝えた。

「基地内各所で同時に火災が発生しているようです。

 テロリストが入り込んでいる可能性があります。

 中将は早く避難を!」

そう言いながら川崎は、胸ポケットから部屋のカードキーを取り出した。

「……テロリストだと?」

不穏な単語に飛騨の顔が強ばる。

まさか、中国軍が自分を狙っているのか?

何故ここが?

何故、自分が陸軍の者だとバレたのか?

瑞岐たちの作戦を知る飛騨は、そう考えずにはいられない。

「飛騨中将!さあ、早く避難を!」

立ち止まっている飛騨に声をかけながら、川崎はドアノブに手をかける。

飛騨も考えるのをやめ、川崎に続く。

「……わかった」

二人はドアから出ると、すぐ近くにあった非常口へと向かう。

万が一に備え、飛騨の寝泊まりする部屋は、事務棟三階の非常階段近くに設置されていた。

川崎は重く厚い耐熱性の非常口ドアを開ける。

「……熱いっ……?!」

非常口を開け、非常階段を目にした川崎が思わず立ち止まる。

階下から強い熱気と煙が彼女を襲ったのだ。

見ると、非常階段の一階から二階部分にかけて、手すりや階段部分のほぼ全てが炎に包まれていた。

鉄でできた非常階段が、燃えるものなど置く筈のないここが、何故火事になっているのか。

「灯油を撒かれたか」

立ち尽くす川崎の横に来た飛騨が、炎の上がり方、そして灯油特有の匂いに気付く。

飛騨は非常階段の踊り場から基地内を見渡す。

そこかしこで上がる黒煙と、サイレン、非常ベルの不協和音。

あまりにも火が回るのが早い。

通常の火災であれば、ここまで大事になる前にスプリンクラーなどの消火システムや隊員の消火活動で消し止められるだろう。

恐らく、この階段のように灯油を撒かれたか。

事故や過失では有り得ぬ火災の様子に、飛騨の中の疑惑が確信に変わる。

間違い無く、この陸軍基地がテロリストの標的となったことを。

「仕方ない。通常の階段から下に降りよう」

「は、はいっ!」

飛騨と川崎は非常口の扉を閉め、普段使っている階段を目指す。

階段まではそう遠くない。

飛騨と川崎は慎重に歩を進める。

徐々に煙が下の階から昇ってきて、息苦しさが増す。

身を屈めながら煙を避けてはいるが、飛騨は少し咳込む。

「中将、大丈夫ですか?」

川崎が心配そうに飛騨の肩にそっと手を触れる。

「ああ、大丈夫だ。気にするな」

小さく笑いながら飛騨は川崎の介助を手で制し断る。

「なんてことなの。

 中将の容体がまだ不安定なこんな時に……。

 災害救助で人手も足りないのに……!」

「こんな時だからかもしれん」

「え……?」

「このほとんど武装のない練馬陸軍基地を狙うのは、この俺がテロリストの狙いだからだろう」

飛騨と川崎の脳裏に浮かぶのは、連日の災害ニュース。

そしてそれが日本軍の所有するウィザードが原因だとする論説の多さ。

そこから辿って、何らかの方法で飛騨の存在を知り、この練馬基地を襲ったのか。

この一連の出来事は、敵対している中国軍による破壊工作の一環だろうか。

「……俺は結局、何を守れたんだろうな」

つい、弱気が口を突いて出る。

この国を護ると息巻いていた自分が、自身のその力の副作用により無関係な者に災厄を与えた。

そして今、飛騨の力を疎ましく思った人間が彼一人を狙う為に、彼の最も身近な人間たちが危機に晒されているのだとしたら。

飛騨の胸の内に吹き荒れる嵐は、暗雲が晴れることがない。


飛騨の能力の特性上、航空機やミサイルなど、飛騨自身が察知できた外からの攻撃は神風で吹き飛ばすことができる。

しかし、今回のように内に入られ破壊されたら神風は為す術がない。


「そんな、中将は……」

励まそうとする川崎の言葉を遮り、飛騨は少々無理やりに笑顔を見せる。

「すまん、こんな時に弱音を吐いている場合ではないな。

 俺たちも早く脱出して消火活動を手伝おう」

飛騨の言葉に、川崎は安堵すると共に飛騨の体調面の心配が蘇る。

またこの人は万全ではない体調を押して、公の為に身を粉にする気なのか。

「飛騨中将……。

 消火活動は他の者に任せ、ご自身の体調の回復を優先させてください」

手術終わったなう

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