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HOLY WORLD  作者: (仮)
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魔女狩りのメシア⑤

震田と午雷が事務棟二階にある医務室へと向かう道中、屋外で慌ただしく走る陸軍の者たちに気付いた。

何事かと窓の近くまで寄ると、一般車両駐車場のある辺りから細い煙が上がっているのが見える。

「なんだ、ボヤか?」

「……っぽいな。あそこって駐車場だろ?

 車に引火したらヤバいんじゃね?」

などと話しているうちに、基地内に火事を報せるベルが鳴り出した。

発火場所はやはり一般車両の駐車場だという旨のアナウンスがあり、駐車場付近に居る者の避難を促す。

事務棟から駐車場までは直線距離で二百メートルはあるだろうか。

その間にはヘリポートや航空機用滑走路もある。

この事務棟への延焼はまず無いだろう、と震田は考えた。

「流石にこの事務棟まで火は届かないよな?」

念の為に相棒にも意見を求める。

午雷は頷く。

「医官を飛騨の所へ連れて行ったら、俺たちも消火活動に行こう」

「そうだな」

この場所の安全と、大事でないことを確認し合うと、二人は踵を返して再び医務室へ向かおうとした。

その時。

外からふいに、パンッという破裂音が響いた。

思わず二人は振り返る。

「おいおい、マジかよ……」

駐車場から立ち上る煙は、あっという間に黒く大きくなり、事態の深刻さが増したのは誰の目にも明らかであった。

先程の破裂音は恐らく、火事が自動車のガソリンタンクが高温で溶け、引火爆発したものだろうか。

ふいに午雷が窓まで駆け寄り大きく開けると、階下を走る者に声をかける。

「おい!駐車場の火事、大丈夫なのか?!」

声をかけられた若い軍人は消火器を両手に携え、防火用のスーツを纏っていた。

「すみません、俺じゃ詳細はわからなくて……。

 最初はただの小火だって聞いたんですけど……」

そう答えると若い軍人は、一緒に居た仲間に急かされ、再び現場へと走り出した。

「あーもー。災害救助でほとんど人が出払ってる時に、とんだ騒ぎだな!」

愚痴りながら震田は頭を掻く。

現在、練馬陸軍基地の実働部隊の殆どが災害救助の為に出払っている。

残っているのは内務官と、他国からの攻撃監視の任務にあたる者だ。

人手の少ないこの時期に基地内で火災とは。

「これは地元の消防車も呼ぶ騒ぎになるな……」

陸軍基地内での車両火災など、マスコミの恰好の餌食だろうと午雷はため息をつく。

「まあ、でも、人が少ないから車も少ないだろうし、他の車に延焼して大火事になるってことは……」

そう言いながら震田は火災現場の駐車場から、室内へと視線を移した。

この間、彼の目の端に信じられない光景が映り込んだ。

窓際に駆け寄った震田はぐるぐると基地内を見渡し、その光景を再び視界に捉える。

震田の様子を疑問に思った午雷もまた、彼の視線の先を見る。


駐車場で上がる激しい黒煙の他、基地内の複数個所から立ち上る狼煙のような細い煙。

いや、違う。

宿舎や車両基地、備品倉庫、あらゆるところから幾筋も立ち上るのは、火災らしき煙。

その内のひとつ、事務棟から一番近い建物である食料備蓄倉庫。

一階窓ガラスが外側から割られ、そこから立ち上る煙を見た時、震田と午雷の二人に、ある一つの最悪の可能性を想起させた。

思わずその言葉を飲み、顔を見合わせる。

火災警報器は鳴り止まぬことなく、むしろ次々と別の建物からも鳴り出し、幾重にも重なって基地内に鳴り響く。


二人の背筋に冷たい汗が流れる。

「……飛騨だ!」

突如、午雷が鋭く叫ぶ。

「飛騨を避難させよう!」

午雷の言葉と同時に、震田は自身のスマホを取り出し川崎の番号に電話をかける。

そして二人はもと来た道、飛騨の個室へと続く廊下を走り出す。

震田のスマホは数回の発信音の後、川崎の声を繋ぐ。

『も、もしもし、震田さん?』

電話越しの川崎の声が心なしか上擦っていた。

それもその筈、川崎側の電話口からも火災警報機のベルが鳴っているのが聞こえる。

警報音に川崎も動揺しているのだろう。

走りながら震田は川崎に手早く用件を伝える。

「川崎ちゃん!今すぐ飛騨を連れて逃げろ!

 なるべく基地から離れるんだ!!」

震田が電話している横で、午雷は廊下に備え付けられていた消火器を持ち出す。

万が一この事務棟にも火の手が及んでいた時の為である。

『震田さん、一体何が起こっているんですか?!』

焦る震田の声につられて、川崎の声も大きくなる。

「基地内で複数の火事が同時に起こってる。

 ……テロリスト……かもしれない」

そうであって欲しくない、という震田の願いが、『テロリスト』という重苦しい単語に迷いを含ませた。

バイクで事故って骨折したので夏休みが二か月ほど延長することになりました。えへへ。

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