058 帝江⑱
隼翔たちと八咫烏は二隻目のターゲットを捕捉し、徐々に近づいて行った。
敵軍の防衛を潜り抜け、やっと艦影が肉眼で見えて来た頃。
『高山少尉!』
「なんだ、春日」
国津神の航空管制士からの無線に隼翔は答える。
『複数の航空隊が少尉たちと八咫烏に向かって突っ込んで来ます!』
隼翔はレーダーに反応するエネミーの表示を見た。
ちらちらと赤く点滅するそれは、少なくとも三方向からこちらに向かって来る中隊規模の航空隊か。
『ハヤト!烏たちがウィザードの力だって気付いたんじゃないか?』
話を聞いていた瑞岐からも無線が入る。
「だろうな。それで優先的に潰しに来たか」
忙しなく無線が切り替わり、また別の人物に繋がった。
『成瀬大佐、高山少尉。参謀科、班目だ。
高山少尉といえど、多勢に無勢だ。
一旦国津神まで退いて立て直そう』
「チッ、そうだな」
目前に迫ったせっかくの標的を惜しみつつも、編隊は弧を描いて反転する。
『高山少尉!進行方向にも敵航空隊が!
空母「相模」の航空隊に追われながら向かって来ます!』
春日が叫ぶ。
「敵に尻向けながらこっちに来んのか?!
死にてえのかよ!」
戦闘機同士の空中格闘戦において、背中に着かれることは不利以外の何物でもない。
機関銃然りミサイル然り、戦闘機の攻撃は前方に向かってしか放てない。
つまり背後を取られるということは反撃の術なく、一方的に敵の攻撃にさらされることである。
現に相模の航空隊に多くの敵機が撃墜されていた。
運良く空母『相模』航空隊から逃れた者が八咫烏へ接近を試みるが、高山小隊によって撃墜される。
「なんなんだ、こいつらは!
オレらには目もくれずにカラスに特攻してきやがる!」
闇雲に機銃を撃ち続けながら、八咫烏めがけて真っ直ぐに飛んで来る。
隼翔たちの戦闘機など、まるで見えていないかのように。
それはとても訓練を受けた軍人の動きではない。
現代の戦闘機は機銃の弾数は数百程度しか積めない。
こんな風に無暗に撃ち続けていたら、敵陣の真っただ中で弾切れを起こす。
「いくらウィザードを見つけたからって、こんな戦い方するか……?!」
ヤケになって死に物狂いになるような戦況ではない。
おかしい。
何かがおかしい。
やがて機体を黄色にペイントした『相模』の航空隊が姿を現し、隼翔たちに合流する。
彼らも高山小隊と共に八咫烏が後方に退く手助けをしてくれた。
敵航空隊の包囲網を抜けると、彼らはまた敵陣へと飛び立って行った。




