057 帝江⑰
国津神を飛び立った八咫烏は途中、高山小隊と合流した。
隼翔の小隊に四方を守られ、八機の零式艦上戦闘機が大空に編隊を描く。
時折、砲弾やミサイルが飛んでくるが、隼翔の指示通りに八咫烏を操り避ける。
レーダーで捕捉できない八咫烏も、人の目には視える。
躊躇いつつも八咫烏を撃墜すべく近づこうとする敵戦闘機は、瞬時に隼翔たち小隊に屠られる。
本物の戦闘機でレーダーに映る隼翔たちと、映らない八咫烏が揃って飛ぶことで敵の攪乱に成功しているのだろうか。
飛び立ってから少しして、瑞岐は敵軍の攻撃に晒されている最前線を八咫烏越しに目にすることになる。
国津神たちのいる後方海域の被害はほとんど無いが、空母『相模』『駿府』を含む第一機動部隊の状況は芳しくなかった。
大破し航行不能になっている駆逐艦や、鉄の残骸となって海に浮かぶ航空機。
あちらこちらから上がる火災の煙で視界は悪かった。
『ハヤト!駿府が……』
艦隊の中でも一際大きな軍艦。空母『駿府』。
甲板の航空機が被弾して火事が起こっているようで、懸命に消火活動が行われている。
「やられたのは航空機だけだ。
駿府本体にゃ大した被害はねえはずだ。
……おら、よそ見してるとお前も痛ぇの食らうぞ」
動揺することなく、隼翔は前を見つめたまま答える。
『……うん……』
烏使い専用の特別室に一人ぼっちでいるせいだろうか。
いつもの任務中の瑞岐と違い、自身の心情を素直に態度に出してしまう。
『ああ、そうだな。悪かった。集中する』
気持ちを切り替えて上を向く。
隼翔と瑞岐の航空隊は、一隻だけ離れた所にいる中国軍駆逐艦に近付いていく。
駆逐艦は迫る航空機に対空砲を打つも、護衛の戦闘機隊に次々と砲を破壊される。
『爆撃機に変える』
瑞岐がそう言うと八咫烏たちは一度旋回し光に包まれる。
機銃を抱えた戦闘機から、腹に大きな爆弾を抱えた爆撃機へと変身した。
先端が尖った独特な形をした八咫烏の爆撃機は、爆弾倉から次々と爆弾を投下し駆逐艦を襲う。
海上に大きな水柱がいくつも上がり、視界を塞ぐ。
『うっ……』
「どうした?ミズキ!」
『一羽堕とされた。闇雲に撃ってる機銃に当たったみたいだ』
「チッ、流れ弾か」
先程の水柱で隠れた時に被弾したらしかった。
『でも、駆逐艦の機関部は破壊した。あの船はもう動けないはずだ。
このまま次の標的に向かいたい。ハヤトたちは大丈夫か?』
「ああん?誰に言ってんだ」
『今はお前だけじゃないんだ。小隊のみんなは……』
「大丈夫っすよ!」
「同じく!」
「まだまだ残弾、気力どちらも健在です!」
小隊の岩本、坂井、菅野が明るく答える。
「むしろ心配なのはてめーのカラスだ。
あんまり堕とされるとミズキもしんどいんだろ?」
『堕とされないようにするのがハヤトの仕事だろ。
……よし、じゃあ行こう』
瑞岐がいつもの減らず口を叩くようになったことを密かに安堵し、隼翔は航空管制士に通信を繋ぐ。
「春日!できるだけ守りが薄いとこ案内してくれ!」
『了解です、高山少尉!』




