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HOLY WORLD  作者: (仮)
58/93

056 帝江⑯

 戦艦『プリンセス・エリー』。

 司令室に鎮座する玉座の上で飲み干した紅茶のカップを付き人に回収させると、小さなお姫様はレガリアを手にする。


 艦内の軍人に標的の測距と側的を任せ、エリーは主砲の引き金に手をかける。

 プリンセス・エリーの主砲は砲弾の装填や砲塔、砲身の操作は半自動で行われる作りとなっている。

 艦内司令室でレーダーロックすると射撃準備が自動で行われ、エリーの握る引き金で発射される。

 大きさが大きさなので再装填に時間がかかり、その都度照準を合わせる必要があるのが厄介だが、エリーの能力を利用する為致し方ない。


 エリーは手元のレーダーでロックオンを確認すると、引き金を握る右手に魔力を込める。

 碧い硝子玉のような瞳が緑の光を湛え、小さな身体は淡く輝く。


「アジアの野蛮人共が、頭が高いのよ。

 世界の覇者たるプリンセス・エリーに跪きなさい!!」


 雷鳴のような轟音と共に、英国の戦艦から主砲が斉射される。

 砲身を離れた徹甲弾は宙でピンクにカラーリングされたドクロマークの弾丸に姿を変え、前面を航行していた中国海軍駆逐艦に襲いかかる。

 着弾した瞬間炸裂し、船体を吹き飛ばす。

 散った鉄片は周囲の艦艇にも被害を及ぼし、吹き飛ばされた駆逐艦の一番近くにいた艦も側部に深刻なダメージを受け、炎上している。


 惨状を目の当たりにした瑞岐は、思わずプリンセス・エリーに無線を繋げる。

 先程までの会話は一体何だったというのか。

『エリー王女!!』

「あら、ごめんなさいね。Crow Mancer。

 命中した艦は粉微塵になってしまったわ。

 エリーは手加減が苦手なの」

 悪びれた様子もなくエリーはさらりと言ってのける。

「でもこの強大な力を目にして、彼らは尻尾を巻いて逃げるかもしれないわ。

 あの艦は必要な犠牲だったのよ」

 主砲の再装填を待ちながら、エリーは横目でモニターを見る。

 日本軍の無人偵察機から送られてくる中国軍の動きをしばらく眺めて、やれやれとため息をつく。

「残念ね。Crow Mancer。

 彼らも戦いが好きみたい。

 引く気は無さそうよ」


 圧倒的な破壊力を見せつけられて、なおも前進してくる中国海軍。

 むしろその勢いは増し、前衛を務める第一機動部隊に被害が出始めた。

 瑞岐の元にも被害情報は届き、言いようのない緊張感と焦りが沸き上がる。

 哨戒任務でケチな海賊を追い払うのとは訳が違う。

 国と国との争いの大きさに。


『ミズキ!』


 国津神の指令室と瑞岐の元に、無線から聞き覚えのある声が響く。

「ハヤト……!」

 今朝の全体会議以来、顔を合わせてなかった友人の声に顔を上げる。

『敵攻撃機はあらかた片付けた!

 ミズキのカラスを出せ!

 オレたちが守る!』

 隼翔の小隊が相手取った、日本軍の艦隊を狙って放たれた攻撃隊は殲滅した。

 未だ敵空母から発艦する攻撃機はあるが、味方の航空隊が援護しきれると判断した。

『ミズキ!』

 隼翔は再び自分の名前を強く呼ぶ。

『成瀬大佐、班目だ。八咫烏の用意を頼む』

 国津神の司令室の班目参謀長からも通信が入り、瑞岐は決心して前方を見据えた。


 空母『国津神』の飛行甲板に、船倉からカラスが集い飛び立つ。

 海上の強い風に煽られてふらついたカラスたちも、零戦に姿を変えると風に負けず確かな足取りで空を舞う。

 八羽の八咫烏を空へ放ち、瑞岐は叫ぶ。


「ハヤト!

 僕の烏を護れ!!」

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