052 帝江⑫
日英の艦隊が日本を出港した後も、不規則な間隔でミサイルは日本本土に飛来する。
その一部映像を司令室で見ている瑞岐は、改めて現状の事の大きさに息をのむ。
飛騨や陸軍、残った海・空軍を信用していない訳ではないが、心配するなと言う方が無理だ。
家族は無事でいるだろうか。横須賀に残してきた皆は無事だろうか。
悪い方向に思考が傾きそうになり、瑞岐は頭を振ってそれらを払う。
今は、目の前の任務を。
それだけを考えなくては。
国津神の司令室でも班目たち参謀科が、絶えず艦隊司令部と作戦会議を続けている。
参謀科だけではない。
全ての搭乗員が忙しなく戦闘配置を急いでいた。
哨戒任務の時はギリギリまで瑞岐たちと無線で話している隼翔も、今回ばかりは違う。
国津神に乗り込むや否や、飛行甲板で航空隊や航空整備科と最終点検に余念がない。
そしてまた瑞岐の元に、司令長官・鳳から新たな映像が届く。
「中国……海軍……」
海軍軍港から出発した三つの艦隊の映像が、それぞれモニターに映し出される。
数で圧倒的な差をつけられているのは歴然だった。
瑞岐は背筋に冷たいものが流れるのを感じる。
「この映像は、アメリカ軍の衛星から撮られたものです。
米軍が直接私たちに送ってくれているようですね」
船務士の出雲が解説をしてくれる。
「やっぱり、アメリカ軍の援軍は期待できそうにないのか?」
瑞岐は出雲に問いかける。
出雲の代わりに答えたのは、会議がひと段落したらしい班目だった。
「どうやら無理そうだ」
「班目!」
瑞岐が振り返ると、少し疲れた顔の参謀長が立っていた。
「日本軍と中国軍、このまま進路を変えなければ台湾沖でぶつかることになる。
ハワイ駐在アメリカ軍に応援を要請していたが、彼らも『大仕事』が入ったらしい。
太平洋に派遣されている機動部隊も呼び戻されているらしい」
国際条約において、航空母艦は艦そのものが海軍基地であり、自国領外を航海していても艦内は自国領内とみなされる。
言わば移動可能な基地であり都市である。
世界で最も多くの原子力空母を保有しているアメリカ軍は、太平洋や大西洋、インド洋など大海にそれらを派遣し移動可能な海・空軍の拠点としていた。
その『基地』をわざわざ呼び戻しての作戦、大事であるのは間違いなかった。
「中米を出発したマフィアの複数の艦隊が太平洋の横断を画策しているらしい。
しかも艦隊の護衛に多数のウィザードが着いていることが確認されている。
アメリカ軍を以てしても、引き留めるのに精一杯だそうだ」
「多数の……ウィザード?!
アメリカ軍が対処しきれない程、ウィザードが居るのか?!」
「……対処してくれないと我々も終わりだ。
中国軍と、太平洋を横断してきたマフィアの艦隊に挟み撃ちにされたら一溜りもない。
アメリカ軍曰く『最悪ハワイまでに潰走させる』そうだよ。
我々も何としてでも中国軍を押さえなければいけない。
彼ら友軍の為にも」
再び参謀科の無線に連絡が入り、参謀科員がそれを受ける。
「班目中佐!艦隊司令部です!」
「わかった、すぐ行く。慌ただしくてすまないね、成瀬大佐」
部下に呼ばれ、班目はそちらを向く。
去り際に一言瑞岐に詫びると、すぐに駆けて行った。
資格の勉強でちょっと忙しいので更新ペース落ちます。




