043 帝江③
李花の歌は人を狂わせる。
聞く者に大いなる快楽を与える代わりに副作用がある。
高揚感が去った後の深い抑鬱状態、絶望感。
そして高い中毒性。
人間にとって、快楽は真っ当に得られるものではない。
神から貸し渡されるものだ。
非常に高い利息付きで。
王は李花の歌の効用を知ると、それを利用した。
自身の政治演説中、BGMの代わり李花に歌を唄わせる。
李花の歌は聞く者の数が増えれば増えるほど効果が微弱になるものの、
王の狙うプロパガンダの添え役として大いに役立った。
テレビやラジオから流れる王の演説に、民衆は歓声を上げた。
理屈や理念も関係なく、聞く者に高揚感を与える。
それを繰り返し聞いた人間は、王の言葉が正しいものと錯覚する。
王の演説に多くの民衆は魅了された。
それが人智を超えた力の誘惑と知らずに。
世論を味方につけた王は、さらなる高みを目指す。
人民解放軍の総指揮官となり、軍人たちを王に絶対服従させる工作。
軍を自らの傀儡とし、国内外問わず王の尖兵とする為に。
『高い純度』で聴かせる李花の歌は、
異常な高揚感と多幸感は、彼らを戦闘へ駆り立て狂戦士へと変貌させる。
全ては王の計画通りに。
「李花。この後の海軍基地の訪問は、お前も来なさい」
「はい、先生」
自分が正攻法でこの広い大陸を統べるのは、
何百年とかかっても無理だろう。
ならばありとあらゆる手段全てを利用して、この国の新たなる覇者となる。
その為には力が要る。
李花以外のウィザードの強大な力は喉から手が出るほど欲しいが、
一年や二年で簡単に手に入るものでは無さそうだ。
その力が手に入るまでの間、即座に手に入る軍事力で
自身の障害となるものは全て壊して進むのだ。
この思想が悪だと言うなら、
貫き通して全て引っくり返してやればいい。
全て壊した後に新たに築き上げれば、それは正義となる。




