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HOLY WORLD  作者: (仮)
35/93

034 泥人形④

 アメリカ合衆国、カリフォルニア州ロサンゼルス国際空港。

 赤城に連れられ一同がそこを訪れたのは、冬の気配を感じる頃だった。

 雪こそ降ってはいないものの、寒さが身に染みる。


 民間の旅客機から降りてきた赤城、瑞岐、隼翔、班目、綾小路兄弟。

 公務で珍しく軍服も礼服も着ないことが、隼翔や瑞岐たちには新鮮だった。



 まず彼らは、日本の中米派遣軍を迎えに行った。

 アメリカ西海岸のサンディエゴ海軍基地、そこで派遣海軍の司令長官・武田らと会う。

 約二年前に日本から派遣されていった武田は、鋭気に溢れる豪放磊落な人物であったが、今ではすっかりやつれ、白髪も増えていた。

 戦場を直接知らない赤城たちも、その過酷さを悟るのだった。


 中米戦線は未だアメリカ軍側・マフィア側も退かず、戦いは続いている。

 それでも今回の派遣軍引き揚げと相成ったのは、日本側の対中国牽制のためである。


 武田は艦隊を引き連れて帰国する運びだ。

 今回の派遣部隊の謝礼として格安で譲り受けたニミッツ級航空母艦に、タイコンデロガ級イージス艦が一隻ずつ。

 そして日本から持ってきた駆逐艦のうち、まだまだ現役で働けるものたち。


 譲り受けた空母は日本で就役する際、『甲斐』と名を改めることがすでに決まっている。

 帰国後、武田はその空母・甲斐の司令官として辣腕を振るうことになるだろう。

 勿論、過酷な中米戦を生き残った彼の部下たちと共に。



 初日は武田らの出迎えだけで終わった。

 その後、宿泊先のホテルで解散となり、瑞岐はやっと一息つく。


 赤城や隼翔は武田たちと一緒にバーに行ってしまった。

 酒の席なので未成年の瑞岐と下戸の班目は参加しないし、綾小路兄弟も誘われたのだが、瑞岐のボディーガードが任務だからと断っていた。

 あの兄弟もアレでいて仕事には真面目なのだ。

 見知らぬ異国の地で何かあってはならぬと最大限に注意を払いつつ瑞岐を護衛し、ホテルの個室まで送り届ける。

 別れ際、室内でも心配だからと添い寝を進言するが、瑞岐はガン無視で扉に鍵をかけた。


 静かな場所を好む瑞岐や班目とは違い、隼翔は飲み会のような華やかな席が好きだ。

 普段から同僚たちを誘って飲み歩いたりしている。

 隼翔は基本的に瑞岐以外の誰に対しても馴れ馴れしい。が、それは人懐こく世話好きな性格のせいでもある。

 彼は人と距離を置きがちな面々をも自分のペースに乗せて心の扉をこじ開けてしまう。

 無礼だが憎めないのは、悪意や裏表が無いせいだろうか。



 それに今回は、隼翔にとっては特別だ。

 武田や補佐官の高坂、艦長の馬場、航空隊の総指揮官・山県は、アメリカ派遣軍時代の直属の上司という関係であり、積もる話も多いだろう。

 再会した時も、お互いの無事を喜び、笑い合っていた。

 一回りも二回りも年上の上官相手にも変わらない隼翔の態度に、最初は瑞岐たちもひやひやしたが、武田側も笑顔で隼翔を小突きまわし、からかっていた。

 良好な上官と部下の関係だったことが伺える。



 バーで大いに騒いでいるであろう隼翔の顔を思い浮かべ、瑞岐はひとり呟く。

「二十歳過ぎたら、僕も飲み会に付き合わされるのかなぁ……」

 うんざりしつつも、未知の『大人の世界』にほんの少し好奇心が顔を覗かせる。


 あくびをしつつ、ベッドから放たれる睡眠への誘惑と戦いながら、バスルームに向かう。

「シャワー浴びたら、もう寝よう」


 明日は、アメリカ軍の研究施設への訪問だ。

 時差ボケを矯正するためにも、瑞岐はさっさと床に就くのだった。

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