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HOLY WORLD  作者: (仮)
19/93

018 弾丸の魔女⑤

 一方その頃、横須賀中央駅前、ビジネスホテル。

 瑞岐の部屋のベッドで、彼の帰りを待っていた隼翔は眠ってしまっていた。


 コツン、コツン……。


 部屋の南側についた大きな窓から、硬い物が当たる音がして隼翔は目覚めた。

「ふわあー……。もうこんな時間か。ってか、ミズキまだ帰って来ねーのかよ」

 大きな伸びとあくびをして、音のした窓を見る。コツコツと、音は鳴り続けている。

 不思議に思ってカーテンを開け確認する。

 すると、そこでは一羽のカラスがくちばしで窓をつついていた。

「ん?なんだ、お前。ここにゃミズキはいねーぞ」

 カラスが瑞岐を探してやってきたのかと思った隼翔は、窓を開けカラスに話しかけた。

 窓を開けるや否や、カラスは部屋の中に入って来てしまう。

「あっ!コラ!!」

 慌てて捕まえようとするが、カラスはするりと隼翔をかわし、部屋の奥へ飛び立つ。

「オイ、カラス!ここはお前の巣じゃねえ……」

 カラスはハンガーに掛かっていた瑞岐の軍服の制帽をくわえ、隼翔のもとに戻って来た。

 窓際のテーブルの上に制帽を置くと、隼翔に向かって一声鳴いた。

「ミズキの制帽がどうかしたのか?」

 問いかけるとカラスは、足でテーブルをコツコツと叩きながら、カーカーと鳴きはじめる。

「ああん?」

 野生のカラスでは有り得ない行動に、隼翔も異変に勘付くが、それが何を意味しているかわからない。

 カラスはまた、同じ行動を繰り返す。


 コツ コツ コツ カー カー カー コツ コツ コツ


「???」


 恐らく、このカラスは瑞岐のカラス。

 それは隼翔にも伝わった。


 そして、実際に瑞岐がエリーの部屋から操っていた。


 拘束されたまま床に転がされ、瑞岐はこの状況を抜け出す方法を考えたのだ。

 手も足も使えない。人を呼ぶこともできない。

 しかし、魔力なら使える。

 普段カラスの視界越しに敵艦を爆撃しているのだ、それを応用してカラスを操れないか……。

 結果は成功だった。

 しかし、問題がある。カラスは人の言葉を扱えない。

 そこで瑞岐は、カラスの体でモールス信号を送ることを思いついた。が……


(あの…馬鹿!!!!モールス信号くらい気づけよ!!お前それでも軍人か?!

 カラスにこんな繊細な動きさせるの、すごく神経使ってしんどいんだぞ!!)


 肝心の隼翔がモールス信号に気付かないのでは意味がない。

 瑞岐は肩で息をしながら、思考を巡らせる。


 ふとカラスが動きを止めると、隼翔を見上げた。

「?」

 不思議に思い、隼翔もカラスの顔を覗き込んだ……瞬間、カラスが隼翔のこめかみ目がけて、思い切りくちばしで突いた。

「いっっっってええええええ!!!!てめー、何しやがる!!」

 それはもうざっくりと行った。隼翔は流血しながらカラスに抗議する。

 当のカラスはと言うと、先ほど持ってきた瑞岐の制帽をつつく。

 くちばしについた隼翔の血液で、瑞岐の制帽に何かを描く。

 たどたどしい動きで書かれたそれは、紛れもなく「SOS」の三文字だった。

 それを見て隼翔は察する。


 瑞岐の身に何かあった!


 だが、何が起こったのかわからない。

 そういえば先ほど、このカラスは足と鳴き声で何かを伝えんとしていた。それがわかれば……。


 策を思い立った隼翔はカラスの首を鷲掴み、部屋を飛び出した。手の中でカラスが暴れまくるが、無視して歩を進める。



 隼翔がやってきたのは、航空母艦・国津神の参謀長、班目蒼流の部屋だった。

 乱暴にドアを叩きながら班目を呼ぶ。

「おい!!居るか班目?!緊急事態だ!!」

 しばらくするとドアが開き、班目が顔を出した。班目は隼翔を見るなり、驚いた。

「高山少尉!なんて恰好をしているんだ!!」

「それはこっちのセリフだ!!!!」

 片手に暴れるカラスを鷲掴み、こめかみから流血する男と、黄色の園児帽に赤のランドセルを背負ったワンピース姿の男が罵り合う。


「とにかく入りたまえ。用件は?」

 班目は隼翔を部屋に招き入れ尋ねる。

「ミズキの身に何かあった」

「なんだと?!」

 隼翔はカラスが書いた「SOS」を見せる。班目は制帽の刺繍から、それが瑞岐のものだと悟る。

「ミズキがカラスを操って、オレに知らせて来た。わざわざこんなことするなんてただ事じゃねえ!」

 隼翔の言葉を聞き、班目はカラスに向かって呼びかけた。

「…大佐か?成瀬大佐?!聴こえるか!何があった?!」

 班目はカラスの顔を覗き込む。カラスが暴れたので隼翔も手を離した。


「うわっ、なんだその恰好」

 カラス越しに班目の姿を確認してびびる瑞岐。

 しかしびびっている暇も惜しいので、すぐさま班目に向かって再びモールスを送る。


 班目はすぐカラスの行動の意図に気付く。

「これは、モールス信号か!」

「えっ」

 全く気がつかなかった隼翔は、素っ頓狂な声を上げた。


「我 捕縛サレタリ。

 エリー 宿泊ホテル。

 至急 救援 求ム。」


 班目がモールス信号を読み上げると、隼翔はドアに向かって怒りを踏みしめるようにドスドスと歩き出す。

「待ちたまえ少尉!私も行く!」

 隼翔を制し、班目はスーツに着替えながらこう言った。

「ホテルの駐車場に私の車がある!それで行こう」

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