015 弾丸の魔女②
一行は基地内、屋外の訓練施設へ移動した。
「まずはエリーからね」
そう言うとエリーは、腰にぶら下げた赤い小さなバッグから拳銃を取り出した。
「これはモデルガンよ。プラスチックの弾が出てくるの」
指で拳銃をくるくる回して見せる。
「Crow Mancer、試しに撃ってみるといいわ」
エリーは瑞岐にモデルガンを手渡し、近くに小石を置く。
瑞岐が引き金を引くと、圧縮された空気によって押し出されたプラスチック弾が発射され、小石をはじいた。
「確かに、エアガンだ」
瑞岐はエリーにモデルガンを返す。
「そうよ。こんなオモチャも、エリーかかれば」
エリーは百メートルほど離れた土嚢に狙いを定める。
彼女の瞳が緑に輝いた瞬間、弾丸は発射され、轟音を放つ。
その音の主は、重たい砂がぎっしり詰まった土嚢を爆破し、コンクリートの地面を抉った。
「弾丸の魔女の力は、撃ち出した弾の威力を何倍にもする力。
リボルバーからライフルやマシンガン、ミサイルまで。
エリーが引き金を引けば、破壊力が何倍にも増すのよ」
弾丸の魔女は、不敵に微笑んだ。
「…………」
赤城はそれを見て、一人考え込んでいた。
もし、このような能力を持った者が、我が国の敵として相対したら、どうすべきか。
「すげぇな、チビ助!」
さらりと無礼を働く隼翔に、瑞岐と班目が左右両側から隼翔の足を蹴る。
「ふふん。エリーの魔法は世界最強なんだから。
まあ、わたし自身が引き金をひかなきゃ行けないってのが、少し面倒なのだけれど」
「王女、それ以上は……」
自身の能力について、ぺらぺら喋るエリーをSPが制止する。
エリーは少しむくれたが、すぐに瑞岐に笑顔を向ける。
「さあ、Crow Mancer。今度はあなたの番よ」
瑞岐はちらりと赤城を見た。
赤城が黙って頷くと、瑞岐は一礼して前に出る。
瑞岐が左腕を上にかざすと、そこにカラスが一羽、舞い降りた。
彼の瞳が輝くと、カラスが光に包まれ八咫烏へと変化する。
八咫烏は空に舞い上がり、充分な高度を取ると零戦に姿を変えた。
「Fantastic!!カラスがエアファイターに変わったわ!」
空を旋回する零戦に、エリーはきらきらとした眼差しを送る。
カラスが変化した所を見なかったら、本物にしか見えない無機質な緑と銀の機体、本物にしか聞こえないエンジンとプロペラの回転音。
零戦はひとしきり空の散歩を楽しむと、八咫烏の姿に変わり、瑞岐の腕に帰って来た。
瑞岐の瞳が、緑から普段の茶色掛かった黒い色に戻ると、カラスも二本足に戻る。
「Crow Mancer」
エリーのSPの男性が、瑞岐に問いかけた。
「変化させられるのはカラスだけなのですか?
例えば…あなたは海軍だ。海の鳥、カモメなど」
SP流暢な日本語を喋った。瑞岐は少し考えてから口を開く。
「…できなくはないです。でも僕は、慣れた烏が一番扱いやすいかな……」
瑞岐は左腕を上げ、カラスを自然へと還す。
「ねえ、Crow Mancerの使っていたカラス!足が三つになったわ!プロペラのエアファイターみたいに!」
はしゃぐエリーに、赤城は穏やかに答える。
「日本の神話にある三つ足の烏、八咫烏ですな。さる高貴なお方の道案内をしたとされる霊鳥。
彼もまた我が国を導く存在として、神が遣わせたのでしょう」
難しい日本語にエリーは少し悩んだが、なんとなく意味を理解すると腰に両手をあてて言った。
「ニッポンジンは、戦いになると神頼りになるの、やめたほうがいいわ。
『エンギ』なんて持ち上げても無駄よ。どうせ持つなら、力とお金。そして敵の敵の肩よ」
「厳しいですな、王女殿下は」
赤城は苦笑した。
「それでも我々は、神の為に戦い散った者たちを、無駄だったとは思えない」




