014 弾丸の魔女①
観艦式閉会後。
隼翔と瑞岐、班目、そして赤城の四人は、班目の車で海軍本部へ向かっていた。
今回の観艦式には日本の同盟国の艦艇も多数集っていた。
そのうちの一国、イギリスから技術交換交流の要請があった。
内容は各国魔術師の能力についての情報交換と、日英同盟における魔術師の有効な運用方法の議論。
後者は赤城等、高官たちが対応することになっている。
瑞岐たちは前者の任務の為、こうして本部へ移動している。
「これから会うお方は政府から招待された国賓だ。くれぐれも失礼のないようにな」
助手席から赤城が釘を刺す。
緊張する瑞岐に対し、隼翔は普段通りの態度だ。
「オイ、赤城のオッサン」
「た、た、た、高山少尉!!!元帥閣下に向かってなんという口の利き方を!」
班目は動揺し、ハンドルを持つ手が震え車がふらついた。
だが赤城は豪快に笑い、「構わん」と班目を制す。
「なんだね、高山少尉」
「今からやるのはウィザードの技術交流会だろ?オレまで行く必要あんのか?」
瑞岐はともかく、自分は魔力など持たない普通の人間なのだから。
「少尉は『烏使い』の専属ボディーガードだろう?
成瀬大佐以外のウィザードの能力がどんなものがあるか知っておいた方がいい。
今後、他所のウィザードと戦り合うことになれば、対策も考えやすかろう」
以前、瑞岐も言っていた。
ウィザードの能力は千差万別。
そしてその能力は国家機密として、各国とも公開をしていない。
そんな中、英国側から自国の魔術師の能力を教える代わりに、日本の魔術師の能力を教えて欲しいと要望があった。
技術交換で得た情報は二国間で共有し、国防及び日英のさらなる発展の為に。
話をしている間に、三笠公園からそう遠くない海軍本部についた。
四人は英国側の客人の待つ、この建物の中でも一番豪奢な応接室に向かう。
扉の前に立つと班目がドアをノックし、英語で何か呼びかけた。
するとすぐに扉が開き、スーツを着た体格の良い男性が出迎え、中に入るよう促した。
四人が室内に入るや否や、小さな影が瑞岐のみぞおちに特攻してきた。
「ぬぐわッ」
堪らず声を上げ、瑞岐は特攻してきた影もろとも後ろに倒れる。思い切り尻もちをついてしまった。
「あなた!あなたね!ニッポンのウィザード!」
小さな影は、幼い金髪碧眼の少女だった。
少女は流暢な日本語で、興奮しながら瑞岐に問う。
「あなたがニッポンのウィザード!Crow Mancerね?!さっき写真を見せてもらったわ!」
「え、あ、あの…君は…」
状況を飲み込めないでいる瑞岐は、少女にのしかかられたままアタフタする。
見かねた隼翔が、少女の首根っこを掴んで瑞岐の上からどかした。
「なんだ、このチビ助」
隼翔の行為に、隼翔以外の大人が凍り付いた。
胃の痛みを懸命にこらえながら、班目は隼翔を叱責する。
「高山少尉!!!やめたまえ!そのお方をどなたと心得る!!!」
「は?どなたって……痛ッ!!」
襟首を掴まれながら少女は隼翔に蹴りを入れる。
隼翔が手を離すと、少女は華麗に着地し、髪とドレスを整える。
「どういうことからしら。ニッポンネイビーは基地のなかでグリズリーを飼っているの?」
「誰がグリズリーだ」
何なんだ今日は。生意気なガキにはゴリラ扱い、その次は幼女からグリズリー扱いだ。
「頭が高いわ、グリズリー!ひざまずきなさい!
わたしはイギリス王国第一王女、エリー・A・マーガレットよ」
エリーは平らな胸を大きく張って、高らかに宣言する。
「Oush!」
隼翔は、エリーの広い額に軽くデコピンする。
先ほどドアを開けてくれたSPと思しき男性も慌てて駆け寄ってきた。
「 高 山 少 尉 !!!!
日英同盟にヒビを入れるような真似はやめたまえ!」
班目が悲鳴のような声をあげた。班目の胃は爆散寸前だ。
「エリー王女、お久しぶりですな。ご壮健で何より」
「Marshal・アカギ!久しぶりね!」
エリーの小さな手を取り、跪きキスをする赤城。
床で呆然としていた瑞岐も、ようやく起き上がって挨拶をした。
改めて、王女と呼ばれた少女を見る。
ラインストーンをあしらった赤いリボンで金髪を結わえ、ピンク色の可愛らしいドレスに、赤い靴。
白い肌に、大きな青い瞳がよく映える。年の頃は六~八歳だろうか。
「エリー王女は、英国現女王陛下ご息女にして、英国の誇るウィザードだ」
赤城は隼翔と瑞岐に言った。
「通称、Bullet Witch…弾丸の魔女」




