第72話 親友たちの休日――四人を結んだ新しい友情
月曜日の昼休み。
聖蘭学園の食堂で、神崎隼人が突然身を乗り出した。
「なあ、怜司!」
「どうした?」
「この前言ってた友達、いつ紹介してくれるんだ?」
怜司は、カレーを食べる手を止めた。
「相沢のこと?」
「そうそう!」
隼人は、楽しそうに笑った。
「お前がそんなに仲いいって言うんだから、会ってみたいんだよ!」
一条蒼真も頷いた。
「僕も興味があるな」
怜司は、少し嬉しくなった。
「じゃあ、今度の土曜日はどう?」
「俺は空いてる!」
隼人が即答した。
蒼真も、スマートフォンで予定を確認した。
「僕も大丈夫」
「じゃあ、相沢に聞いてみる」
怜司がメッセージを送ると、すぐに返事が届いた。
『行く行く! どこ集合?』
怜司は、思わず笑った。
「……相沢も大丈夫だって」
「よっしゃ!」
隼人が拳を握った。
「じゃあ、四人で遊ぼうぜ!」
◇ ◇ ◇
土曜日。
駅前の大型商業施設。
怜司は、相沢と一緒に待ち合わせ場所へ向かっていた。
「……なあ、黒瀬」
「ん?」
「聖蘭の奴らって、やっぱりすげえ金持ちなんだろ?」
怜司は、少し考えた。
「そういう家の人も多いけど、別に気にしなくていいと思うよ」
「そうなの?」
「うん。二人とも、すごく話しやすいから」
相沢は、少し安心したように笑った。
「そっか」
そのとき。
「怜司ー!」
遠くから、隼人の声が響いた。
見ると、蒼真と隼人が手を振っている。
隼人は、動きやすそうな私服。
蒼真は、落ち着いたシャツにジャケットを合わせていた。
「おはよう!」
怜司が声をかける。
蒼真も、笑顔で応えた。
「おはよう、怜司」
そして、相沢へ視線を向けた。
「初めまして。一条蒼真です」
相沢は、少し緊張しながら頭を下げた。
「あ、相沢直人です。よろしくお願いします」
蒼真は、柔らかく笑った。
「こちらこそ。怜司から、いろいろ聞いてるよ」
「えっ、何を!?」
相沢が驚く。
その横から、隼人が元気よく手を差し出した。
「神崎隼人! よろしくな、直人!」
相沢は、思わず笑った。
「……おう! よろしく!」
隼人は、にやりと笑った。
「怜司の親友なんだろ?」
「まあな!」
「じゃあ、俺たちとも仲良くしてくれよ!」
相沢は、嬉しそうに笑った。
「もちろん!」
怜司は、その様子を見てほっとした。
初対面なのに、驚くほど自然だった。
◇ ◇ ◇
最初に向かったのは、ボウリング場だった。
「よっしゃ! 勝負だ!」
隼人が、張り切ってボールを選んでいる。
相沢も、負けじと腕を回した。
「俺、結構得意だぞ!」
「おっ、いいじゃん!」
蒼真は、二人を見て笑った。
「早速、気が合ってるね」
怜司も、思わず笑った。
「そうだね」
ゲームが始まった。
最初は隼人。
力強く投げられたボールが、中央へ向かう。
――ガシャーン!
ストライク。
「よし!」
隼人が、拳を突き上げた。
「どうだ!」
相沢は、目を丸くした。
「すげえ!」
そして、すぐに笑った。
「でも、負けねえぞ!」
相沢も、ボールを構えた。
慎重に狙いを定める。
そして、投球。
――ガシャーン!
こちらもストライクだった。
「おおっ!」
隼人が、歓声を上げた。
「やるじゃん!」
相沢は、得意げに笑った。
「だろ!」
その瞬間。
怜司は、思わず笑ってしまった。
まだ出会って十分ほどなのに、二人はすでに昔からの友達のようだった。
◇ ◇ ◇
次は蒼真だった。
蒼真は、落ち着いた様子でボールを持った。
「じゃあ、僕も」
そして、滑らかなフォームで投げた。
ボールは、綺麗な軌道を描いた。
――ガシャーン!
ストライク。
「……えっ!?」
相沢が、目を見開いた。
隼人も、驚いたように笑った。
「おいおい、蒼真!」
蒼真は、少し笑った。
「たまたまだよ」
「絶対嘘だろ!」
隼人が笑う。
蒼真は、肩をすくめた。
「昔、家族でよく来てたからね」
怜司は、感心した。
「……みんな上手いな」
そして、自分の番になった。
ボールを手に取る。
重さを確かめる。
助走。
腕の振り。
そして、指先の感覚。
怜司は、ゆっくりと投げた。
――ゴロゴロゴロ。
ボールが、中央へ向かう。
そして。
――ガシャーン!
九本。
「あーっ!」
隼人が、楽しそうに笑った。
「惜しい!」
怜司も笑った。
「あと一本だったな」
続く二投目。
怜司は、残った一本を狙った。
――カン!
綺麗に倒れた。
「スペア!」
相沢が、嬉しそうに声を上げた。
「いいじゃん!」
怜司は、笑顔になった。
「ありがとう!」
四人は、笑い合った。
◇ ◇ ◇
昼食。
四人は、商業施設のレストランへ入った。
隼人は、相沢とすっかり意気投合していた。
「直人って、何かスポーツやってんの?」
「いや、特には。でもゲームは結構やる!」
「マジか!」
隼人が、目を輝かせた。
「俺もやるぞ!」
「何やってる?」
「格闘ゲームとか、レースゲーム!」
「おっ! じゃあ今度勝負しようぜ!」
「いいな!」
蒼真は、楽しそうに笑った。
「二人とも、本当に気が合うね」
怜司も頷いた。
「うん」
すると、相沢が蒼真へ尋ねた。
「一条って、何が得意なんだ?」
蒼真は、少し考えた。
「経済や経営の勉強かな」
「へえ!」
相沢は、興味深そうに身を乗り出した。
「やっぱり、将来は会社とか継ぐの?」
蒼真は、少し笑った。
「まだ決めてないよ」
「そうなの?」
「うん。家の事業に関わる可能性はあるけど、それだけが選択肢じゃないからね」
そして、穏やかに続けた。
「自分で何かを始めるのも面白そうだと思ってる」
相沢は、感心したように頷いた。
「……すげえな」
蒼真は、少し笑った。
「直人は?」
「俺?」
相沢は、少し考えた。
「まだ全然決めてないな」
蒼真は、自然に頷いた。
「それでもいいと思うよ」
相沢が顔を上げる。
「……え?」
「高校生なんだから、いろいろ試してから決めてもいいんじゃないかな」
蒼真は、柔らかく微笑んだ。
「僕も、まだ知らないことがたくさんあるしね」
相沢は、少し驚いた。
そして、嬉しそうに笑った。
「……何か、いいな。そういう考え方」
怜司も、静かに頷いた。
聖蘭学園の友達は、誰かを見下したりしない。
それは、相沢に対しても同じだった。
◇ ◇ ◇
午後。
四人は、ゲームセンターへ向かった。
相沢が、レースゲームを指差した。
「黒瀬!」
「ん?」
「この前のリベンジだ!」
怜司は、思わず笑った。
「この前も相沢が勝っただろ!」
「今度はもっと圧勝する!」
隼人が、目を輝かせた。
「何それ! 俺も混ぜろ!」
蒼真も、少し笑った。
「じゃあ、四人で勝負しようか」
こうして、四人のレースが始まった。
最初から飛ばす隼人。
安定した操作の蒼真。
経験豊富な相沢。
そして、着実に追い上げる怜司。
レースは、最後まで大混戦だった。
「うおおお!」
隼人が叫ぶ。
「抜かせるか!」
相沢も叫ぶ。
蒼真は、笑いながら操作していた。
「二人とも、熱くなりすぎ!」
怜司も、思わず笑った。
「……本当に!」
そして、ゴール。
結果は、相沢の勝利だった。
「よっしゃああ!」
相沢が、拳を突き上げた。
隼人は、悔しそうに笑った。
「くそー!」
蒼真は、楽しそうに拍手した。
「直人、強いね」
相沢は、得意げに笑った。
「ゲームだけは負けられないからな!」
怜司も、笑顔で頷いた。
「さすが相沢!」
◇ ◇ ◇
夕方。
四人は、駅前の広場で別れることになった。
「いやー、楽しかった!」
隼人が、満足そうに伸びをした。
相沢も頷いた。
「俺も!」
蒼真は、柔らかく微笑んだ。
「また遊ぼうね」
相沢は、嬉しそうに笑った。
「もちろん!」
そして、怜司へ向き直った。
「黒瀬」
「ん?」
「……いい友達じゃん」
怜司は、少し驚いた。
相沢は、笑顔で続けた。
「お前が聖蘭で楽しそうにしてる理由、分かった気がする」
怜司は、胸が温かくなった。
「……ありがとう」
すると、隼人が二人の肩を抱いた。
「何だよ! 俺たち全員友達だろ!」
蒼真も、楽しそうに笑った。
「そうだね」
相沢は、少し驚いたあと、豪快に笑った。
「……そうだな!」
四人は、笑い合った。
怜司は、その光景を静かに見つめた。
以前の学校で出会った親友。
新しい学校で出会った親友たち。
その二つの世界が、今、自然につながっていた。
怜司は、心から思った。
――……本当に、幸せだな。
そして、笑顔で言った。
「また、四人で遊ぼう!」
三人が、同時に頷いた。
「もちろん!」
夕暮れの駅前に、四人の笑い声が響いた。




