第70話 完全適応の新境地――聖蘭学園を魅了する美少年
聖蘭学園へ転校してから、約一か月。
黒瀬怜司の姿は、以前とは見違えるほど変わっていた。
朝。
洗面所の鏡の前。
怜司は、静かに自分の姿を見つめていた。
体重は、七十・八キロ。
以前の九十六キロ超から、二十五キロ以上減っている。
だが、身体は驚くほど健康的だった。
引き締まった肩。
無駄のない腹部。
しなやかな腕と脚。
そして、整った顔立ち。
以前の面影は残っている。
だが、印象はまるで違った。
丸かった頬は、すっきりと引き締まっている。
顎の輪郭はシャープになり、鼻筋も通っていた。
目元は、以前よりはっきりとしている。
怜司は、鏡の中の自分を見つめた。
「……本当に、変わったな」
その瞬間。
【神級権能《完全適応》】
【肉体最適化率:75%】
【外見的最適化が大きな節目に到達】
【身体能力・神経系・骨格バランスの調整を継続中】
怜司は、目を見開いた。
「……七十五%」
ついに、四分の三まで到達した。
だが、まだ完全ではない。
それでも、ここまで変わった。
怜司は、静かに息を吐いた。
そして、少しだけ笑った。
「……すごいな」
◇ ◇ ◇
聖蘭学園。
朝の正門。
怜司が歩いていると、周囲の生徒たちが自然と視線を向けていた。
「……あの人、誰?」
「一年生の黒瀬君だよ」
「えっ、あの転校生?」
小さな声が聞こえてくる。
怜司は、少し戸惑った。
以前は、人の視線が怖かった。
だが、今は違う。
もちろん、注目されることにはまだ慣れていない。
それでも、必要以上に俯くことはなくなっていた。
怜司は、背筋を伸ばして歩いた。
そのとき。
「怜司!」
蒼真が、笑顔で手を振った。
「おはよう!」
「おはよう、蒼真」
その隣には、隼人もいた。
「おっはよー!」
隼人は、怜司を見るなり、にやりと笑った。
「……お前、また変わったな」
怜司は、苦笑した。
「……もう慣れてよ」
蒼真が、楽しそうに笑った。
「確かに、そろそろ慣れないとね」
隼人は、豪快に笑った。
「いや、無理だろ!」
そして、怜司の肩を軽く叩いた。
「お前、完全にイケメンじゃねえか!」
怜司は、思わず顔を赤くした。
「……声、大きいって!」
蒼真は、穏やかに微笑んだ。
「でも、隼人の言う通りだと思うよ」
怜司は、少し照れくさくなった。
「……ありがとう」
そのとき。
「レイジさん!」
澪が、こちらへ歩いてきた。
怜司は、笑顔で振り返った。
「おはようございます、澪さん」
澪は、嬉しそうに微笑んだ。
「おはようございます!」
そして、少しだけ怜司の顔を見つめた。
その頬が、ほんのり赤くなる。
「……今日も、素敵ですね」
怜司は、思わず固まった。
「……えっ?」
隼人が、口元を押さえた。
蒼真は、楽しそうに笑った。
澪は、自分の言葉に気づいたのか、慌てて続けた。
「あっ……その……!」
怜司も、顔を赤くした。
「……ありがとうございます」
澪は、恥ずかしそうに微笑んだ。
「……はい」
◇ ◇ ◇
午前の授業。
怜司は、数学の問題に取り組んでいた。
難しい問題だったが、落ち着いて考えれば解法が見えてくる。
怜司は、丁寧に解答を書き進めた。
そのとき。
「黒瀬君」
教師が、声をかけた。
「この問題、別の解法は考えられますか?」
怜司は、少し考えた。
そして、手を挙げた。
「……はい」
黒板へ向かい、数式を書き始める。
無駄のない解法。
そして、分かりやすい説明。
教師は、満足そうに頷いた。
「素晴らしいですね」
怜司は、少し照れくさくなった。
「ありがとうございます」
席へ戻ると、蒼真が小さく笑った。
「さすがだね」
怜司は、少し笑った。
「……まだまだだよ」
蒼真は、穏やかに頷いた。
「その姿勢がいいんだと思う」
◇ ◇ ◇
昼休み。
怜司は、蒼真、隼人、澪とともに食堂へ向かっていた。
途中で、麗華と詩織に出会った。
「黒瀬さん」
麗華が、柔らかく微笑んだ。
「こんにちは」
「こんにちは、麗華さん」
詩織も、穏やかに微笑んだ。
「黒瀬君、こんにちは」
「こんにちは、詩織さん」
そのとき。
美月が、元気よく駆け寄ってきた。
「みんなー!」
隼人が、手を振った。
「おっ、美月!」
美月は、怜司を見た瞬間、目を丸くした。
「……あれ?」
怜司は、首を傾げた。
「……どうしたの?」
美月は、少しだけ頬を赤くした。
「……黒瀬君、また格好よくなった?」
怜司は、思わず苦笑した。
「……みんな、そればっかりだね」
隼人が、豪快に笑った。
「だって本当だもん!」
蒼真も、楽しそうに笑った。
麗華は、穏やかに微笑んだ。
「確かに、以前よりずっと凛々しくなられましたね」
詩織も、少し頷いた。
「健康的で、素敵だと思います」
怜司は、顔を赤くした。
「……ありがとうございます」
澪は、そんな怜司を見て、少しだけ複雑そうに微笑んでいた。
◇ ◇ ◇
昼食後。
怜司は、澪とともに中庭を歩いていた。
木々の間から、柔らかな日差しが差し込んでいる。
澪は、少しだけ静かだった。
怜司は、首を傾げた。
「……澪さん?」
「……はい?」
「何か、ありました?」
澪は、少し驚いた。
そして、柔らかく微笑んだ。
「……いえ」
だが、少しだけ迷ったあと、正直に言った。
「……レイジさんが、どんどん素敵になられて」
怜司は、少し照れくさくなった。
「……ありがとうございます」
澪は、続けた。
「皆さんが、レイジさんに注目されるのも当然だと思います」
そして、少しだけ視線を落とした。
「……でも」
「……はい?」
「少しだけ、寂しい気持ちになることがあります」
怜司は、静かに澪を見つめた。
澪は、恥ずかしそうに微笑んだ。
「……私、わがままですね」
怜司は、首を横に振った。
「……そんなことないですよ」
澪が顔を上げる。
怜司は、柔らかく笑った。
「俺が聖蘭に来られたのは、澪さんのおかげでもあるんです」
澪は、目を見開いた。
「……レイジさん」
怜司は、続けた。
「だから、これからも一緒に過ごしたいと思ってます」
澪の頬が、赤く染まった。
「……本当ですか?」
「はい」
怜司は、笑顔で頷いた。
「もちろんです」
澪は、しばらく怜司を見つめていた。
そして、嬉しそうに微笑んだ。
「……ありがとうございます」
その声は、少しだけ震えていた。
◇ ◇ ◇
放課後。
怜司は、蒼真と隼人とともに校門へ向かっていた。
「なあ、怜司」
隼人が、にやりと笑った。
「お前、最近マジで人気者だな」
怜司は、少し困ったように笑った。
「……そうかな」
「そうだよ!」
隼人は、豪快に笑った。
「でも、安心しろ!」
怜司が首を傾げる。
「……何が?」
隼人は、胸を張った。
「俺たちは、お前がどんなにイケメンになっても変わらねえからな!」
蒼真も、穏やかに微笑んだ。
「そうだね」
そして、少し笑った。
「怜司は怜司だから」
怜司は、しばらく二人を見つめた。
そして、自然と笑顔になった。
「……ありがとう」
隼人は、豪快に笑った。
「何だよ、改まって!」
三人は、笑い合った。
夕暮れの校門。
怜司は、静かに思った。
自分の姿は、大きく変わった。
だが、本当に大切なものは変わっていない。
家族。
友達。
そして、自分を信じてくれる人たち。
その存在が、何より大切だった。
怜司は、夕焼けを見つめた。
そして、静かに微笑んだ。
新しい未来は、まだ始まったばかりだった。




