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虐げられた俺は異世界で神を超える 〜傷ついた黒猫を助けたら、現実世界での復讐が始まった〜  作者: 覇王が好き


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第66話体育館に現れた怪物――全国級のエースが認めた才能

聖蘭学園の体育館に、バスケットボールが床を叩く音が響いていた。


 放課後の体育館。


 神崎隼人は、ボールを片手で回しながら、目の前の少年を見つめていた。


「よし、怜司。今日はちょっと本格的にやってみるか!」


「本格的に?」


 黒瀬怜司が首を傾げる。


「そう! 一対一だ!」


 隼人は、楽しそうに笑った。


「前から一度、ちゃんと勝負してみたかったんだよ」


 怜司は、少し困ったように笑った。


「でも、俺、バスケはまだ初心者だよ?」


「分かってるって!」


 隼人は、ボールを軽く弾ませた。


「だからこそ面白いんだろ!」


 その様子を、体育館の壁際で一条蒼真が見ていた。


「隼人。あんまり熱くなりすぎないようにね」


「分かってるよ!」


 蒼真は、苦笑した。


「その返事が一番信用できないんだけど」


 怜司は、思わず笑った。


 聖蘭学園へ転校してから、隼人とは何度も身体を動かしていた。


 最初は軽いシュート練習。


 それから、ドリブル。


 そして、パスやフットワーク。


 隼人は、驚くほど教え方が上手かった。


 相手が何を理解していないのか、すぐに見抜く。


 そして、できるまで根気よく付き合ってくれる。


 怜司は、そんな隼人を心から尊敬していた。


「じゃあ、よろしく」


「おう!」


 二人は、コートの中央へ向かった。


     ◇ ◇ ◇


「まずは俺が攻めるぞ!」


 隼人が、ボールを弾ませる。


 怜司は、軽く腰を落とした。


 目の前にいるのは、全国大会で活躍する実力者。


 身体能力だけではなく、技術も経験も一流だった。


 隼人が、右へ動いた。


 怜司は、反射的に身体を動かしかけた。


 だが、その瞬間。


 隼人は、鋭く左へ切り返した。


「……っ!」


 怜司は、一瞬遅れた。


 隼人は、その隙を逃さない。


 素早く踏み込み、リングへ向かう。


 そして、綺麗なレイアップシュートを決めた。


 ――スパッ!


「よし!」


 隼人が、笑顔で振り返った。


「どうだ!」


 怜司は、思わず感心した。


「……すごい」


 隼人は、少し驚いた。


「ん?」


「最初の動き、完全に騙された」


 怜司は、素直に言った。


「右へ行くと思ったのに、気づいたら左へ抜かれてた」


 隼人は、嬉しそうに笑った。


「そうそう! そこがポイントなんだよ!」


 そして、身振りを交えて説明し始めた。


 重心の移動。


 視線の使い方。


 相手の反応を誘うタイミング。


 怜司は、真剣に聞いていた。


 《万象習得》が、隼人の動きを分析していく。


 だが、それは単に動作を真似るだけではなかった。


 なぜ、その動きが有効なのか。


 どのタイミングで使うべきなのか。


 そうした理解が、少しずつ深まっていく。


「……なるほど」


 怜司は、静かに頷いた。


     ◇ ◇ ◇


 次は、怜司の攻撃だった。


「さあ、来い!」


 隼人が、楽しそうに構える。


 怜司は、ボールを弾ませた。


 右手。


 左手。


 そして、軽く身体を揺らす。


 隼人の目が、鋭くなった。


「……ほう」


 怜司は、右へ踏み出した。


 隼人が反応する。


 その瞬間。


 怜司は、左へ切り返した。


「……っ!」


 隼人が、驚いたように目を見開いた。


 先ほど自分が見せた動き。


 それを、怜司が再現していた。


 だが、隼人はすぐに体勢を立て直した。


「甘い!」


 素早く横へ移動し、怜司の進路を塞ぐ。


 怜司は、思わず笑った。


「……やっぱり、すごいな!」


「当たり前だ!」


 隼人も、楽しそうに笑った。


 怜司は、無理に突破しなかった。


 少し距離を取り、ボールを構える。


 そして、ジャンプシュート。


 ――スパッ!


 綺麗にリングを通過した。


「……おお!」


 壁際で見ていた蒼真が、拍手した。


「いいシュートだね!」


 隼人は、目を丸くしていた。


 そして、次の瞬間。


「はははっ!」


 豪快に笑った。


「お前、やっぱり面白いな!」


 怜司は、少し照れくさくなった。


「……ありがとう」


 隼人は、嬉しそうに続けた。


「普通、あの動きは一回見ただけじゃできねえぞ!」


 怜司は、少し困った。


 《万象習得》のことは話せない。


「……隼人の説明が分かりやすかったから」


 隼人は、一瞬きょとんとした。


 そして、にやりと笑った。


「そうか!」


 蒼真が、苦笑した。


「隼人、嬉しそうだね」


「当たり前だろ!」


     ◇ ◇ ◇


 それから、二人は何度も勝負を繰り返した。


 隼人は、経験と技術で怜司を翻弄した。


 怜司は、驚異的な反応速度と学習能力で食らいついた。


 だが、怜司は自分の身体能力をすべて使っているわけではない。


 本気で動けば、隼人どころか普通の人間では目で追うことも難しいだろう。


 だからこそ、怜司は力を抑えていた。


 それでも。


「……っ!」


 隼人が、鋭く踏み込む。


 怜司は、その動きに反応した。


 右。


 左。


 そして、急停止。


 隼人が、思わず笑った。


「……お前、反応速すぎだろ!」


 怜司は、少し笑った。


「隼人の動きが分かりやすくなってきたからかな」


「いや、普通はそんな簡単に分からねえって!」


 隼人は、楽しそうに笑った。


 そのとき。


 体育館の入口から、声が響いた。


「隼人ー!」


 橘美月だった。


 彼女は、練習着姿でこちらへ歩いてきた。


「何してるの?」


「おっ、美月!」


 隼人が、手を振った。


「怜司と一対一!」


 美月は、目を輝かせた。


「へえ!」


 そして、怜司を見た。


「黒瀬君、バスケもやるんだ?」


「まだ初心者だけどね」


 怜司が答えると、美月は笑った。


「そうなんだ!」


 そして、少しだけ首を傾げた。


「……でも、動きがすごく綺麗だね」


 怜司は、少し驚いた。


「……そうかな」


「うん!」


 美月は、嬉しそうに頷いた。


「重心が全然ぶれてない!」


 隼人が、得意げに笑った。


「だろ?」


 蒼真が、横から言った。


「隼人が教えてるんだよ」


 美月は、驚いたように目を見開いた。


「えっ、隼人が!?」


「おい!」


 隼人が、思わず声を上げた。


「その反応は何だよ!」


 美月は、楽しそうに笑った。


「だって、普段は勢いで何とかするタイプじゃん!」


「失礼な!」


 そのやり取りに、怜司も蒼真も笑った。


     ◇ ◇ ◇


 練習を終えたあと。


 四人は、体育館の隅で休憩していた。


 隼人は、タオルで汗を拭きながら言った。


「……怜司」


「ん?」


「お前、マジで運動の才能あるぞ」


 怜司は、少し照れくさくなった。


「……ありがとう」


 隼人は、真剣な表情になった。


「でもな」


「……うん?」


「才能があるだけじゃ、強くなれねえ」


 怜司は、静かに頷いた。


 隼人は、続けた。


「試合で勝つには、経験がいる。駆け引きも、判断力も、チームワークもな」


 そして、笑った。


「だから、もっと一緒に練習しようぜ!」


 怜司は、嬉しくなった。


「……うん!」


 蒼真も、穏やかに微笑んだ。


「いいね。僕も付き合うよ」


 美月も、元気よく手を挙げた。


「私も!」


 隼人が、豪快に笑った。


「よし! 決まりだ!」


     ◇ ◇ ◇


 その夜。


 怜司は、自室で今日の練習を振り返っていた。


 隼人の技術。


 美月の観察力。


 蒼真の冷静な判断。


 みんな、自分とは違う才能を持っている。


 そして、その才能を磨くために努力している。


 怜司は、静かに微笑んだ。


「……本当に、すごい人たちだな」


 そのとき。


【神級権能《完全適応》】


【肉体最適化率:63%】


【運動制御能力の向上を確認】


【筋肉・神経系の協調性がさらに改善されました】


 怜司は、目を見開いた。


「……また上がった」


 身体は、さらに変化を続けている。


 だが、怜司が今日一番嬉しかったのは、能力の成長ではなかった。


 隼人と本気で笑い合えたこと。


 蒼真と美月が、楽しそうに応援してくれたこと。


 そして、自分にも仲間と過ごす時間があること。


 怜司は、スマートフォンを手に取った。


 そこには、隼人からメッセージが届いていた。


『今日めっちゃ楽しかった! また勝負しようぜ!』


 怜司は、笑顔で返信した。


『俺も楽しかった。またよろしく!』


 送信。


 すぐに返事が届いた。


『次は負けねえからな!』


 怜司は、思わず笑った。


「……本当に、いい友達だな」


 その夜。


 怜司は、久しぶりに心から満たされた気持ちで眠りについた。



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