第63話 親友たちの驚愕――変わりゆく少年と変わらない友情
第63話 親友たちの驚愕――変わりゆく少年と変わらない友情
聖蘭学園へ転校してから、二週間が経過した。
黒瀬怜司の生活は、以前とは大きく変わっていた。
朝、学校へ行くことが楽しみになった。
授業では、新しい知識を学ぶことが面白かった。
昼休みには、友達と食事を楽しんだ。
そして、放課後には一緒に身体を動かした。
以前の怜司には、想像もできなかった毎日だった。
そんなある朝。
「……七十六・八キロ」
怜司は、体重計の表示を見つめた。
また、体重が減っていた。
だが、鏡の中の身体は、以前より引き締まっている。
肩のラインが整い、腹部の脂肪もかなり減っていた。
顔の輪郭は、さらにシャープになっている。
怜司は、鏡の中の自分を見つめた。
「……本当に、変わったな」
そして、少し笑った。
以前は、自分の姿を見ることが嫌だった。
だが、今は違う。
少しずつ、自分を好きになれている。
それが、何より嬉しかった。
◇ ◇ ◇
聖蘭学園。
朝の教室。
「おはよう!」
怜司が声をかけると、蒼真が顔を上げた。
「おはよう、怜司」
そして、少しだけ目を見開いた。
「……また変わったね」
怜司は、苦笑した。
「……やっぱり?」
「うん」
蒼真は、穏やかに笑った。
「顔立ちが、かなりはっきりしてきた」
そこへ、隼人がやってきた。
「おっはよー!」
そして、怜司を見た瞬間。
「……おいおい」
隼人が、目を丸くした。
「お前、マジでどうなってんだ!?」
怜司は、思わず笑った。
「……そんなに?」
「そんなにだよ!」
隼人は、怜司の肩を掴んだ。
「この前まで、もう少し丸かっただろ!?」
蒼真が、少し笑った。
「確かに、変化が早いね」
怜司は、少し困ったように笑った。
「……最近、運動してるからかな」
隼人は、腕を組んだ。
「いや、それだけじゃ説明つかねえ気がするけど……」
そして、にやりと笑った。
「まあ、いいか!」
怜司が首を傾げる。
「……いいの?」
「おう!」
隼人は、豪快に笑った。
「お前が元気なら、それでいいだろ!」
蒼真も、穏やかに頷いた。
「そうだね」
そして、少しだけ真剣な表情になった。
「ただ、無理な減量だけはしないでね」
怜司は、笑顔で頷いた。
「……ありがとう」
その言葉に、胸が温かくなった。
外見が変わっても、二人の態度は変わらない。
それが、嬉しかった。
◇ ◇ ◇
昼休み。
三人は、食堂の窓際の席に座っていた。
隼人は、大盛りのカレーを前に満足そうな顔をしている。
「やっぱ、ここのカレー最高だな!」
蒼真は、少し呆れたように笑った。
「隼人、昨日もカレーだったよね」
「うまいもんは何回食ってもうまいんだよ!」
怜司は、思わず笑った。
「……確かに」
隼人が、嬉しそうに頷いた。
「だろ!」
蒼真は、二人を見て苦笑した。
「まったく……」
そのとき。
隼人が、ふと思い出したように言った。
「そういや、怜司」
「ん?」
「お前、今度の休日、暇?」
怜司は、少し考えた。
「……特に予定はないかな」
隼人は、目を輝かせた。
「じゃあ、三人で遊びに行こうぜ!」
怜司は、少し驚いた。
「……三人で?」
「そう!」
隼人は、嬉しそうに笑った。
「せっかく仲良くなったんだし、学校の外でも遊ぼうぜ!」
蒼真も、穏やかに頷いた。
「いいね」
怜司は、自然と笑顔になった。
「……うん。行こう!」
隼人は、満足そうに頷いた。
「決まり!」
◇ ◇ ◇
休日。
三人は、駅前の大型商業施設に集まっていた。
「おっ、怜司!」
隼人が、元気よく手を振った。
怜司も、笑顔で応えた。
「おはよう!」
蒼真も、穏やかに微笑んだ。
「おはよう」
今日の怜司は、シンプルな黒いシャツに、細身のパンツを合わせていた。
以前なら、身体のラインを隠すために大きめの服を選んでいた。
だが、今は違う。
少しずつ、自分に合う服を選べるようになっていた。
隼人は、怜司を見てにやりと笑った。
「……お前、私服も似合うようになってきたな」
怜司は、少し照れくさくなった。
「……ありがとう」
蒼真も、頷いた。
「落ち着いた感じでいいね」
怜司は、嬉しそうに笑った。
「……そう言ってもらえると嬉しい」
◇ ◇ ◇
三人が最初に向かったのは、ゲームセンターだった。
「よっしゃ!」
隼人が、バスケットボールのゲーム機を指差した。
「勝負だ!」
蒼真は、苦笑した。
「やっぱりそうなるんだね」
怜司も、思わず笑った。
「……いいよ」
三人は、順番に挑戦した。
最初は隼人。
さすがに運動神経がよく、次々とボールをリングへ入れていく。
「よし!」
高得点を出した隼人が、満足そうに笑った。
「どうだ!」
次は蒼真。
落ち着いたフォームで、確実に得点を重ねていく。
「……蒼真も上手いな」
怜司が言うと、蒼真は少し笑った。
「隼人ほどじゃないけどね」
そして、怜司の番になった。
怜司は、ボールを手に取った。
以前、隼人から教わったフォームを思い出す。
膝。
肘。
手首。
そして、指先。
《万象習得》が、身体の動きを自然に整えていく。
――スパッ。
最初の一球が入った。
続けて、二球目。
三球目。
四球目。
次々とリングを通過していく。
「……おいおい!」
隼人が、目を丸くした。
「マジかよ!」
蒼真も、驚いたように笑った。
「すごいね」
怜司は、少し照れくさくなった。
「……隼人に教わったから」
隼人は、一瞬きょとんとした。
そして、豪快に笑った。
「ははっ! 俺の教え方がよかったってことか!」
蒼真が、苦笑した。
「そこは素直に怜司を褒めようよ」
「もちろん褒めてるって!」
三人は、笑い合った。
◇ ◇ ◇
その後。
三人は、スポーツ用品店へ向かった。
隼人は、最新のバスケットシューズを眺めていた。
蒼真は、トレーニングウェアを見ている。
怜司は、ランニングシューズのコーナーにいた。
「……これ、いいな」
怜司が一足のシューズを手に取ると、隼人が近づいてきた。
「おっ、いいじゃん!」
そして、少し真剣な表情になった。
「でも、サイズだけじゃなくて、足に合うかちゃんと確認しろよ」
怜司は、少し驚いた。
「……そうなの?」
「当たり前だろ!」
隼人は、嬉しそうに説明し始めた。
足幅。
クッション性。
安定感。
そして、走るときの接地感。
怜司は、真剣に聞いていた。
「……なるほど」
蒼真も、隣から笑った。
「隼人、こういうことになると本当に詳しいよね」
隼人は、胸を張った。
「そりゃ、毎日使うもんだからな!」
怜司は、笑顔になった。
「……ありがとう。参考になったよ」
隼人は、嬉しそうに笑った。
「おう!」
◇ ◇ ◇
夕方。
三人は、商業施設の屋上にある休憩スペースで飲み物を飲んでいた。
夕焼けが、街を柔らかく照らしている。
隼人が、満足そうに息を吐いた。
「いやー、楽しかったな!」
蒼真も頷いた。
「そうだね」
怜司は、二人を見た。
そして、少しだけ真剣な表情になった。
「……あのさ」
蒼真が顔を上げた。
「どうした?」
怜司は、少し迷った。
だが、二人には話しておきたかった。
「……俺、前の学校では、あまりいい思い出がなかったんだ」
隼人の表情が、少し変わった。
蒼真も、静かに聞いていた。
怜司は、ゆっくりと言葉を続けた。
「いじめられててさ」
少しだけ、沈黙が流れた。
だが、怜司は続けた。
「だから、聖蘭に来るときも、ちょっと怖かった」
蒼真は、静かに頷いた。
「……そうだったんだ」
隼人は、拳を握った。
「……ひでえ話だな」
だが、すぐに怜司を見た。
「でも、お前が悪いわけじゃねえだろ」
怜司は、少し驚いた。
隼人は、真剣に続けた。
「いじめる奴が悪い。それだけだ」
蒼真も、穏やかに頷いた。
「僕もそう思う」
そして、柔らかく微笑んだ。
「でも、話してくれてありがとう」
怜司は、胸が温かくなった。
「……うん」
蒼真は、少し笑った。
「過去に何があったとしても、今の怜司は僕たちの友達だからね」
隼人も、豪快に笑った。
「そうそう!」
そして、怜司の肩を軽く叩いた。
「これから楽しいこと、いっぱいやろうぜ!」
怜司は、目を伏せた。
少しだけ、胸が熱くなった。
そして、顔を上げた。
「……ありがとう」
その声は、少しだけ震えていた。
蒼真は、穏やかに微笑んだ。
「どういたしまして」
隼人は、笑った。
「何だよ、改まって!」
三人は、再び笑い合った。
夕焼けの下。
怜司は、静かに思った。
――……本当に、いい友達ができた。
そのことが、何より嬉しかった。




